第1410回 初戦はライバル・イングランド戦(2) 監督交代、負傷者続出、出場停止に悩むイングランド

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■近年はイングランドを圧倒しているフランス

 6月11日18時、グループDのフランスはイングランドとグループリーグの初戦を戦う。イングランドについてはかつてはフランスが勝てない時代が続いたが、1999年2月に敵地ウェンブリーでニコラ・アネルカの活躍で勝利して以来、相性のいい相手となっている。近年の対戦成績を振り返ってみても2010年11月にはウェンブリー、2008年3月にはスタッド・ド・フランスでの親善試合で対戦し、いずれもフランスが勝利している。
 また欧州選手権の本大会では2度グループリーグで対戦しており、1992年のスウェーデン大会ではスコアレスドロー、そして2004年のポルトガル大会ではロスタイムに逆転を演じ、2-1と勝利している。

■予選は5勝3分、欧州選手権で復権を目指すイングランド

 このように近年の対戦ではフランスが圧倒しているが、イングランドも近年の国際大会ではフランスと似た状況である。2008年の欧州選手権は予選落ち、2010年のワールドカップではグループリーグはようやく突破したものの、決勝トーナメント1回戦でドイツに1-4と大敗している。しかし、今回の欧州選手権予選は5勝3分とグループ首位で突破、フランス同様、この欧州選手権で久しぶりに強いイングランドを見せるはずだった。

■主将の人種差別疑惑でファビオ・カペッロ監督が代表監督を辞任

 しかし、昨年秋の国内リーグで代表チームの主将を務めるジョン・テリーが人種差別的な発言をした疑惑により、今年2月にイングランド協会から主将の座をはく奪される。この措置に対して当時の代表監督でイングランドを本大会出場に導いたファビオ・カペッロ監督が代表監督を辞任する。本大会4か月前に起こった主将の交代と監督の辞任、後任の代表監督にはトットナム・ホットスパーのハリー・レドナップ監督が有力視されていたが、代表監督の決定は5月にまでずれ込み、結局ウェストブロムウィッチのロイ・ホジソン監督が代表監督の座に就いた。ホジソン監督はイングランド国内だけではなく外国での指導経験も豊富であり、このような混乱期にはうってつけの人材とみる意見もあったが、マスコミやファンは名門トットナムをチャンピオンズリーグ出場まであと一歩のところまで引き上げたレドナップ監督を支持する声が大きかったのも事実である。このような雑音の中で、新監督はわずか1月でチームを本大会に向けて仕上げなくてはならない。

■相次ぐ負傷者、エースのウェイン・ルーニーは出場停止

 さらに新監督を待っていたのは次々と追加される負傷者のリストであった。中盤から、チャンピオンズリーグでチェルシーを優勝に導いたフランク・ランパード、マンチェスター・シティのプレミアリーグ優勝の原動力となったギャレス・バリーが外れる。直前のベルギーとの親善試合ではランパードのチェルシーのチームメートのDFのギャリー・ケーヒルが顎を骨折、代替メンバーが合宿地に直接招集される。GKは結局3人の登録選手のうち2人は2部以下のクラブに所属する選手となった。
 そしてイングランドの悩みは負傷者だけではない。昨年10月7日の予選最終戦となるモンテネグロ戦で、エースストライカーのウェイン・ルーニーがラフプレーで一発退場となり、フランス戦を含む大会最初の2試合は出場停止となる。
 世界ランキングこそフランスより上位の6位であり、直前の親善試合もノルウェーとベルギーを下しているものの、この負傷者の山、新監督の準備期間の短さ、エースのルーニーの出場停止というマイナス要素が重なり、イングランド代表はこれまでにないほど期待されていないのは事実である。
 しかし、1990年ワールドカップのポール・ガスコイン、1998年ワールドカップのマイケル・オーウェンなどイングランドは本大会でニュースターを生んできた。今回も18歳のアレックス・オクスレイド・チェンバレンがノルウェー戦で代表にデビューし、ベルギー戦にも出場しており、イングランドのファンもかすかな希望を持っているのである。(続く)

このページのTOPへ