第1944回 ようこそフランスへ (4) 本大会初出場のウェールズとアイスランド

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■第3シードまでの16チームがグループリーグで2位以内に入る

 これまでの本連載では第1シードから第3シードまでの27か国のうち第1シード6チーム、第2シード4チーム、第3シード4チームの合計16チームがグループリーグで2位以内に入り、本大会出場権を獲得した。2位以内に入ることができるのは18チーム、第4シード以下のチームが2チーム2位以内に入ったことになる。

■ワールドカップ1958年大会以来58年ぶりに本大会に出場するウェールズ

 第4シードの中で2位以内に入ったのがウェールズである。グループBに入ったウェールズは第1戦はアウエーで第6シードのアンドラ戦。フランスとスペインの間にある小国、わずか3000人の観衆の前で試合は行われ、アンドラが先制点をあげる。ウェールズはガレス・ベイルが同点ゴールと終盤に逆転ゴールをあげてようやく勝利する。この時点でウェールズの本大会出場を想像したファンは誰もいなかったであろう。第2戦はホームのカーディフでボスニア・ヘルツェゴビナ戦である。ボスニア・ヘルツェゴビナは第1シードであるが、初戦でキプロスに敗れており、この試合はスコアレスドロー。第3戦は第5シードのキプロスをホームに迎え、2-1と勝利、相手にも恵まれたが、2勝1分と勝ち点を積み上げて2014年最後の試合はベルギーとアウエーで戦い、スコアレスドローに持ち込む。
 年が明けて2014年になってもウェールズは負け知らず、着実に勝ち点を積み上げる。8戦終わった段階で5勝3分で首位である。第9節は3勝2分3敗の4位とさえない第1シードのボスニア・ヘルツェゴビナとアウエーで対戦、0-2と敗れるが、同日に3位のイスラエルがキプロスに敗れたため、ベルギーと共に2位以内が決定した。ウェールズは欧州選手権の本大会にはこれが初出場となる。ワールドカップの本大会もペレがデビューした1958年大会しか出場しておらず、実に58年ぶりの大舞台となる。

■オランダ相手にホーム、アウエーとも勝利したアイスランド

 そして第5シードからグループリーグで2位に入ったのがグループAのアイスランドである。第1シードからオランダ、第2シードからチェコ、第3シードからトルコと難しいグループであり、上位国相手に全く勝てなかったオランダが脱落し4位に終わったことは前々回の本連載で紹介した。アイスランドは初戦でトルコをレイキャビクに迎える。ここでトルコを3-0と一蹴し、続くアウエーのリトアニア戦も勝利する。
 そしてレイキャビクに戻ってオランダと対戦する。この段階でオランダは1勝1敗、敗れたのはアウエーのチェコ戦であり、この時点でその後の転落を誰も予想していなかったであろう。このオランダ戦でアイスランドはPKで先制、さらに追加点をあげて2-0と勝利し、集まった9760人の観衆は歴史の証人となったのである。第4戦のアウエーのチェコ戦は敗れたものの、第6戦はチェコをホームに迎え、2-1と鮮やかに逆転勝ちを収める。2014-15シーズンを終えた時点でこのグループAは首位アイスランド5勝1敗(勝ち点15)、2位にチェコ4勝1分1敗(勝ち点13)となったのである。そして秋を迎えた9月3日、アイスランドはオランダのアムステルダムのアレーナに乗り込む。ここまで3勝1分2敗で勝ち点10のオランダは首の皮一枚、この予選で最多の50,275人のファンが後押しする。しかし、この試合、唯一の得点はアイスランド、51分にPKで挙げた得点を守りきり、歴史的勝利、オレンジに染まったアレーナは沈黙してしまう。

■アイスランドとチェコが抜けだしたグループA

 グループAはアイスランドとチェコが抜けだした形になり、9月6日の第8戦でリトアニアに勝利したチェコとカザフスタンと引き分けたアイスランドが本大会出場を決めた。2試合を残して2位以内が2つとも決定したのはこのグループAだけである。
 アイスランドは日本が初めて勝利した欧州のチームということで日本の皆様にはなじみが深く、写真家の宇都宮徹壹の作品でも有名であるが、欧州選手権、ワールドカップの本大会に出場するのはこれが初めて、しかもオランダ、トルコを押さえての予選突破は快挙である。(続く)

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