第624回 欧州選手権予選、秋の陣(2) フランス・サッカー史に残るハンプデン・パーク

■欧州カップで5回の決勝を行ったハンプデン・パーク

 代表チームは苦い思い出のハンプデン・パークであるが、クラブシーンではフランスのファンにとって多くの思い出のある競技場である。ハンプデン・パークはスコットランド代表の本拠地であるが、クラブレベルではクイーンズ・パークFCの本拠地でもある。クイーンズ・パークFCは4部リーグに当たるスコットランド3部リーグに所属しているが、このハンプデン・パークは欧州のクラブシーンで重要な役割を果たしてきた。
 まず、今年度のUEFAカップの決勝の舞台はこのハンプデン・パークである。これまで1960年、1976年、2002年とチャンピオンズカップならびに現在のチャンピオンズリーグの決勝が行われてきた。また、現在はなくなってしまったカップウィナーズカップについても1962年と1966年の決勝が行われてきた。

■1976年サンテエチエンヌの敗退

 チャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ)の3回の決勝のうち、2回はフランスのサッカーファンにとっては忘れられない思い出となっている。まず、1976年の欧州チャンピオンズカップ決勝ではサンテエチエンヌが勝ち上がってきた。チャンピオンズカップの創成期にランス(Stade de Reims)が2回決勝に進出し、いずれもスペインのレアル・マドリッドの前に敗れてきたが、フランス勢として17年ぶり3回目の決勝進出である。これまでの本連載で何度か紹介したが、サンテエチエンヌは大きな期待を集めたものの、0-1と敗れ、バイエルン・ミュンヘンの3連覇を許すことになった。

■2002年ジネディーヌ・ジダンの決勝点

 そしてその26年後、すなわち2002年の決勝もこの競技場で行われた。レアル・マドリッドとドイツのレバークーゼンが決勝に進出する。このハンプデン・パークで最初に行われた1960年の決勝は実に12万7000人と言う信じられない数の観衆を集めている。この試合はレアル・マドリッドとドイツのアイントラハト・フランクフルトの間で争われ、ドイツ勢として初の決勝進出を果たしたアイントラハト・フランクフルト相手にレアル・マドリッドは7-3と大勝し、5連覇を飾っている。同じドイツ勢として42年前の雪辱を晴らそうとスコットランドに乗り込んだレバークーゼンであるが、1-1で迎えた前半終了間際に鮮やかなボレーシュートを決められてしまう。このボレーシュートの主こそジネディーヌ・ジダンであり、チャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ)の決勝の歴史に残るファインゴールであった。

■リヨンから大量8人が選出

 このようにクラブシーンではフランスのサッカーファンにとって忘れられない競技場へレイモン・ドメネク監督率いるフランス代表チームは試合前日にグラスゴー入りする。グラスゴー入りの1週間前に発表されたメンバーは20人、9月初めのグルジアとイタリアとの対戦と人数的には同じであるが、メンバーの入れ替えがあった。
 まず、20人のうち4割に当たる8人が国内首位のリヨンから選出されている。GKのグレゴリー・クーペ、DFのエリック・アビダル、フランソワ・クレルク、MFのフローラン・マルーダ、アルー・ディアラ、ジェレミー・トゥーララン・シドニー・ゴブー、シルバン・ビルトールという8人である。またフランス国内のリヨン以外からのチームから選出されているのはパリサンジェルマンのGKのミカエル・ランドローとマルセイユのMFフランク・リベリーの2人だけで国内と国外のクラブからそれぞれ10人のメンバーが選出されている。なお、メンバー発表後ゴブーが外れ、リヨンのセバスチャン・スキラッチとボルトンのニコラ・アネルカが招集されている。
 また、これまで代表に招集されながらまだ試合出場経験のないジュリアン・エスクーデが所属チームであるスペインのセビリアでの活躍が認められて選出されたことも注目を集めた。
 9月の開幕シリーズでは大幅にワールドカップ出場経験者に依存したメンバー編成であったが、クレルク、トゥーララン、エスクーデ、スキラッチ、アネルカとワールドカップ組以外からのメンバーを入れてきたことはイタリア戦の勝利で余裕が出てきたことの現れであろう。しかし、この余裕は油断と紙一重であったのである。(続く)

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