第108回 2004年欧州選手権予選開幕(4) キプロスに旅立った20人のフランス代表
■慎重さが必要な最初の公式戦
2004年欧州選手権を目指すフランスにとっての最初の関門がキプロスである。前々回の本連載で紹介してきたように、キプロスはワールドカップや欧州選手権の予選の初戦でフランスのアンリ・ミッシェルとスペインのハビエル・クレメンテの代表監督の座を奪った実績があり、これが公式戦のデビューとなるジャック・サンティーニ監督としても慎重にならざるを得ない。
本連載第100回から第103回で8月21日に行われたチュニジア戦について紹介したが、新メンバー4人を招集し、新監督率いる最初の試合で代表デビューをシドニー・ゴブーとブルーノ・シェルーの2人が果たした。試合ではさまざまなシステムを実験しながら、チュニジア戦の終盤は前任のロジェ・ルメール監督の定番であった4-2-3-1システムに落ち着いた。
■独自性を発揮したサンティーニ監督のメンバー選考
一方、今回のワールドカップでの敗退を受けて、新監督としては自らの独自性を発揮し、メンバーならびにシステムの入れ替えをしていくことも必要である。新監督としてどこまでサンティーニ色を打ち出していくのかが注目されるキプロス戦であるが、アウエーの試合であり、しかも移動距離が長いことから、チームとしての団結力を向上させるのには好都合な環境である。メンバーの発表も通常のケースより早く、試合の10日前の8月28日に行われた。20人のメンバーのうち、オセールの攻撃的MFのオリビエ・カポが初選出され、また、当初メンバー入りしたバンサン・カンデラが負傷のために離脱し、20歳の誕生日を迎えたばかりのナントのシルバン・アルマンが代表に初選出された。前回のチュニジア戦での代表初選出は4人であり、サンティーニが新しい血を欲していることがわかる。そして8月21日のチュニジア戦の際に初選出された4人についてはゴブーがまず選出され、ティエリー・アンリの負傷によりシェルーが追加して招集された。
■国内のクラブに所属する若手の進出
ルメール時代は極端にメンバーの変更を回避し、結果として選手と戦術が硬直化し、代表選手は国外のビッグクラブに所属する選手ばかりになった。サンティーニ新体制になって、若手選手が大量に加わり、昨年までU-21のチームに所属していた選手が6人(ゴブー、シェルー、アルマン、カポ、ジブリル・シセ、ミカエル・ランドロー)になった。また、フランスリーグ所属の選手も8人(ランドロー、グレゴリー・クーペ、アルマン、ジェレミー・ブレッシュ、エリック・カリエール、ゴブー、カポ、シセ)となり、このところ国外リーグに所属する選手が代表チームの大多数という状況が続いていたが、国内リーグで実績を残している選手が代表に選出されるようになってきた。ルメール時代には行われなかったメンバーの入れ替えの結果、4年前の欧州選手権に引き続いて選出された選手は6人(エマニュエル・プチ、マルセル・デサイー、パトリック・ビエイラ、シルバン・ビルトール、リリアン・テュラム、ジネディーヌ・ジダン)だけになった。
■レイモン・ドメネッシュ率いるフランスU-21代表を一蹴
このメンバーは9月2日にクレールフォンテーヌに集合する。翌日には早速練習試合をフランスU-21代表と行う。フル代表の2004年欧州選手権予選とほぼ同じ組み合わせ、日程でU-21代表は2004年のアテネ・オリンピックの予選となるU-21欧州選手権を争う。兄貴分のフル代表がフル代表のキプロスと対戦する試合の前日、フランスU-21代表はキプロスU-21代表と対戦する。そういう点で練習試合といっても双方のチームのモチベーション、仕上がり具合は同様である。また、U-21代表を率いるのはレイモン・ドメネッシュ。若手育成に定評があるだけではなく、今回の代表監督の最終選考に残った1人である。ドメネッシュとしてもサンティーニに一泡吹かせたいという野心がないはずはないであろう。試合は結局、ゴブー、ビルトール、マルレが得点をあげ、兄貴分のフル代表が面目を保った形になったが、この試合でもサンティーニはセンターバックのコンビネーションをしばしば変更し、システムを模索していた。
そして、試合の前々日に当たる9月5日午後、午前中の練習を終えたブルーたちは、恋愛と美の女神を生んだ美しい島キプロスへと旅立ったのである。(続く)