第910回 古豪ウルグアイと対戦(2) 15年ぶりにカーンから代表入り

■過密日程の11月のサッカーカレンダー

 今年最後のフランス代表の試合となるウルグアイとの親善試合、11月のサッカーカレンダーは最初と最後の週にチャンピオンズリーグのグループリーグがあり、国内はリーグ戦が5試合、リーグカップが1試合と言うスケジュールである。普通のチームならば5試合、有力なチームならば1月に8試合戦うと言う強行軍である。その中で、19日にはホームゲームとはいえ、代表の試合が組まれている。
 このようなスケジュールの中で、レイモン・ドメネク監督が誰を招集するかが注目を集めた。メンバーの発表は13日に行われ、23人の選手が発表された。ほとんどの選手は常連のメンバーとなったが、過密スケジュールであることから、有力チーム以外からの選手の起用も予想された。

■これまでタイトルとは無縁のカーン

 そして、近年、代表とはあまり縁のないチームから初選出された選手がいた。それがカーンに所属するスティーブ・サビダンである。カーンは1913年創立と言う歴史のあるチームである。カーンの正式なチーム名はスタッド・マレルブ・ド・カーン・カルバドス・バース・ノルマンディと長い名称である。後半のカルバドス・バース・ノルマンディはカルバドス地方、バース・ノルマンディ地方のチームであることを意味している。そして最初のスタッドはスタジアムと言う意味でフランスのスポーツクラブがよく使用する単語である。マレルブとはこの地方出身の詩人のフランソワ・ド・マレルブに由来しているが、実はこのクラブの前身はカーンにあるマレルブ高校のクラブだったのである。欧州において高校や大学のクラブをその前身とするクラブは少なくないが、このカーンもそのうちの1つなのである。
 1980年代後半から1990年代にかけてが、クラブとしての最盛期であり、この時期に日本の企業がユニフォームスポンサーであったことから、日本の皆様ならば、よくご存知のチームであろう。
 しかしながら、1990年代後半から2部に所属し、2004-05シーズンに1部でプレーしたものの、1季で2部に戻り、2007-08シーズンに1部に復帰して11位に入り、今季は2季目の1部生活である。これまでに国内でのタイトルの経験はなく、リーグ戦で最高の順位は1991-92シーズンの5位であり、2005年のリーグカップで決勝に進出しているが、ストラスブールに1-2と敗れている。欧州カップについては、リーグ戦で5位に入った翌季のUEFAカップが唯一の出場であり、スペインのレアル・サラゴサと1回戦で対戦する、このホームでの第1戦、つまりカーンにとって欧州での初めての戦いは、3-2とカーンが勝利したが、この試合は後々まで語り継がれる好ゲームとなった。アウエーでの第2戦で0-2と敗れ、1勝1敗ながら通算成績で敗退してしまっている。

■カーンから初めて代表入りしたファブリス・ディベール

 カーンの選手でフランス代表に選出されたのはこれまでに2人、いずれもサビダンと同様にFWであり、1人目はファブリス・ディベール、2人目がグザビエ・グラブレーヌである。
 ディベールはカーン生まれのカーン育ちである。1990年3月にハンガリーとの親善試合で代表にデビューしている。その後モンペリエに移籍し、1992年の欧州選手権の直前の親善試合に2試合出場し、戦では得点をあげる活躍をして、本大会のメンバーに入る。しかしスウェーデンでは試合出場のチャンスはなく、3試合をベンチから眺めてフランスに帰国している。

■代表での最後の試合をカーンでプレーしたグザビエ・グラブレーヌ

 グラブレーヌは多くのクラブを渡り歩いたが、カーンに所属していた1992年10月のワールドカップ予選のオーストリア戦で代表にデビューする。この予選の初戦のアウエーでのブルガリア戦で敗れたフランスにとって負けられない一戦で、グラブレーンは勝利に貢献、続く11月のフィンランド戦、年が明けて3月に行われたアウエーでのオーストリア戦と3試合連続して出場し、3連勝する。前述したUEFAカップでも活躍したグラブレーヌはパリサンジェルマンにシーズン後移籍する。そして移籍したばかりのグラブレーヌは7月28日のロシアとの親善試合に出場する。舞台は新装なったばかりのカーンのミッシェル・ドルナオ競技場であり、古巣に錦を飾り、そのシーズンはパリサンジェルマンのリーグ優勝に貢献したが、これが最後の代表での試合となった。
 そしてグラブレーヌ以来カーンから15年ぶりに代表に選出されたサビダンはもう1つ驚くべき数字があるのである。(続く)

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