第344回 決勝トーナメントかけたクロアチア戦(1) チャンピオンズリーグ準優勝の立役者ダド・プルソ
■苦難の道を越えてポルトガル行きを果たしたクロアチア
ロスタイムの劇的な逆転劇で勝利したイングランド戦。フランスは最大の難敵から勝ち点3をあげた。しかも、グループBのもう一つの試合であるスイス-クロアチア戦は1-1の引き分けに終わり、両チームとも勝ち点1にとどまっている。したがってフランスは第2戦のクロアチア戦に勝てば決勝トーナメント進出が決定する。
対するクロアチアは1998年のワールドカップで準決勝に進出し、フランスに逆転負けを喫しているが、その時の主力選手であるアレン・ボクシッチ、ダボール・シューケルなどはすでに引退してしまっている。今大会も予選ではグループ8に入り、初戦のエストニア戦はホームでドロー、第2戦のアウエーのブルガリア戦は0-2で敗戦と窮地に立ち、その後立て直したものの、最終戦の前の試合であるアウエーのベルギー戦で、敗れてしまい、ベルギーに追いつかれてしまう。最終戦のブルガリア戦で1-0と勝利して得失点差で2位になり、プレーオフへ滑り込む。プレーオフではスロベニアと対戦することになるが、ホームの第1戦でドローに終わり、スロベニアに乗り込む。ホームアンドアウエーは第2戦をホームで戦う「後攻」が有利であるが、クロアチアはアウエーで1-0と勝利して、1996年大会以来2度目の本大会出場を果たすと言う苦難の道を越えてポルトガルにやってきた。
■モナコのチャンピオンズリーグ準優勝を支えた2人の外国人選手
1996年欧州選手権ベスト8、1998年ワールドカップベスト4と輝かしい国際デビューを果たした頃はタレントの宝庫と言われたクロアチアであるが、今大会は世代交代により大幅に若手選手が起用されている。その中でフランスのファンにとって注目すべきはダド・プルソである。プルソの所属するモナコはチャンピオンズリーグのファイナリストとなったが、その功労者はスペイン代表のフェルナンド・モリエンテスとプルソである。2人の共通点は母国では代表入りしているものの、評価はそれほど高くはなかったが、今季のチャンピオンズリーグでの活躍で母国でも期待されているという点である。モリエンテスはリーグ戦では28試合出場10得点、チャンピオンズリーグでは12試合出場9得点、プルソはリーグ戦では29試合出場8得点、チャンピオンズリーグでは11試合出場7得点と、2人とも国際試合に強いところを見せている。しかもプルソの場合はチャンピオンズリーグの11試合出場のうち先発出場はわずか6試合で、5試合は途中からの出場である。2人の驚異的な得点力が、モナコをチャンピオンズリーグ決勝へと導いたのである。モリエンテスはレアル・マドリッドに所属していたスター選手であったが、プルソは対照的である。
■フランス生活が長くクロアチアでは注目されなかったプルソ
プルソは内戦を逃れるために母国を離れ、フランスに移住し、フランスでは下位リーグのクラブを渡り歩いてからモナコに移籍した。母国のクラブではプロとしてプレーしたことがないため、母国では注目されることが少なかった。代表デビュー戦は4-0と大勝した昨年3月29日のベルギー戦であり、すでにこの時28歳であった。かつてはワールドカップや欧州選手権が他国のサッカーに触れる最大の機会であったが、現在はチャンピオンズリーグがそれに代わっている。4年に1度、1月間だけ行われる大会よりも通年で行われるクラブレベルでの大会のほうが欧州全体での注目度が高くなるのは当然である。また、クロアチアもフランスも代表チームの選手の大多数が国外のクラブに所属しているが、彼らのプレーをテレビやスタジアムで触れるのは、年に数試合行われる代表の試合よりも、秋から春にかけて行われるチャンピオンズリーグの試合の方が中心となる。クロアチアの人たちにとってプルソのユニフォームは赤白であるが、それは代表の格子柄ではなく、肩からわき腹にかけて斜めに別れたモナコの赤白である。
■モリエンテスに続いてゴールを狙うプルソ
本大会でのシード順位は2002年ワールドカップと2004年欧州選手権の予選の総合成績で決められるため、2002年ワールドカップ予選を突破したクロアチアはCシードとなっている。初戦のDシードのスイス戦は、相手の退場により数的優位に立ったが、スイスGKのウルトラセーブもあり、スコアレスドローに終わっている。クロアチアにとってフランス戦での勝利が決勝トーナメントへの道である。プルソのチームメイトのモリエンテスも今大会に出場しているが、2試合目のギリシャ戦で先制点を決めている。モナコのチャンピオンズリーグ準優勝のもう1人の立役者であるプルソがモナコと同じ色の赤と白のユニフォームでゴールを決めることはできるのだろうか。(続く)