第2901回 UEFAネーションズリーグファイナルズ(6) 欧州選手権で決勝トーナメントに進出したスペイン
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■ホームの利を活かせず、引き分けが2試合続いたスペイン
分散開催となった今回の欧州選手権は11か国(イングランドとスコットランドは別の国とカウント)の11都市で開催される。11か国の中で本大会に出場していないのはアゼルバイジャンとルーマニアのみ、したがって9か国はホームで試合をすることになる。グループリーグは6つに分けられたが、開催国が2つ入っているグループが3つ、1つだけ入っているグループが3つとなった。各グループのうち1チームはグループリーグの3試合すべてが自国の競技場での試合となる。その6チームのうちの1つがスペインであったが、スペインは初戦と第2戦を引き分けてしまった。最初の2試合をホームで戦ったチームのうち勝ち点2以下だったのはスペイン以外にはハンガリー(1分1敗)とデンマーク(2敗)だけであった。
■最終戦で引き分け以上であれば決勝トーナメントに進出
最終戦を迎える時点でスペインの所属するグループEの順位は首位がスウェーデン(勝ち点4、得失点差+1)、2位がスロバキア(3、±0)、3位がスペイン(2、±0)、4位ポーランド(1、-1)となる。最終戦はスペイン-スロバキア、スウェーデン-ポーランドという組み合わせである。すでにグループDまでの4グループは全日程を終了しており、3位チームは勝ち点4が2チーム、勝ち点3が2チームであるが、勝ち点3の2チーム(フィンランドとウクライナ)はいずれも1勝2敗であり、得失点差がマイナスとなっている。すなわち、スペインは引き分ければ勝ち点3で得失点差が±0となり、グループEで3位になったとしても決勝トーナメントに進出できる。またグループ3位の場合は決勝トーナメントをセビリアで戦う可能性もある。しかし、ホームで3引き分けという成績にスペインのファンが納得するわけがない。
■フランスの年代別代表で活躍したアイメリク・ラポルトがゴールを決める
引き分け以上で決勝トーナメントとなるスロバキアは守備を固める。このスロバキアに対してなかなか得点をあげることができなかったスペインであるが、30分にオウンゴールで先制すると、前半のアディショナルタイムの48分にはアイメリク・ラポルトが追加点を決める。本連載の読者の方であれば、よくご存じであろうが、フランスのバスク地方の出身、アンダーエイジではフランス代表の常連であり、主将も務めている。フル代表にも2016年10月に行われたワールドカップ予選で初めて招集されたが、試合には出場しなかった。その後も代表に招集されるもののブルーのユニフォームを着ることがなく、最後の代表招集は2019年9月の欧州選手権予選である。所属するマンチェスター・シティ(イングランド)で大活躍し、フランス代表以外の可能性も残されたラポルトは、今年5月にスペイン国籍を取得、スペイン代表入りを目指すことに方向転換した。この時期のスペイン国籍の取得は欧州選手権が1年延期されたことが大きく影響している。もしコロナが世界を襲わなければ、ラポルトは年代別代表の常連であったが、結局フル代表には入れなかった選手という評価で終わっていたであろう。ラポルトはさっそくスペイン代表の一員となり、6月5日のポルトガルとの親善試合でデビュー、守備陣の強化が課題であったスペインにとってはラストピースとなったのである。
■後半もゴールラッシュでスロバキアを下し、決勝トーナメントへ
前半を2点リードで折り返したスペインの勢いは後半になっても止まらなかった。56分にはパリサンジェルマン所属しているパブロ・サラビア、67分にはラポルトのチームメイトであるフェラン・トーレス、そして71分には再びオウンゴールということで5-0と大勝した。スウェーデンも勝利したためグループ2位にとどまったが、決勝トーナメントに進出したのである。
決勝トーナメント1回戦の相手はグループDを2位通過したクロアチアである。スペインは自国を離れ、デンマークのコペンハーゲンで戦うことになるのである。(続く)