第2040回 ドイツに国際大会で58年ぶりに勝利(1) 堅守を誇るドイツ、攻撃力のフランス
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■1958年ワールドカップを最後に国際大会でドイツに勝てないフランス
今大会の台風の目となったアイスランドに5-2と大勝したフランス、準決勝の相手はドイツである。ドイツはグループCを2勝1分で首位通過、決勝トーナメントに入ってからはスロバキアを3-0と一蹴し、準々決勝ではイタリアをPK戦で下している。ドイツがボルドーでイタリアとの激戦を戦ったのはフランスがアイスランドに勝利した前日の7月2日である。準々決勝はフランスが楽な戦いだったの比べ、ドイツはかなり厳しい試合であったが、フランスの方が試合間隔が1日短い。
フランスとドイツの過去の対戦成績は西ドイツ時代もあわせてフランスが12勝6分9敗と勝ち越している。直近の対戦は昨年11月13日のスタッド・ド・フランスでの親善試合、同時多発テロの起こった試合であり、フランスが2-0と勝利している。ただし、フランスは国際大会ではドイツになかなか勝てない。欧州選手権では本予選ともこれまでに対戦がなく、ワールドカップも本大会での対戦しかない。ワールドカップの2014年ブラジル大会では準々決勝で0-1と敗れたことは記憶に新しい。フランスは東西ドイツが統合してから8回対戦しているが、2敗のうちの1敗がこの試合である。さらにさかのぼれば、1986年大会の準決勝では0-2とフランスは完敗、1982年大会でも準決勝で対戦し、セルビアの激闘と今でも語り継がれている試合ではPK戦でフランスが敗れている。フランスは1958年スウェーデン大会の3位決定戦で6-3と勝利したのが唯一のワールドカップでの勝利である。フランスにとって国際大会ではドイツは大きな壁になっているのである。
■抜群の守備力を誇るマヌエル・ノイアー
現在のフランスにとって最大の壁はドイツのGKのマヌエル・ノイアーであろう。これまでに幾多の名GKを輩出してきた系譜を引き継ぎ、代表チームだけではなく所属するバイエルン・ミュンヘンでも大活躍している。今大会もここまで5試合で失点はわずかに1、5試合中4試合は完封している。ノイアーのシュートセーブ率は9割近く、出場している選手の中でポーランドのルーカス・ファビアンスキーに次いで2位である。フランスのウーゴ・ロリスのセーブ率が50%であることを考えれば非常に厳しい関門がゴール前に待ち受けている。
■得点力のあるフランスの攻撃陣
一方のフランスはこれまで5試合で11点、この時点で1試合あたりの得点が2.2というのは最多である。フランスの攻撃陣はここまで4得点で得点ランキング首位のアントワン・グリエズマンだけでなく、オリビエ・ジルーとディミトリ・パイエが3得点とFWの選手が得点源となっている。中盤以下ではポール・ポグバが1得点を記録している。そして頼もしいのはノイアーから得点を奪ったことのある選手が現在のメンバーの中に6人もいることである。昨年11月の親善試合ではジルーとアンドレ・ピエール・ジニャックがノイアーの守るゴールのネットを揺らしているが、チャンピオンズリーグでバイエルン・ミュンヘンと対戦している選手が数多くいる。
■チャンピオンズ決勝進出を決めたアントワン・グリエズマンのゴール
バイエルン・ミュンヘン戦でノイアーからゴールを奪ったフランス人というと、今春のチャンピオンズリーグ準決勝第2戦のアトレチコ・マドリッド(スペイン)のグリエズマンを鮮明に記憶されている読者の方は少なくないであろう。5月3日にミュンヘンで行われた準決勝第2戦、ホームでの第1戦で1-0と先勝しているアトレチコ・マドリッドは前半31分にシャビ・アロンソの先制を許すが、後半に入って54分にグリエズマンが同点ゴールを決める。その後ロベルト・レバンドフスキーに勝ち越し点を奪われたが、2試合合計得点で並び、アトレチコ・マドリッドがアウエーゴール2倍ルールで決勝に進出する。結果的にはグリエズマンのゴールが決勝進出を決めたのである。そのグリエズマンは舞台がミュンヘンからマルセイユへと変わってもノイアーの堅守を破ったのである。(続く)