第728回 欧州選手権予選、首位攻防戦(3) ウクライナに勝利し、フランス単独首位
■実績のあるメンバーを中心に若手を起用
これまで通算成績1勝2分、今回の欧州選手権ではフランスと並ぶ4勝1分の首位と手ごわい相手のウクライナをスタッド・ド・フランスに迎えるフランス、レイモン・ドメネク監督は必勝を期し、万全の体制で準備を行った。
守備陣は冒険をしなかった。GKはグレゴリー・クーペ、DF陣は中央をリリアン・テュラムとウィリアム・ギャラスと言う国外のクラブで実績のある選手で固める。右サイドバックはフランソワ・クレルク、左サイドバックはエリック・アビダルとなった。そして中盤は守備的な位置に2人を配す。右にはクロード・マケレレ、左にジェレミー・トゥーララン、そして攻撃的なMFは3人、右サイドはフランク・リベリー、左はフローラン・マルーダ、そして中央にはサミール・ナスリを起用する。そしてFWは1トップでニコラ・アネルカである。代表2試合目となるナスリを攻撃の中心に起用、アネルカはドメネク監督の信頼を勝ち得たようである。そして初めて代表に選出されたバカリ・サーニャ、ジミー・ブリアン、代表出場歴のないセバスチャン・フレイはベンチにも入らなかった。
■フランスにとって因縁のある主審
ウクライナはアンドレイ・シェフチェンコなどの主力選手を欠く布陣であるが、システムはフランスと全く同じで、4バック、2人の守備的MF、3人の攻撃的MFに1トップである。そして注目すべきはこの試合の主審、スペイン人のルイス・メディーナ・カンタレホ氏であるが、昨年のワールドカップでも笛を吹いている国際的な審判である。昨年のワールドカップでは準々決勝のフランス-ブラジル戦の主審を務めており、演技のいい審判であるかというと必ずしもそうではない。実はカンタレホ氏は決勝戦で第四の審判を務めている。延長後半に起こったジネディーヌ・ジダンの頭突き事件、第四の審判の登場によりジダンはレッドカードを突きつけられたのである。
■フランス代表史上、国内で最多の観客動員
そしてこの試合に集まった観衆は80,051人、スタッド・ド・フランスのサッカーの試合としては初めて8万人の大台を超えた。これまでのスタッド・ド・フランスでのフランス代表の最多観衆記録である今年2月のアルゼンチン戦の79,862人を更新したのである。欧州選手権やワールドカップの本大会のない奇数年にこのようにフランス代表が大観衆を集めたという事実はフランスのクラブチームに対する失望感の裏返しとも捉えられる。リーグ6連覇を果たしたリヨンもチャンピオンズリーグではこれと言った成績を残していない。日本では逆に代表チームの観客動員が一時期ほどの勢いがないことが話題になっているようだが、これはクラブチームの浦和レッズ、川崎フロンターレのアジアチャンピオンズリーグでの活躍にファンの関心が集中しているからであろう。
■後半に若手が活躍、単独首位に立つ
このように不安と期待が入り混じる中でのキックオフ、主力を欠く遠来のウクライナは慎重な試合運びで守りを固める。ボールを支配するフランスであるがなかなかシュートまで持ち込めない。前半はフランスが攻めあぐみ、堅い守備から次第にテンポをつかんできたウクライナは攻撃のリズムをつかみ、前半終了間際にあわやというシュートを放つ。そしてその後もチャンスをつかむがフランス守備陣が得点を防いだ。
ウクライナの鮮やかな攻撃の印象が残ったままで後半がキックオフされる。前半はうまく機能していなかったナスリのエンジンがようやくかかった。57分に8万の大観衆が歓喜するシーンがやってきた。クロード・マケレレのパスをオフサイドライン上で受けたリベリーがウクライナのGKを交わして無人のゴールネットを揺らす。
さらにフランスは70分、アネルカが技巧的なプレーを見せる。ウクライナのDFを浮き球を使って抜き去り、ボレーシュートで追加点をあげる。これで勝負あった。
フランスは3点目のチャンスこそ逃したが、首位決戦を制し、5勝1敗、勝ち点15でグループBの単独首位となる。そして2位にはこの日フェロー諸島に勝利したイタリアが4勝1分1敗で勝ち点13、フランスに敗れたウクライナとこの日試合のなかったスコットランドが4勝2敗、勝ち点12で追う展開となっており、4強の間の争いはまだまだ続く。(この項、終わり)