第1295回 アルバニア、ルーマニアと連戦(5) 予選前半の不振から立ち直ったルーマニア
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■アウエーチームがすべて勝利した9月2日の3試合
今予選で上位チーム相手に勝ち点を重ねているアルバニアとアウエーで対戦し、序盤に2点を奪って勝利したフランス、9月6日のルーマニア戦が最後のアウエーでの試合となる。
9月2日にはアルバニア-フランス戦以外に2位のベラルーシが3位のボスニア・ヘルツェゴビナを迎え撃ち、最下位ルクセンブルクがブービーのルーマニアを迎える。この中でベラルーシとルクセンブルクは試合消化が1試合多い。2位争いに関しては、フランスにとってはすでにホーム、アウエーとも対戦を終え、残り試合の少ないベラルーシが勝利した方が都合がいい。
しかしミンスクで行われた試合、アウエーのボスニア・ヘルツェゴビナは22分にPKで先制、24分にも追加点をあげて2-0と勝利している。また、かすかな望みを残すルーマニアも前半に2点を奪って2-0と勝利している。すなわちこの日は3試合ともアウエーチームが勝利した。
この結果、残り3試合(ベラルーシとルクセンブルクは2試合)の段階の順位は首位フランス5勝1分1敗(勝ち点16)、2位ボスニア・ヘルツェゴビナ4勝1分2敗(13)、3位ベラルーシ3勝3分2敗(12)、4位ルーマニア3勝2分2敗(11)、5位アルバニア2勝2分3敗(8)、6位ルクセンブルク1分7敗(1)となった。をあげてから3連勝している。
■6月に代表監督を交代したルーマニア
ようやく第2シードらしくなってきたルーマニア、残りの3試合の結果によっては首位も可能である。フランスの本拠地、スタッド・ド・フランスで対戦したのは昨年10月、この時の監督はラズバン・ルチェスク、クラブチームでの実績を認められ、2009年に代表監督に就任したが、今予選前半の責任を取って6月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦の後に監督の座を退いている。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の後に南米選手権を控えるブラジル、パラグアイと親善試合を正式な監督不在の中で行うが、この連戦は無得点で連敗してしまう。
■昨秋の対戦から大幅にメンバーを入れ替えたルーマニア
6月中旬にビクトール・ピツルカが監督に就任する。ピツルカ監督はルチェスク監督の前任であり、これが3回目の代表監督となる。これまで2回の代表監督時は2回とも欧州選手権予選を突破している。そのピツルカ監督の率いるルーマニアは8月の親善試合でサンマリノに勝利、9月6日のルクセンブルク戦も勝利し、初めてのホームゲームをフランス相手に行う。ここで勝利すれば首位フランスと勝ち点差2に詰め寄ることができる。
ちょうど11か月ぶりの対戦となる両チームであるが、ルーマニアは大きくメンバーが変わった。今回の先発メンバーのうち、11か月前のスタッド・ド・フランスでの試合に出場していた選手は、キャプテンマークをつける左サイドDFのラズバン・ラツと11か月前の試合では右サイドのウイングだったラズバン・コシチュのわずか2人である。
本連載では過去のフランスとルーマニアとの対戦を紹介してきたが、過去20年間にワールドカップや欧州選手権の予選で同じグループになったのは1996年欧州選手権予選、2010年ワールドカップ予選に続き3回目と比較的同じグループに入ることが多い。これらの予選での戦績は1996年欧州選手権予選のアウエーの戦いでフランスが勝利した以外はすべて引き分け、昨年10月のドローもその流れをくむものであろう。予選の試合では1年強の間に2回対戦することになるが、同一の予選の戦いの第1戦と第2戦でこれだけメンバーが入れ替わるのは珍しいことである。それだけ昨年から今年にかけてのルーマニアがどれだけ試行錯誤を繰り返してきたかを物語るメンバー起用である。
■フランスで現役引退したビクトール・ピツルカ監督、4度目のフランス戦
そして今年6月に3度目の代表監督となったピツルカ監督は選手としてのキャリアをRCランスで終えている。1989年夏、ピツルカが初めての外国のチームとして選んだRCランスは2部に降格したところだった。ピツルカはチームに貢献するが結局2部8位で1部に復帰できず、ピツルカは現役を引退する。その翌年にRCランスは1部に復帰、強豪となった。そしてピツルカ監督はこれまでにフランスとは3回の対戦経験があるが、2008年欧州選手権本大会、2010年ワールドカップ予選と3試合とも引き分けている。フランスに対して特別な思いのあるピツルカ監督は勝利に対する強い願望を持っているのである。(続く)