第1422回 ローラン・ブラン監督辞任(4) 監督と主将のリーダーシップに限界

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■チームメイトの問題を押さえられなかった主将のウーゴ・ロリス

 前回の本連載で紹介したとおり、欧州選手権の予選、本大会での成績が親善試合に比べて悪かったローラン・ブラン監督、スタイルとしてのパスサッカーを完成したものの、チーム内の規律という点からも世間から厳しい評価を下されることになった。
 チーム内の規律という点ではブラン監督がチーム内の問題児をおさえることができなかったということに加え、チームの主将であるウーゴ・ロリス自身もチームメイトを押さえることができなかった、ということも指摘できるであろう。

■ローラン・ブラン監督時代の3人目の主将

 チーム内の規律という点ではプロの選手であるから、それなりの個性を持った選手ぞろいである。実は21戦無敗という成績を続けていたことからあまり話題にはならなかったが、このブラン時代の代表チームのキャプテンもこれといった人材に恵まれなかった。
 実質的に初戦となった2010年9月3日のベラルーシ戦はフローラン・マルーダが代表58試合目にして初めて主将を務めたが、マルーダのキャプテンマークはこの試合のみ。4日後のボスニア・ヘルツェゴビナ戦ではブラン監督の秘蔵っ子ともいえるアルー・ディアラが主将を務める。アルー・ディアラはその後も主将を務めるが、2010年11月17日のイングランド戦はベンチスタートとなる。このウェンブリーの試合で、ロリスが初めて主将を務めた。その後は再びアルー・ディアラが主将を務めるが、2011年9月6日のルーマニア戦からはロリスがその後出場した試合すべてで主将を務め、今年2月のドイツ戦でブラン監督から主将として任命されている。
 ロリスは上流階級出身の優等生タイプで、模範的な選手であることは衆目の意見が一致するところであるが、チームのトラブルメーカーを収束させるような強烈なリーダーシップを持っていたわけではないところが今回のチームの内紛を引き起こしたとも言えるであろう。
 フランス代表には強力なリーダーシップが欠如していたのである。

■8月からのフランス代表の予定

 そして、フランス代表はまた秋から2014年ワールドカップ・ブラジル大会に向けた予選が始まる。
 ここで今後のフランス代表の日程を確認してみよう。今年も恒例の夏の親善試合が行われる。8月15日にワールドカップで3位になったウルグアイをルアーブルで迎える。そして9月最初の週からワールドカップ予選が始まる。9月7日はフィンランド、11日にはベラルーシとそれぞれホームで対戦する。
 10月、11月はタフな相手との連戦となる。10月は12日に日本とホームで親善試合、16日にはスペインとアウエーで戦う。11月にはワールドカップ予選はないが、14日にイタリアとアウエーで親善試合を行う。いずれもワールドカップの優勝候補国であり、フランスにとっては厳しい相手との3連戦となり、これを終えて2013年を迎えることになる。
 ここで気になるのが2014年ワールドカップ予選の顔ぶれであるが、本連載第1277回と第1278回で紹介したとおり、フランスは第2シードに甘んじ、組み合わせ抽選の結果、第1シードのスペインと同じグループIに入ってしまう。

■王者スペイン、難敵ベラルーシと対戦するワールドカップ予選

 スペインとは今回の欧州選手権で敗れただけではなく、2008年、2010年と親善試合で対戦していずれも敗れており、現在3連敗中である。ワールドカップ予選の方式は、グループ首位だけが本大会に直接出場、グループ2位の場合はプレーオフに回る。つまりスペインを倒さない限り、ブラジルへの直行切符は手に入らない。さらに、気になるのは第3シードのベラルーシである。ベラルーシとは今回の欧州選手権予選でも対戦したが、1分1敗とフランスは勝つことができなかった。ベラルーシの存在は、プレーオフ経由のブラジル行きのチケットも危ういものにする。
 このように2014年のワールドカップ予選を戦うにはブラン監督では厳しいという世論もあり、フランス協会は6月28日にブラン監督と話し合うが、話し合いの結果、2日間の猶予を与えることになった。その2日後、ブラン監督の辞任が発表される。
 そして、後任監督は万人が支持する人物となったのである。(続く)

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