第607回 2008年欧州選手権予選開幕(1) 「死のグループ」を戦う現実的なメンバー

■「死のグループ」に入ったフランス

 バスケットボール一色となった今年の夏であったが、フランス・サッカーにとって2008年欧州選手権の出場権をかけた戦いは9月3日から始まる。
 本連載でもしばしば紹介している通り、今回の予選の組分けは大きな驚きをもたらした。まず、開催国2チームを出場させるために、グループ分けが前回の10グループ、2006年のワールドカップ予選の8グループではなく7グループとなったために、第1シードのチームが8チームではなく7チームとなった。さらに今回の欧州選手権の開催国はスイスとオーストリア、お世辞にも第1シードとなる実績は残していない。その結果、第1シードの7議席は非常に狭き門となったのである。その狭き門に入ることができなかったのがイタリアであり、ドイツであり、スペインである。フランスはポルトガル、ギリシャ、チェコ、イングランド、スウェーデン、オランダとともに第1シードとなったが、欧州の大国との対戦は避けたいところである。ところが、今年はじめに行われた抽選会でフランスはイタリアと同じグループBに入ってしまった。グループBのライバルはイタリアだけではない。今回ワールドカップで準々決勝に進出したウクライナ、欧州予選ではいい成績を残しているスコットランドも入り、「死のグループ」となった。そしてグルジア、リトアニア、フェロー諸島相手には勝ち点を落とさないことはもちろん、大量得点で勝利したいところである。

■ラグビーのワールドカップと重なる予選終盤の日程

 さらにイタリア、ウクライナ、スコットランドだけではなく、フランスを日程的に悩ませる問題が起こった。それは2007年秋にフランスで開催されるラグビーのワールドカップである。欧州選手権予選が佳境を迎えるこの時期にフランス国内の主要競技場ではラグビーのワールドカップが開催される。したがって、インターナショナルマッチデーにフランス国内で試合を行うことができない。日本の読者の皆様ならば4年前に逆のことが日本で起こったことをよくご記憶であろう。サッカーのワールドカップの開催期間とラグビーのワールドカップ予選の日程が重なったが、日本ラグビー協会は東京の国立競技場を準備しており、韓国に記録的大勝、5回連続本大会出場の第一歩となったのである。しかし、フランスの場合はスタッド・ド・フランスだけではなくパルク・デ・プランスやマルセイユのベロドロームなど地方の主要競技場もラグビーのワールドカップを開催することが決まっており、サッカーの国際試合、しかも大一番になるような試合を開催することのできる競技場は全てラグビーのワールドカップが押さえてしまっている。
 フランスでのラグビー人気を考慮すれば、サッカーは押し出された形となり、国外で欧州選手権予選を戦うしかない。したがって日程調整が行われ、フランスは予選最終戦となるウクライナ戦を2007年11月21日にアウエーで戦うことになったのである。

■ワールドカップ組の3人が復帰

 そのような条件の中で、フランスは第596回の本連載で紹介したとおり、メンバーの大幅な変更は見合わせたが、8月24日に発表された9月3日のグルジア戦、9月6日のイタリア戦に臨む20人のメンバーはさらにその傾向は強くなった。
 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦でメンバーから外れたワールドカップ組のうちクロード・マケレレ、シドニー・ゴブー、リリアン・テュラムの3人が戻ってきた。今回のワールドカップにエントリーした23人のメンバーのうち、現役から引退したジネディーヌ・ジダン、代表からの引退を表明したビカッシュ・ドラッソー、所属クラブが決まらないファビアン・バルテス、負傷しているミカエル・シルベストルとパスカル・シンボンダの5人がメンバーから外れただけとなった。

■20人中18人がワールドカップ登録メンバー

 逆にワールドカップのメンバーではなかったがボスニア・ヘルツェゴビナ戦で選出された5人のうち、この予選開幕シリーズのメンバーになったのはリオ・マブーバとフランソワ・クレルクの2人だけで、フィリップ・メクセス、ジェレミー・トゥーララン、そして初出場初得点を決めたジュリアン・フォーベールすら代表に残ることができなかった。
 つまり、実に20人中18人がワールドカップ組となり、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦よりもさらに現実的なメンバーになったのである。予選終盤がフランスにとって不利な日程となっていること、そして16試合の予選のうち4試合が今年の9月と10月に集中していることから、レイモン・ドメネク監督がスタートダッシュこそすべてと考えるのも当然であろう。(続く)

このページのTOPへ