第856回 23人のフランス代表メンバー(3) バフェタンビ・ゴミスとスティーブ・マンダンダが代表入り

■うれしい誤算となったバフェタンビ・ゴミスの2ゴール

 スイスとオーストリアで行われる欧州選手権の本大会に出場する23人の選手の決定の前日にあたる5月27日に行われたエクアドル戦。この試合については前回の本連載で紹介したが、7人を振り落とさなくてはならないレイモン・ドメネク監督にとってうれしい誤算となる新戦力が誕生した。後半の開始からピッチに入ったサンテエチエンヌのバフェタンビ・ゴミスが2ゴールをあげる活躍でフランスに勝利をもたらしたのである。

■セネガル代表を断ったゴミス、フランス代表入り

 ゴミスはフランス出身であるが、両親はセネガル人であり、フランスとセネガル両国のパスポートを持つ。昨年秋にゴミスはアンリ・カスペルチャック監督が率いるセネガル代表から声がかかった。アフリカ選手権を目指すセネガルにとってはフランス生まれのフランス育ちのゴミスを呼び戻すことができれば大きな戦力になったが、ゴミスはこのセネガル代表への道を断り、フランス代表に招集されることを夢見る。今季のゴミスはリーグ戦で16得点をあげ、カリム・ベンゼマ(20得点)、ママドゥ・ニアン(18得点)に次いで、ジブリル・シセと並ぶ得点ランキングは3位と堂々の成績を残し、5月の初めにはフランス代表入りすることをアピールする。
 リーグ戦での活躍、そしてこのアピールがドメネク監督の目に留まり、最後の最後でフランス代表入りのチャンスをつかみ、しかも最初で最後のチャンスで2得点の大活躍、代表デビュー戦で2得点はジネディーヌ・ジダン以来である。
 ドメネク監督はエクアドル戦後に、「今夜は悩んで眠れない」というメッセージを残し、翌日に23人が発表された。この23人の中にゴミスの名前は残った。代表の試合にわずか1試合しか出場せず、ワールドカップ、欧州選手権の本大会メンバーに選出されたのはフィールドプレーヤーとしては初めてであろう。ちなみにGKでは1986年のワールドカップ・メキシコ大会に出場したアルベール・ルストは代表出場歴ゼロでメキシコ行きのメンバーに選ばれ、ベルギーとの3位決定戦で代表にデビューし、それが最初で最後の代表試合となっている。

■名門サンテエチエンヌから13年ぶりの代表入り

 ゴミスの所属しているサンテエチエンヌは、これまでに多くの代表選手を輩出してきた名門であるが、代表選手は1995年4月26日の欧州選手権予選のスロバキア戦に出場したローラン・ブラン以来なんと13年ぶりである。しかもブランは代表選手のキャリアの中で多くのクラブを渡り歩き、代表選手としての活動中に8つのクラブに所属していたが、ゴミスは15歳でサンテエチエンヌのジュニアチームに加わり、途中トロワに所属した期間はあるが、サンテエチエンヌ育ちの選手であり、2部でのプレー、1部昇格、そして今季の大躍進によるUEFAカップ出場権獲得と、翠の意ユニフォームで多くの経験をしてきた。
 ゴミスが昨秋セネガル代表の誘いを受けていれば、セネガルは今年のアフリカ選手権でグループリーグ敗退の憂き目にあうこともなかったであろう。そしてゴミスが23人入りした代わりに代表チームを去ったのがジブリル・シセである。

■兄弟で異なる国の代表になったスティーブ・マンダンダ

 23人のメンバー決定でもう1つの驚きがGKであった。ゴミス同様、前日のエクアドル戦で代表にデビューしたスティーブ・マンダンダがメンバーに残った。マルセイユのマンダンダはゴミスと同じ1985年生まれであり、今季リーグ戦でベスト11に選出されている。コンゴ民主共和国出身であり、弟のパフェ・マンダンダはボルドーに所属しコンゴ民主共和国代表のGKである。その弟が代表にデビューした試合は本連載第819回で紹介したフランスA'戦、この試合でフランスA'のゴールを守っていたのがマンダンダであり、この試合がマンダンダにとってフランスA'としてのデビュー戦だったのである。
 一方、ミカエル・ランドローがメンバーから外れた。ランドローは昨年秋にグレゴリー・クーペが負傷により長期離脱した際に、正GKを務め、イタリア戦、スコットランド戦、フェロー諸島戦、リトアニア戦の4試合でゴールを守っている。しかし、クーペの復帰後はベンチにとどまり、所属チームのパリサンジェルマンでの度重なるミスもあり、4番目のGKと判断されてしまったのである。(続く)

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