第237回 キプロスに大勝、ポルトガル行きへ王手
■スタッド・ド・フランスに戻ってきたフランス代表
バカンス明けの9月は学校の新年度、キャンパスそしてオフィスに日焼けした顔が戻ってきた。そしてスタッド・ド・フランスにもフランス代表サッカーチームが戻ってきた。この夏にはフランス国内でコンフェデレーションズカップが行われ、フランスが連覇を果たしたものの、ローラン・ギャロス、F1フランスグランプリ、ツール・ド・フランスとフランス国内で行われたスポーツイベントに加え、海の向こうの米国ではNBAでトニー・パーカーが大活躍し、サッカーはフランスのスポーツ界で完全に主役の場を奪われてしまった。それにとどめを刺したのが、先週までフランス中を熱狂の渦に巻き込んだ9日間の世界陸上である。
■本大会出場まであと一歩のフランス
サッカーの世界ではありえない盛り上がりを巻き起こしたビッグイベントの後にスタッド・ド・フランスに姿を現すフランス代表にとって、あと一歩に迫った欧州選手権の本大会出場権を獲得することが最低限必要であろう。さて、ここで終盤を迎えた欧州選手権予選グループ1の順位と残り試合を確認してみよう。ここまで5連勝で勝ち点15の首位はフランス、2位のスロベニアは勝ち点10、3位のイスラエルは勝ち点8、4位キプロスは勝ち点7、5位マルタは勝ち点0である。上位3チームは残り試合が3試合、そして9月6日はスタッド・ド・フランスでフランス-キプロス戦、スロベニアのリュブリャナでスロベニア-イスラエル戦が行われる。フランスが勝ち、スロベニアが引き分け以下となると、2試合を残してフランスの首位が決定し、いち早くポルトガル行きのチケットを手にすることになる。フランスは9月6日にポルトガル行きが決まらなくとも10日にはリュブリャナでスロベニアと直接対戦をし、この日までに代表権を獲得することはほぼ確実であろう。
■実績重視の選手選考
スイス戦で快勝した勢いを持ち込みたいフランス代表のメンバーには所属チームであまり出場機会のないファビアン・バルテスやクロード・マケレレ、そして大黒柱のジネディーヌ・ジダンという実績重視のメンバーが選出され、ジャック・サンティーニ体制になってから代表入りした選手はフィリップ・メクセス、ブルーノ・ベドレッティとジャン・アラン・ブームソンの3人だけでベテラン選手中心の選考となった。そしてジダンは開幕したばかりのスペインリーグの試合で負傷し、連戦の第1戦となるキプロス戦には欠場する見込みとなった。
コンフェデレーションズカップ決勝以来のスタッド・ド・フランス。前週までの世界陸上の熱気を取り戻すことはできず、空席の目立つ中で試合が始まる。フランスの先発メンバーはGKバルテス、DFはリリアン・テュラム、マルセル・デサイー、ミカエル・シルベストル、ビシャンテ・リザラズ、MFはマケレレ、パトリック・ビエイラの守備的な2人と、ジダンの代役となったロベール・ピレス、シルバン・ビルトール、FWはスイス戦と同じでティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲの2トップ。
■ゴールラッシュで10連勝、ポルトガル行きに王手
観衆はわずか5万5000人と空席が目立ち、力のない声援であったが、キプロスとの地力の違いを考慮すればこれでも十分であった。試合は青のユニフォームのフランスが一方的に攻め立て、7分には早くもトレゼゲがリザラズからのパスを先制ゴール。14分には2トップの相棒のアンリが放ったシュートはポストをたたき、追加点を逃す。しかし19分にビルトールが左足で追加点。ここでセーフティリードとなる。前半終了間際の40分にはアーセナルのコンビのピレスとビルトールが見事なコンビネーションを見せ、ビルトールが3点目を決める。すでに試合の結果がほぼ確定したファンにとって、関心事はこの夜にフランスがポルトガル行きのチケットを獲得できるかどうかに移ったが、スロベニアはスタッド・ド・フランスより30分早く始まった試合で一足先に勝利を収め、楽しみはブルーのゴールラッシュだけである。
後半に入って、ブルーはその攻撃を緩めず、59分についにアンリがゴールを上げ、80分には交代出場したビリー・サニョルからのクロスをトレゼゲが頭であわせて5点目。最終スコアは5-0となる。ホームとアウエーの違いこそあれ、1年前の対戦ではようやく2-1と逆転勝ちした相手であり、ブルーの成長は明白である。2月のチェコ戦で負けてからは10連勝と言う素晴らしい記録となった。残り2試合で勝ち点1を獲得すれば本大会出場、というのはワールドカップ米国大会予選でも経験した状況であるが、10日のスロベニア戦は是非とも11連勝を決めてポルトガル行きのチケットを獲得して欲しい。(この項、終わり)