第2042回 ドイツに国際大会で58年ぶりに勝利(3) アントワン・グリエズマンの2ゴールで決勝進出
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■ボールを支配し、パスをつなぐドイツ
欧州選手権では本大会、予選を通じて初めて対戦するフランスとドイツ、昨年の親善試合はフランスが勝利したが、2年前のワールドカップ準々決勝では先制したドイツに対し、フランスは試合を支配するものの、ゴールが遠く、0-1で敗れてしまった。
マルセイユで行われた準決勝の試合はその2年前のワールドカップとは逆の展開となった。試合を支配したのは主力選手を累積警告や負傷退場で欠くドイツであった。フランスのお株を奪うショートパスを数多く成功させ、試合を支配する。先に得点のチャンスをつかんだのはフランスであった。アントワン・グリエズマンとブレーズ・マツイディがワンツーを決めて、最後のシュートはグリエズマン、しかしこれはゴールの枠から外れる。
■ウーゴ・ロリス、サミュエル・ウムティティ、ローラン・コシエルニーの健闘
試合を支配したドイツがフランスのゴールを襲ったのは14分のことである。メスート・エジルのクロスをこの欧州選手権で初めての試合出場となったエムレ・ジャンがシュート、フランスのGKウーゴ・ロリスがCKに逃げる。今回の欧州選手権ではこれまでの5試合で、枠内に放たれたシュート8本のうち、4本しか防ぐことができなかったロリスであるが、このドイツ戦では相手の名GKマヌエル・ノイアーをしのぐ活躍を見せることになる。
守備陣で健闘したのがこの日が代表2試合目となるサミュエル・ウムティティである。アディル・ラミの累積警告により、代役となったアイスランド戦は、結果的には2失点を喫している。ラミが出場可能となるドイツ戦でも先発出場させたディディエ・デシャン監督の選手起用に対する疑義の声もあったが、この日のプレーは落ち着きを見せ、決して身体能力だけで守備をしているわけではなく、デシャン監督の判断が正しかったことを証明した。
またウムティティとコンビを組むローラン・コシエルニーはここまで1対1の競り合いでの強さを見せてきたが、ドイツの攻撃陣に対し、この強さは健在、ワールドカップでゴールを量産してきたトーマス・ミューラーを完封する。
■幸運な判定で得たPKをアントワン・グリエズマンが決めて先制
そして劣勢であったフランスは前半の終盤にラッシュをかける。42分にはオリビエ・ジルーがチャンスをつかむが、累積警告で出場停止となったマッツ・フンメルスに代わりこの日ストッパーを務めていたベネディクト・ヘーベデスがナイスタックル、フランスの先制を許さない。しかし、アディショナルタイムにドイツは不運が襲う。パトリス・エブラとペナルティエリア内で争ったドイツの主将バスティアン・シュバインシュタイガーの手にボールがあたる。故意には見えなかったがイタリア人の主審のニコラ・リッツォーリ氏はペナルティスポットを指さす。ドイツには不運な判定であったが、ペナルティスポットにボールは置かれ、次のプレーが始まる。キッカーは目下得点ランキングトップのグリエズマン、立ちはだかるのはノイアーである。ノイアーは左に飛ぶが、グリエズマンの蹴ったボールはその逆方向であった。グリエズマンのPKにより、フランスは1点先行してハーフタイムを迎える。
■グリエズマン追加点、大会6得点はミッシェル・プラティニ次ぐ2位
後半に入り、ドイツは守備の要となっているジェローム・ボアテングが負傷する。今大会では多くのパスに絡み、攻撃の起点としても機能していたストッパーに代わり、シュコドラン・ムスタフィがピッチに入る。この守備陣の変更を突いたのがポール・ポグバである。ポグバはムスタフィを難なく抜き、グリエズマンへパスをつなぐ。グリエズマンは難なくシュートを放ち、ノイアーの守るゴールはまたもネットが揺れた。
2得点を挙げたグリエズマンはこれで大会6点目となる。これまでの大会で最多得点は1984年大会のミッシェル・プラティニの9得点であり、グリエズマンの6点はそれに次ぐ成績である。
グリエズマンの2得点でフランスは昨秋の親善試合と同じスコアで勝利する。欧州選手権では1984年大会、2000年大会に続く3回目の決勝進出であり、16年周期で優勝トロフィーを掲げる準備はできたのである。(この項、終わり)