第2036回 アイルランドに逆転勝利 (2) システム変更成功、アントワン・グリエズマンが2ゴール
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■開幕戦のルーマニア戦と同じシステム、同じメンバー
FIFAランキングこそアイルランドの33位に対してフランスは17位と上位であるが、フランスにとってこのアイルランドが難敵であることは否めない。
リヨンのパルク・オランピック・リヨネに姿を現したフランスのイレブンは、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、アディル・ラミ、ローラン・コシエルニー、パトリス・エブラと守備陣は変わらない。
そして試合のたびにシステムを変えてきた中盤と攻撃陣であるが、スイス戦同様に4-3-1システムを採用、中盤の中央にはエンゴロ・カンテを起用し、MFは右に通常は左に入るブレーズ・マツイディ、左にポール・ポグバを配置する。そして攻撃陣は中央にオリビエ・ジルー、右にアントワン・グリエズマン、左にディミトリ・パイエという布陣である。MFの左右が入れ替わっているが、これは開幕戦のルーマニアとの試合と同じシステム、同じメンバーである。このところ良い成績を残すことができない決勝トーナメントの初戦、グループリーグの初戦と同じメンバーで捲土重来を期すのが指揮官たるディディエ・デシャンの心境であろう。
■開始1分経たない段階でPKを献上、先制を許す
15時キックオフの試合、強烈な日差しの下で試合はキックオフされる。パルク・オランピック・リヨネは多くの緑のサポーターが押し掛ける。サンテチエンヌ戦でもここまでこのスタジアムは緑にはならないだろう。その緑のサポーターは試合開始早々に歓喜の雄たけびを上げる。試合が始まってから1分もたたない59秒にポグバがペナルティエリア内でシェーン・ロングに対しファウル、イタリア人の主審のニコラ・リッゾーリ氏はペナルティスポットを指さす。PKを蹴るのはイタリア戦のヒーロー、ロビー・ブレイディ、ロリスが守るゴールネットを揺らし、フランスは2分に早くもリードを奪われる。その後もアイルランドはダリル・マーフィーが惜しいシュートを放つなど、初めてこのスタジアムで試合を行うフランスを圧倒する。
■後半開始時に4-3-3システムから4-2-3-1システムへ変更
1点のリードを許し、ハーフタイムを迎えたフランスは、後半開始の時点でメンバーの交代とシステムの変更を行う。カンテをベンチに下げ、キングスレー・コマンを投入する。これに伴い4-3-3システムから4-2-3-1システムへ変更し、中盤の低めの位置をポグバとマツイディが担当し、マツイディが本来の右サイドに代わる。そしてコマンが右サイドのウイング、前半に右サイドのウイングを務めていたグリエズマンは中央のトップ下に移動する。中央のジルーと左サイドのパイエは変わらず、1点のビハインドをはねかえすべくピッチに戻る。
■アントワン・グリエズマン、2ゴールで得点王争いの首位に並ぶ
デシャン監督の交代とシステム変更が功を奏する。まず輝いたのはトップ下に移ったグリエズマンである。アトレチコ・マドリッドの一員として長いシーズンを送ったグリエズマンは代表チームへの合流も遅れたが、ようやく調子を上げてきた。中央に位置した後半はパスが面白いように回ってきた。58分にサーニャの右からのクロスにヘディングであわせて同点ゴールを決める。さらにスタジアムが緑色から青色に変化して間もない61分にもグリエズマンがゴールを決める。今度は最終ラインのラミからのロングフィードをジルーがアイルランドの守備陣の隙間を突くパスでグリエズマンにつないだボールをグリエズマンがネットを揺らす。通算3得点となったグリエズマンはスペインのモラタ、ウェールズのガレス・ベイルと並んで得点王争いの首位となる。
そしてグリエズマン同様、後半に躍動したのがマツイディである。前回の本連載で紹介したとおり、この新スタジアムでプレーした経験のある数少ない選手である。しかし、リーグ優勝を決めた直後のパリサンジェルマンの一員として戦った試合でリヨンに不覚を取っている。後半は多くの攻撃を演出した。
また、忘れてはならないには主将のロリス、この試合でデシャン監督を抜く歴代1位の主将55試合目となった。現在はイングランドのトットナムに所属するが、リヨンの黄金期を支え、見事に故郷で新記録を達成し、準々決勝進出を決めたのである。(この項、終わり)