第1421回 ローラン・ブラン監督辞任(3) 公式戦の成績が悪いローラン・ブラン時代
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■就任直後と欧州選手権の最後で連敗
サミール・ナスリのスペイン戦後のミックスゾーンでの暴言など、チーム内の多くの問題が表面化したフランス代表、2年前の南アフリカでのワールドカップ敗退後を思わせるような混乱が再発した。
南アフリカワールドカップの際はレイモン・ドメネク監督が辞任したが、今回もローラン・ブラン監督の責任を問う声が早速あがった。ブラン監督は2年前の夏に就任しており、初戦のノルウェーとの親善試合、第2戦となる欧州選手権のベラルーシ戦で連敗し、どうなることかと思われたが、そこから立て直し、21試合無敗で今季の欧州選手権を迎えた。
イングランド戦、ウクライナ戦と相手を圧倒しグループリーグ首位で突破かと思われたが、すでにグループリーグ敗退が決まっているスウェーデンには優勢に試合をすすめながら、2点を奪われ、グループリーグ首位の座をイングランドに奪われ、スペインとの決勝トーナメントでは完敗であった。
結局就任直後の2試合と、欧州選手権最後の2試合が黒星でそれ以外は勝ちまたは引き分け、というのがブラン監督時代のフランスであった。
■公式戦よりも親善試合の方が好成績
27戦して16勝7分4敗という成績はそれほど悪いものには見えないが、ここに数字のマジックがある。ブラン監督は、欧州選手権の予選と本大会を戦ったが、この公式戦の戦績に限ると14戦して7勝4分3敗となる。一方の親善試合の戦績は13戦して9勝3分1敗である。欧州選手権の予選では相当力の離れたチームと対戦することから、通常フランスのレベルの場合、単純な勝率、結果だけ考えれば公式戦の方が親善試合より良くなるはずである。しかしながら、ブラン監督時代のフランスは公式戦の戦績が親善試合の戦績よりも悪いことは大きな問題であろう。
■公式戦で抜群の成績を残したジャック・サンティーニ監督
ちなみに、フランスは1996年以降、欧州選手権、ワールドカップの本大会に欠かさず出場している。この期間の監督を振り返ってみると、1996年の欧州選手権時から1998年ワールドカップまでフランス代表を率いていたのはエメ・ジャッケ監督、それ以降は1998年から2002年ワールドカップまでロジェ・ルメール、2002年から2004年欧州選手権までジャック・サンティーニ、2004年から2010年ワールドカップまでレイモン・ドメネクとなり、ブランが5人目の監督である。
この5人の公式戦の戦績を見てみると、2004年の欧州選手権の予選と本大会を戦ったサンティーニは17戦15勝1分1敗と圧倒的な数字を残し、総試合数に対する勝率は実に8割8分である。2002年のワールドカップ惨敗というイメージの強いルメールであるが、2000年欧州選手権の予選と本大会ではよい成績を残し、24戦15勝4分5敗で勝率は6割2分であり、サンティーニに次ぐ勝率を誇っている。
そして意外に思われるかもしれないが、ワールドカップ優勝監督のジャッケは22戦13勝9分であり、勝率そのものは5割9分と6割を切っている。ジャッケは1996年欧州選手権の予選と本大会、1998年ワールドカップの本大会でフランス代表を率いたが、就任後最初の仕事である欧州選手権では負け越ししなかったもののなかなか勝つことができず、10戦5勝5分という成績であった。そのため勝率はさえないが、1996年のイングランド、1998年のフランスでの素晴らしい成績はファンの記憶に残る。
■レイモン・ドメネク時代以下の成績のブラン時代
ジャッケと逆の意味で記億に残るのが、ドメネクである。2006年ワールドカップの予選と本大会、2008年欧州選手権の予選と本大会、そして2010年ワールドカップの予選と本大会と代表監督としては異例の長期政権であったが、チームがうまく機能したのは2006年ワールドカップの決勝トーナメントだけ、それもジネディーヌ・ジダンの頭突きですべてが終わってしまった。公式戦の勝率は47戦24勝16分7敗と辛うじて5割を上回る5割1分。
そしてそのドメネクを下回るのがブランであり、14戦7勝4分3敗という成績はちょうど5割である。南アフリカの惨劇からチームを立て直したかに見えたブランであるが、極めて厳しい数字しか残せなかったのである。(続く)