第758回 ミラノでイタリアとの決戦(4) スコアレスドローでリードをキープ
■真夏の親善試合でハンガリーに敗れたイタリア
45年ぶりのホームでのフランス戦勝利を狙うイタリアであるが、直前の親善試合は思わぬ結果となった。フランスと同様に8月22日に親善試合を行い、ハンガリーとアウエーで対戦した。ハンガリーは古豪とはいえ、近年は中堅以下の実績しか残していないチームである。このハンガリー相手に後半開始早々にディナタルのゴールで先制したが、その後次々にゴールを奪われ、終わってみれば1-3と言うスコアで敗れてしまったのである。
フランス、ウクライナとの決戦を前に、ハンガリー戦で活躍したルカ・トニ、昨年のワールドカップ決勝のもう1人の主役マルコ・マテラッティを負傷で欠く苦しい布陣となった。またドナドーニ監督に対する批判も高まり、メンバー起用に注目が集まった。
■舌禍でベンチ入りを禁止されたレイモン・ドメネク監督
一方のフランスは8月22日のスロバキア戦は負傷者を抱えながらの勝利であり、イタリア戦に負傷者の一部が復帰してきた。ところが、フランス代表に思わぬ問題が起こった。レイモン・ドメネク監督が8月初めに仏紙に対するインタビューで1999年に行われたシドニーオリンピック予選のイタリア戦で審判が買収されていたと発言した。この発言に対してUEFAはサッカー界の信用を失墜させたとして、ドメネク監督に罰金と1試合の出場禁止という処分を下した。ドメネク監督はベンチやロッカールームへの立ち入りを禁止され、フランスは指揮官不在でイタリアとの戦いに臨むことになった。
■リヨン勢のいなかったフランスの先発メンバー
このミラノでの試合、フランスの布陣はGKにミカエル・ランドロー、DFは中央にジュリアン・エスクードとリリアン・テュラム、左サイドにエリック・アビダル、右サイドにラッサナ・ディアラ、守備的MFはクロード・マケレレと、パトリック・ビエイラ、攻撃的MFは右にフランク・リベリ、左にフローラン・マルーダ、FWのニコラ・アネルカとティエリー・アンリの2トップである。なんとリヨンの選手が1人もいない布陣となったのである。リヨンの選手が先発メンバーからいなくなったのはドメネク体制になってから初めてのことである。
スロバキア戦には負傷のためメンバーから外れていた3人のストッパーのうち、ウィリアム・ギャラス以外のエスクードとテュラムが戻ってきたことは心強いばかりである。ドメネク監督に代わってベンチで指揮を取るのはピエール・マンコウスキーである。
■イタリアの攻撃をしのぎ、スコアレスドロー
この決戦の前々日に亡くなったルチアーノ・パバロッティの在りし日の姿も試合前のオーロラビジョンに映し出され、負傷欠場でスタンドから観戦となったマテラッティの姿も映り、皮肉にも「I love Paris」と書かれたTシャツ姿での観戦である。8万大観衆で一杯となったサンシーロ競技場のボルテージは最高潮となったところでキックオフとなる。
トニを欠くイタリアの攻撃の中心はフィリッポ・インザーギが1トップで、それをアレッサンドロ・デルピエーロ、アルゼンチン生まれのマウロ・ジェルマン・カモラネージが支えるベテラン中心のメンバーである。どうしても勝ちたいイタリアは果敢に攻め、その攻めをフランスの守備陣は難なく止める。
前半は両チーム攻め手を欠き、ノーゴールで折り返す。後半に入ってイタリアは先述の3人の攻撃陣を代える。3枚の交代のカードを全て攻撃陣に使うという積極策に出る。しかしながらフランスはこのドナドーニ監督の使ったカードも見事に消し去る。特に正GKのグレゴリー・クーペが負傷により長期離脱を余儀なくされている中で、残りの欧州選手権予選のゴールを守り続けることになるミカエル・ランドローはイタリア攻撃陣を無失点に抑えたのである。そして故障明けのテュラムとエスクードのストッパーのコンビも完全に復調している。
結局、フランスはアウエーでスコアレスドローとなり、勝ち点1を加える。フランスとしては勝ち点1にとどまったことは残念であるが、最大のライバルに対し、勝ち点1しか与えなかったこと、そしてリードしている立場として勝ち点の差をキープできたことは大きな収穫である。(この項、終わり)