第78回 デンマークに惨敗、悪夢再び(1) ジネディーヌ・ジダン出場も実らず、無得点

■大黒柱ジネディーヌ・ジダン、負傷をおして出場

 1分2敗、得点0、失点3、グループAで最下位。この現実を受け入れなくてはならない。仁川でのグループリーグ最終戦、前々回の連載で書いたとおり、フランスには2点差以上の勝利が求められた。デンマークとの戦うメンバーには累積警告、退場処分により出場停止となったエマニュエル・プチとティエリー・アンリ、ウルグアイ戦での負傷によるフランク・ルブッフの3人の姿が無い。しかし、左足にテーピングをした背番号10が戻ってきた。ジネディーヌ・ジダン、フランス代表の大黒柱であり、ゲームメーカーである。5月26日の韓国戦で負傷して以来メンバーから外れていたジダンの復帰は心強いものである。

■背番号7はジダンの僚友、クロード・マケレレ

 そして、プチに代わって出場するのは背番号7のクロード・マケレレである。背番号7といえば1998年ワールドカップ、2000年欧州選手権では主将のディディエ・デシャンの番号であり、今大会ではロベール・ピレスがつけるはずの番号であった。すでに引退したデシャンの不在が今回の苦戦であることは大会が始まってからの本連載で指摘しているとおりである。一方、2000年欧州選手権以降大きく成長したピレスの欠場も攻撃力の大幅ダウンにつながっている。そのように期待の象徴である背番号7をつけることになったマケレレは今大会初めての出場となるが、レアル・マドリッドに所属しており、ジダンのチームメートとして欧州一に輝いている。

■守備に回ったデンマークが先制点

 1点差負けまでならば許容範囲のデンマークはほぼ全員が守備的なポジショニングでフランスの攻撃を受けて立つ。デンマークは余裕を持ってフランスに球を持たせる。
 一方、2点差勝利が目標のフランスはゲームメーカーのジダンがダビッド・トレゼゲ、クリストフ・デュガリー、シルバン・ビルトールという攻撃陣を束ねる。ホームアンドアウエーでの戦いが確立している欧州勢同士の戦いらしく、双方「目標とする点差」を認識した戦いぶりになった。
 しかし、先制点はデンマーク、22分にデニス・ロメダールが足を伸ばしてシュート、守護神のファビアン・バルテスも届かず、予期せぬ展開になる。前半はこの1点だけであるが、水原で行われている試合ではセネガルが大量3点をリードしてハーフタイムを迎える。前々回の連載で紹介した通りセネガルの大量リードは、フランスにとって2点差以上の勝利以外はグループリーグ敗退を意味する。

■不運も重なり、無得点でアジアを去る

 さて、後半に入り51分、それまでのプチに代わりジダンが蹴ったコーナーキックにマルセル・デサイーがヘッドであわせるが、バーに当たりノーゴール。一方のデンマークは67分、小野伸二の僚友として日本でも有名なジョン・ダール・トマソンが決定的な2点目。ウルグアイが追い上げているものの、残り20数分でフランスには最低4点が必要である。そして74分にはトレズゲがシュート、ボールは1966年のワールドカップ・イングランド大会決勝戦でジョフリー・ハーストが放ったシュートと同じコースをたどるが、ゴールラインの手前でボールは弾む。トレズゲのあきらめからきたのであろう微笑が今大会のフランスイレブンを象徴していた。
 そして、そのまま時計は進み、韓国時間で17時20分になろうかとする時、ポルトガル人の主審のビトール・マニュエル・メロ・ペレイラ氏のホイッスルが響いた瞬間、韓国へのサッカー伝来の地である仁川で前回王者フランスのグループリーグ敗退が決定したのである。前回優勝チームのグループリーグ敗退は1966年大会のブラジル以来のことである。さらに大会無得点というチームは前回大会のフランス大会では存在せず、1994年米国大会のギリシャ以来という不名誉な成績を残し、アジアから去ることになったのである。(続く)

このページのTOPへ