第958回 フランス勢の望み、UEFAカップ(1) 明暗の分かれたマルセイユとパリサンジェルマン
■リーグで上位のパリサンジェルマンとマルセイユ
チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦でリヨンがバルセロナ(スペイン)に敗れ、今年もフランス勢はベスト8に残ることができなかった。もう1つの欧州カップであるUEFAカップは第941回から第943回の本連載で紹介したとおり、マルセイユ、パリサンジェルマン、サンッテチエンヌの3チームが決勝トーナメント1回戦を勝ち抜き、ベスト16に残っている。
ベスト8決定戦は3月12日と3月19日に行われた。3月12日の第1戦はパリサンジェルマンがブラガ(ポルトガル)、マルセイユがアヤックス(オランダ)をホームに迎え、サンテエチエンヌはドイツのブレーメでの対戦となる。リーグ2位のパリサンジェルマンと4位のマルセイユはこの3日後にリーグ戦で戦うことになっており、ライバル対決を前にして、ホームゲームで勝ってクラシコを迎えたいところである。
■これまで2度敗れているアヤックス相手に先勝したマルセイユ
この3チームの中で最も早くキックオフを迎えたのがマルセイユである。マルセイユはこれまでにアヤックスと2回欧州カップで対戦しているが、2回とも敗れ去っている。今度こそ3度目の正直でアヤックスを倒したいところである。そして、この第1戦で勝利してパリサンジェルマンにも心理的なプレッシャーを与えたいところである。マルセイユはキックオフ直後からラッシュする。そして17分にはブノワ・シェイルーが先制点、32分にはママドゥ・ニアンが追加点をあげ、2点リードする。マルセイユはパリサンジェルマンよりも30分早くキックオフを迎えていたため、この時点でパリの試合は始まったばかりである。アヤックスに1点を返されたが、マルセイユは2-1というスコアでアヤックスに戦勝したのである。
■2つのプレッシャーがかかったパリサンジェルマン
マルセイユのライバルのパリサンジェルマンは2つのプレッシャーが重なった。まず1つはマルセイユの試合の結果である。そしてもう1つは相手がポルトガルのチームであり、多くの敵サポーターと戦わなくてはならなくなったことである。パリはリスボンに次いで世界で2番目にポルトガル人の居住者の多い都市である。パルク・デ・プランスは3万人の観衆が集まったが、ポルトガル人が大挙する。この雰囲気の中でパリサンジェルマンがホームの利を活かすことができなかったのも無理はない。
前半はチャンスをつかめず、無得点に終わる。ハーフタイムにはパリサンジェルマンのOBであるパウレタ、ベルナール・ラマがロッカールームに激励に訪れる。元ポルトガル代表のゴールゲッター、元フランス代表のGKという偉大なるOBの激励を受けて、パリサンジェルマンのイレブンは奮起する。後半開始直後からパリサンジェルマンは前半とは見違えるような試合を展開するが、後半立ち上がりのチャンスをものにすることができず、結局はスコアレスドローとなってしまう。
■リーグ戦でもマルセイユがパリサンジェルマンを圧倒
第1戦の3日後の3月15日、パリサンジェルマンとマルセイユはリーグ戦で対戦する。パルク・デ・プランスにはブラガ戦を大きく上回る4万5000人の観衆が詰め掛ける。この試合がこれだけの注目を集めたのは単純にマルセイユとの試合というだけではない。昼の試合で首位リヨンがオセールに敗れており、勝ち点1差で追う2位パリサンジェルマンが勝てば首位に躍り出るからである。一方のマルセイユは勝てば勝ち点でパリサンジェルマンに並び、得失点差で上回ることから2位に浮上し、リヨンに勝ち点1差に迫ることになる。
しかし、木曜日の試合を勝利で終えたマルセイユとスコアレスドローで終わってしまったパリサンジェルマンの勢いの差は明白であった。パルク・デ・プランスを支配したのはアウエーチームのマルセイユであった。マルセイユが終始パリサンジェルマンを圧倒する。24分にオランダ代表のボウデビン・ゼンデンが先制する。パリサンジェルマンは少ないチャンスを活かし、前半終了間際のルドビック・ジュリーのゴールで追いつくが、後半に差をつけられた。55分にバカリ・コネの勝ち越し点を許し、61分にはロリック・カナの追加点が決まり、1-3と敗れてしまう。2位に浮上したマルセイユ、3位に転落したパリサンジェルマンは、激闘の疲れを十分に癒す間もなく19日にアウエーでUEFAぷの第2戦を戦うことになったのである。(続く)