第173回 マルタ、イスラエルと連戦(2) 唯一の初代表、ジェローム・ロタン
■チェコ戦で復帰の3人は継続して選出
前回の本連載では3月末と4月初めに行われる欧州選手権予選のマルタ戦、イスラエル戦でマルセル・デサイー、エマニュエル・プチが代表メンバーから外れることを紹介した。
逆に、チェコ戦に続いて選出されたメンバーも小さな驚きを与えている。それは2月12日のチェコ戦で久しぶりに代表復帰したビシャンテ・リザラズ、ダビッド・トレゼゲ、ロベール・ピレスの3人が今回の連戦のメンバーにも選出されていることである。この3人の代表復帰については本連載第161回で紹介したとおりであるが、前回紹介したジャン・ティガナのように、カムバック戦で成果を残すことができず、不幸なカムバック戦となる可能性もなかったわけではない。主将デサイーや代表最古参のプチを外しながら、この3人を連続して起用するジャック・サンティーニ監督の期待に応えてほしいものである。
■主将を期待されるジネディーヌ・ジダン
また、サンティーニ新体制になってから主将を経験したことがあるデサイーもプチもいない中で、主将を務めるのはジネディーヌ・ジダンが有力視されている。しかし、そのジダンもチェコ戦では散々な出来であった。今回もエリック・カリエールが選出されていないことから、攻撃の組み立てはジダン1人に委ねられることになる。チェコ戦ではジダン伝説が誕生し、崩壊したわけだが、この連戦でぜひともジダン伝説を再生させてほしいものである。
■守備陣の負傷者が復活
さて、メンバーの入れ替えについて紹介しよう。
今回の場合、メンバーの入れ替えは2つのカテゴリーに分けられる。まず、チェコ戦の際に負傷のためメンバーから外れていた選手が戻ってきたために選手の入れ替えが行われた。ファビアン・バルテス、グレゴリー・クーペという第1、第2GK、そして守備陣ではフィリップ・メクセス、ビリー・サニョルが負傷からカムバックし、それに伴って、ランドロー、ラメ、ブームソンがメンバーから外れている。センターバックを若いメクセスとウィリアム・ガラスに託すことになるが、後方にはバルテスが控えており、失点を重ねたチェコ戦のような守備面での問題は改善されるであろう。
もう一方は、負傷とは関係ない選手の入れ替えである。デサイー、プチ、ルドビック・ギリーがメンバーから外れる。それに代わってメンバー入りしたのがビリー・サニョル、シドニー・ゴブー、そして代表初選出となるジェローム・ロタンである。
■フランスリーグのアシスト王、ジェローム・ロタンに期待
ロタンは左サイドの攻撃的MFである。現在リーグ首位のモナコに所属し、アシストランキングでも13点とトップであり、モナコの3年ぶりの優勝にむけた原動力となっている。出身はパリ郊外のオードセーヌ県である。最近、パリ並びにその近郊出身の代表選手は移民選手がほとんどであったが、久しぶりに移民以外のパリ出身の代表選手が誕生した。モナコの同僚で右サイドの攻撃的MFのギリーがメンバーから外れたが、ピレスに次ぐ左サイドの攻撃の切り札としての期待は大きい。ロタンは人材豊富な1978年生まれであり、ちょうど適齢期に2部リーグのクラブに所属していたこともあり、今までアンダーエイジでの代表歴には恵まれていない。しかし、INFクレールフォンテーヌの出身で、同期生にアンリ、ガラスがおり、気心の知れたメンバーと久しぶりに同じチームでプレーをすることになる。そしてロタンの誕生日は3月31日、ちょうどマルタ戦とイスラエル戦の中間の日にあたる。ロタンにとって今回の代表招集は何よりもうれしいバースデープレゼントであったであろう。ロタンの25回目の誕生日はランスからパレルモへの移動日である。ロタンはこのアルプス山脈を越えるフライトをどのような心境で迎えることができるのだろうか。フランスリーグのアシスト王の活躍を期待したい。(この項、続く)