第1149回 2012年欧州選手権予選開幕 (4) 試合を支配するもベラルーシに敗れる

■4-1-3-2システムで戦うベラルーシ戦

 前回の本連載で紹介したとおり、第4シードのベラルーシをホームに迎えるとはいえ、不安材料の多いフランス代表、その心配が現実のものとなってしまった。今年3月のスペイン戦以来の本拠地スタッド・ド・フランスでの試合、観衆は76,395人、スペイン戦よりも3,000人ほど少ないが三色旗でスタンドは埋め尽くされる。
 この試合のシステムは、4人のDFの前に1人の守備的MF、その前方に3人のMFが配置され、攻撃陣は2トップである。メンバーを紹介すると、GKはワールドカップ組のウーゴ・ロリス、DFは中央にアディル・ラミ、フィリップ・メクセスというノルウェー戦と同じコンビ、サイドDFは右にバカリ・サーニャ、左がガエル・クリシーというワールドカップからの復権組となった。ここまでは試合前の予想通りであったが、MFは中盤の底にノルウェー戦である程度めどの付いたヤン・エムビラ、攻撃的な位置には中央にアブー・ディアビ、右にノルウェー戦で代表にデビューし注目を集めたジェレミー・メネス、左にフローラン・マルーダ、2トップは右にギヨーム・オラオ、左にロイック・レミーとノルウェー戦と同じコンビである。

■経験の少ないメンバー、フローラン・マルーダ初の主将に

 このようにみるとワールドカップ組が5人、ノルウェー戦組が6人となり、経験不足は否めない。これまでの代表出場数が2桁の選手はロリス(14試合)、サーニャ(23試合)、メクセス(14試合)、マルーダ(57試合)と4人しかおらず、ワールドカップ組の中でもクリシーとディアビは8試合しか出場経験がないのである。そしてもっとも代表での出場数の多いマルーダが初めてキャプテンマークをつけることになった。今年になってフランス代表としてこれが9試合目であるが、主将が変わり、3月のスペイン戦はティエリー・アンリ、5月末以降の親善試合とワールドカップのメキシコ戦までの5試合はパトリス・エブラ、ワールドカップの南アフリカ戦はアルー・ディアラ、ノルウェー戦はメクセス、そして今回はマルーダと実に5人目の主将である。このようにメンバーも軸となる選手も固定していない中で試合に勝てるはずがない。

■マルーダが主将の意地を見せたドリブル、ケビン・ガメイロ代表デビュー

 試合は満員の観衆の中でキックオフされ、フランスがボールを6割がた支配する。2トップの2人に生きたボールを供給することができずチャンスにつながらない。34分には最前線のレミーが負傷したため、マチュー・バルブエナが投入され、まずまずの動きを見せる。バルブエナの投入以降、フランスはチャンスをつかむようになる。前半ロスタイムにはマルーダが主将の意地を見せ、ハーフライン付近からドリブルで中央を突進する。青い袖にまいた黄色いキャプテンマークが輝いた瞬間であった。マルーダは強烈なシュートを放つが、敵GK真正面で得点には至らず。両チーム無得点のままハーフタイムを迎える。
 そして後半もフランスは一方的に試合を支配し、チャンスをつかむものの、なかなかゴールネットを揺らすことができない。69分には動きの良くないメネスに変わりルイ・サアを投入、ところが80分にはそのサアが故障したため、ケビン・ガメイロを投入する。ガメイロは前々回の本連載で紹介したとおり、フランスリーグのフランス人の中で最多得点を記録し、ついに代表にデビューした。

■途中出場のセルゲイ・キスリャクの一撃に泣く

 しかし、この日唯一のゴールは同じ交代選手でも75分にピッチに入ったベラルーシの背番号15セルゲイ・キスリャクであった。左サイドDFのクリシーがペナルティエリア内のゴールライン直前で競り負けてセンタリングをあげられてしまい、中央にいたキスリャクが豪快にゴールネットを揺らす。キスリャクは昨年11月に代表にデビューし、初ゴールは今年5月の韓国戦であることから日本の読者の皆様もよくご存じの選手であり、代表2点目が価値あるゴールとなってフランスはベラルーシに0-1と敗れてしまったのである。(続く)

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