第862回 オランダに歴史的大敗(2) ティエリー・アンリ復帰、4-2-3-1システムを採用
■オランダ戦の前に行われたルーマニア-イタリア戦
欧州選手権の第1戦で、勝ち点3を目論んだフランスはルーマニアとスコアレスドロー、オランダは世界王者イタリアに大勝という対照的なスタートとなった。
ベルンでフランスがオランダと戦う同じ日にチューリヒではルーマニア-イタリア戦が行われた。イタリアがルーマニアにまさかの敗戦を喫したならば、フランスは第3戦で意欲を失ったイタリアと対戦することになる。一方、イタリアがルーマニアに勝利したならば、フランスが引き分けたルーマニアに対してイタリアは勝ち点3を獲得することになる。そういう意味でも夕方のルーマニア-イタリア戦にも注目が集まった。
■イタリア苦戦、フランスに首位浮上のチャンス
イタリアはこのルーマニア相手に思わぬ苦戦を強いられる。イタリアは先行を許し、敗れればグループリーグ敗退というところであったが、かろうじて引き分けに持ち込む。その結果、グループCはフランス-オランダ戦を迎える段階で、首位はオランダ(1試合、勝ち点3)、2位はルーマニア(2試合、勝ち点2)、3位フランス(1試合、勝ち点1、得失点差0)、4位イタリア(2試合、勝ち点1、得失点差-3)という状況になった。
したがって、このオランダに勝利すれば、フランスは単独で首位に立つことができ、さらに最終戦の相手であるイタリアとの勝ち点の差を3として直接対決となる。フランス自身も初戦の引き分けと言う取りこぼしを第2戦のオランダ戦で挽回したいところである。
■左サイドバックだけが変更となった守備陣
初戦のルーマニア戦は勝ち点を1しか奪うことができず、悲観論も渦巻くところであるが、ルーマニア戦で欠場したティエリー・アンリもこのオランダ戦には出場可能と言うニュースもあり、決して悲観論ばかりではない。
第2戦の舞台はベルンのスタッド・ド・スイスである。合宿地のベベイから試合の前日に今度はバスで会場入りした。
オランダ戦のメンバーは、GKはグレゴリー・クーペ、DFは中央の2人はリリアン・テュラムとウィリアム・ギャラスであるが、両サイドはメンバー変更があるかが注目された。右サイドのビリー・サニョルはルーマニア戦の後半の立ち上がりに相手のエースであるアドリアン・ムトゥに対するタックルに対し、警告を受けている。このオランダ戦で警告を受ければ累積警告が2となり、次のイタリア戦には出場停止となる。したがってサニョルではなく、ラッサナ・ディアラを起用する可能性もあった。しかし、試合前に交換されたメンバー票には当面の戦いを重視し、サニョルの名前が書かれ、オランダの左ウイングのウェズレイ・スナイダーと対決することになる。左サイドはルーマニア戦での動きが良くなかったエリック・アビダルに代えてパトリス・エブラを起用する。MFもDF同様に中央の守備的MF2人についてはジェレミー・トゥーラランとクロード・マケレレで第1戦とは変わりない。
■ティエリー・アンリが復帰、主将を務めるリリアン・テュラム
しかし攻撃陣についてはアンリの復帰によってメンバーだけではなくフォーメーションも変更された。ルーマニア戦はカリム・ベンゼマとニコラ・アネルカの2トップを両翼の攻撃的MFが支え、右にフランク・リベリー、左にフローラン・マルーダという4-2-2-2布陣であったが、アンリを1トップにして攻撃的MFを左右だけではなく中央にも配した4-2-3-1と言うジネディーヌ・ジダン時代のフォーメーションで臨む。この3人の攻撃的MFの中心をリベリーが務める。そして右にはシドニー・ゴブー、左にはマルーダが陣取る。1トップのアンリ、そしてそれを支えるリベリーという2人に対する信頼感の現れである。
そしてこの試合でキャプテンマークをつけるのはテュラムである。2006年ワールドカップ以降の新チームではパトリック・ビエイラがキャプテンを務めていたが、今年2月6日のスペイン戦を最後にビエイラは試合に出場しておらず、3月26日のイングランド戦以降、テュラムが出場した試合はテュラムが主将を務め、テュラムも出場しなかった5月31日のパラグアイ戦はアンリが主将を務めた。テュラムはイングランド戦以来出場した5試合連続で主将を務め、通算で16試合目のキャプテンマークとなったが、苦い思い出の試合になったのである。(続く)