第1296回 アルバニア、ルーマニアと連戦(6) ブカレストの戦いはドロー、首位争いは混とん
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ルーマニア相手に39年間負けのないフランス
欧州選手権予選グループDで首位をキープしているフランス、9月6日のルーマニア戦はこの予選で最後のアウエーゲームである。2位のボスニア・ヘルツェゴビナと消化試合数が同じフランスが勝ち点3差でリードしている。ボスニア・ヘルツェゴビナはアウエーで破ったばかりのベラルーシとホームで連戦するため、フランスはルーマニア相手に勝ち点3を積み上げ、10月の決戦を迎えたいところである。
フランスはルーマニアに対して過去10試合6勝4分と負け知らず、ルーマニアの最後の勝利は1972年4月8日のブカレストでの親善試合である。ルーマニアは前回の本連載で紹介したビクトール・ピツルカ監督が4回目の挑戦で初勝利を狙っている。フランス相手に過去4分6敗のルーマニアにとしては、フランスと3戦して3分と言うピツルカ監督がそろそろ初勝利をあげてもいいころである。
■超満員のブカレストの国立競技場
ルーマニア代表の本拠地は国立競技場である。屋根つきの2階建ての近代的な競技場であり、1階部分の下段は赤い椅子、1階の上段と2階の下段は椅子が黄色く、2階の上段は青い椅子、すなわちルーマニア国旗の赤、黄、青が順に配色されている。しかし、試合になると超満員の5万5000人の観衆が集まり、無数のルーマニア国旗、そして数は少ないものの青、白、赤のフランス国旗も元気よくはためいている。アルバニア戦ではセカンドユニフォームを着用したフランスであるが、この日は上から青、白、赤のファーストユニフォームで試合に臨む。一方のルーマニアは上から下まで黄色いユニフォームで39年ぶりの勝利を目指す。
■主将を務めるウーゴ・ロリス
フランスの布陣であるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右にバカリ・サーニャ、中央はアディル・ラミとエリック・アビダル、左はパトリス・エブラである。守備的MFはヤン・エムビラ1人で攻撃的な位置はヤン・カバイエとマルバン・マルタンが入る。FWは右にマチュー・バルブエナ、左にフランク・リベリー、中央はカリム・ベンゼマである。前回の本連載ではルーマニアが昨年10月とは大きくメンバーが変わったことを紹介したが、フランスの先発メンバーも昨年10月の試合に出場した選手はロリス、ラミ、エムビラ、バルブエナ、ベンゼマの5人だけである。しかし、それ以外のメンバーもほとんどは1年前から代表入りしており、前回のルーマニア戦を知らないのはマルタンくらいである。アルバニア戦ともメンバーが入れ替わり主将はアルー・ディアラからロリスへと託されている。フローラン・マルーダ、アントニー・レベイエール、ユネス・カブールもベンチに下がった。
■両チーム決め手にかけ、スコアレスドロー
勝ち点3を狙うフランスは序盤から積極的に攻め、ゲームを支配するが、チャンスはなかなかつかめない。逆に決定機が多かったのは守勢のルーマニア、黄色いユニフォームの選手のFKは切れ味鋭く、主将のロリスが意地でセーブする。
後半に入っても60分過ぎにフランスはCKやFKでチャンスをつかむが、得点には至らず、セットプレーを得点にできないところがフランスの攻撃の課題であろう。何とか1点を奪いたいフランスは71分にロイック・レミ、75分にサミール・ナスリと攻撃陣を投入する。これまでの予選7試合でフランスは12人しか交代要員を使っていない。交代枠を1試合2人以下しか使わなかったローラン・ブラン監督、ブカレストで勝負をかけたと言えるであろう。
しかしながら、ゴールネットを揺らすことができないフランス、この悩みはルーマニアも同じである。予選終盤になって勝ち点1の引き分けは勝ち点ゼロの負けに近い。両チーム無得点のまま、大きなため息とともに試合終了の笛をイングランドのハワード・ウェブ主審が吹く。
フランスの最大のライバルであり、ルーマニアにとっても標的であるボスニア・ヘルツェゴビナはベラルーシにホームで1-0と勝利する。この結果、グループDはフランスが首位をキープしたものの、2位ボスニア・ヘルツェゴビナに勝ち点1差に詰め寄られ、3位にルーマニアが浮上したが、2位とは勝ち点4差となる。フランスとボスニア・ヘルツェゴビナは10月7日に下位チームとホームで対戦するため、この2チームにチケット争いは絞られたが、千秋楽の10月11日に直接対決するのである。(この項、終わり)