第1419回 ローラン・ブラン監督辞任(1) 得意のボール支配で圧倒されたスペイン戦
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■優勝国スペインに決勝トーナメントで敗れたフランス
準々決勝でフランスが敗れたスペインが勝ち進み、連覇を果たした今回の欧州選手権。大会前から優勝候補筆頭と目され、4年前の欧州選手権、2年前のワールドカップと国際大会で連覇を果たしたスペインの優勝は順当なところであろう。
結果だけを見れば、フランスがスペインに勝つことができなかったことも順当であろう。8年前にポルトガルで開催された欧州選手権でもフランスは準々決勝で優勝したギリシャに敗れている。また6年前の2006年ワールドカップもフランスは決勝でイタリアにPK戦の末敗れている。1998年ワールドカップ、2000年欧州選手権とフランスが連覇を果たして以来、フランスは6回の国際大会に出場、そのうち3回(2002年ワールドカップ、2008年欧州選手権、2010年ワールドカップ)はグループリーグで敗退しているが、決勝トーナメントに進出した3回はすべて優勝国に敗れている。
■ボールを支配するフランスのサッカー
このようにみると今回は善戦したようにも思えるが、到底そうは思えず、惨敗という評価が支配的である。
確かに、グループリーグでは結果はともかく、試合内容では相手を圧倒していた。初戦のイングランド戦はドローに終わったが、圧倒的に攻め、サッカーの母国の白いユニフォームを自陣ゴール前にくぎ付けにした。そして第2戦のウクライナ戦は雷雨による試合中断というアクシデントこそあったものの、満員の地元の観衆の声援を受けたウクライナ相手に、終始ゲームを支配し、満場のスタジアムを沈黙させた。さらにスウェーデン戦はスウェーデンの英雄のイブラヒモビッチの豪快なボレーシュートなどで0-2と敗れたものの、試合内容はそれまでの2戦と同様であり、ボールと陣地を支配した。
フランス代表は2年前にローラン・ブラン監督が就任して以来、ボールを支配し、相手がブラジルやドイツのような強豪国相手であってもボールを支配し、ブラジルには1-0、ドイツにも2-1と勝利している。また、欧州選手権の本大会では引き分けたイングランドに対しても敵地ウェンブリーで2-1と勝利している。ブラン監督になってから、相手のほうがボール支配率が高かったのは2011年夏のチリとの親善試合だけであり、それもわずかに50%を切るというレベルである。
■スペイン相手にわずか40%強のボール支配率
しかし、今回のスペイン戦は、なんとボール支配率はわずか40%強、相手がポゼッションサッカーの本家であるスペインということを差し引いてもボールを支配されすぎた。その結果としてシュート数はわずかに4本、さらに枠内に飛んだシュートは前半の32分にヨアン・カバイエが放ったFKだけである。フランスが有効に活用していないFKからこの試合唯一の枠内へのシュートだったということを考えれば、いかにこの試合がフランスらしくないものであったがお分かりであろう。
■選手の闘争心にも疑問が残るスペイン戦
さらにこの試合は選手の闘争心についても疑問が残る。これまで親善試合で連敗中の相手に対し、立ち向かっていくためには相手との競り合いという局地戦での戦いをベースに試合を進めていかなくてはならないはずであるが、この試合の競り合いの数は大会全体を通じても非常に少ないレベルにとどまっており、ボールを支配された形のフランスの選手の闘争心の欠如がそのまま如実に数字に表れている。
結局スペインに敗れてフランスの欧州選手権が終わったが、スペイン戦敗戦の伏線はその直前のスウェーデン戦にある。スウェーデンに勝つことができなかったことが選手に精神的なプレッシャーを与えていたことは事実であろう。フランスにとってスウェーデン戦の敗戦は2年前の欧州選手権予選初戦のベラルーシ戦以来のことであり、ちょうど悪いタイミングで連勝がストップしてしまったのである。
そしてこの惨敗したスペイン戦の後、フランスのサッカー界は大きく揺れたのである。(続く)