第3178回 アイルランドにも勝利、連勝スタート(1) フランスとアイルランドの名勝負
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■若い守備陣が自信をつけたオランダ戦
ワールドカップが終了して最初の試合がオランダとの欧州選手権予選というタフなゲームになったフランス代表であるが、3月24日にスタッド・ド・フランスで行われた試合は、4-0という予想外のスコアで大勝した。新主将のキリアン・ムバッペが2ゴールを奪っただけではなく、副将となったアントワン・グリエズマンも先制点を上げている。そして今後守備の中心となるであろうダヨ・ウパメカノとイブラヒマ・コナテのストッパー陣はGKのマイク・メニャンとともに安定した守備を見せ、優勢に試合を進めていたオランダを完封した。オランダ戦がウパメカノは代表13試合目、コナテは8試合目、メニャンは6試合目、代表歴の浅い3人がオランダの攻撃を封じたことは意味がある。
■ラグビーの6か国対抗でアイルランドとの頂上決戦に敗れたフランス
ワールドカップ決勝の敗戦から3か月強、欧州選手権での優勝を目指すことがフランスの目標であるが、ワールドカップでは欧州勢にフランスは敗れなかった。ところが本連載の読者の皆様であれば、フランスにとって欧州勢相手の悔しい敗戦は2月11日に行われたラグビーの6か国対抗のアイルランド戦であろう。6か国対抗となってから初めて世界ランキング1位(アイルランド)と2位(フランス)がダブリンで対戦、本連載の第3149回と第3150回で紹介した通り、アイルランドが32-19とフランスを下す。フランスは連勝記録が14でストップする。アイルランドは全勝優勝(グランドスラム)を達成したが、フランスもアイルランド戦以外は全勝し、2位となった。
■ワールドカップ、欧州選手権の本大会が遠いアイルランド
フランスのスポーツファンにとっては悔しい敗戦となったが、その時と同じダブリンのアビバ競技場でフランスは欧州選手権予選の第2戦をアイルランドと戦う。
アイルランドはワールドカップは2002年の日本・韓国大会を最後に本大会に出場していない。2022年大会の欧州予選ではグループAでセルビア、ポルトガルに次ぐ3位となり、プレーオフにすら出場できなかった。
欧州選手権は2021年大会は予選落ちしているが、フランスで開催された2016年大会は本大会に出場し、決勝トーナメントに進出している。決勝トーナメント1回戦ではリヨンでフランスと対戦している。この試合でアイルランドは開始早々に先制して、後半を迎えたが、フランスは58分と61分にグリエズマンが得点をあげて、フランスがベスト8入りしている。
■物議をかもした2010年ワールドカップ予選のプレーオフ
これまでにフランスはアイルランドと17回対戦しているが、その対戦成績はフランスの8勝、アイルランドの4勝、5つの引き分けとなっているが、その中で名勝負としてファンの記憶に残っているのが、2010年ワールドカップ予選のプレーオフである。フランスはワールドカップ予選でプレーオフを戦ったことはそれまでにもあったが、それらは引き分け再試合という意味のプレーオフで一発勝負であり、予選のグループリーグで首位にならなかったチームで争われるホームアンドアウエー方式のプレーオフを戦ったのはこの時だけである。この模様は本連載第1027回から第1032回で紹介しているが、2009年11月14日にダブリンのクロークパークで行われた試合はアイルランドが圧倒的に試合を支配したが、終盤にニコラ・アネルカがゴールを決めてフランスが先勝している。
アウエーの第1戦で先勝したフランスは11月18日の第2戦をスタッド・ド・フランスで迎える。フランス有利と思われていたが、ホームゲームでもフランスは大苦戦を強いられる。試合の序盤から負傷による選手交代を余儀なくされ、33分にはアイルランドの主将のロビー・キーンが先制点を上げる。これで通算スコアは1-1となる。フランスは守勢一方となるが、GKのウーゴ・ロリスが獅子奮迅の活躍を見せ、アイルランドの追加点を許さず、試合は延長戦となる。延長前半も終わろうとする104分、フランスはゴール前でティエリー・アンリが折り返してウィリアム・ギャラスが決勝点を上げ、南アフリカ行きを決める。しかし、この際にアンリはハンドを犯していることを本人も認めている。もしこのハンドが認められればPK戦でワールドカップ行きのチケットを争ったかもしれない。
フランスのファンが1月半前のラグビーの敗戦を忘れていないのと同様、アイルランドのファンは14年前のアンリのハンドを忘れていないのである。(続く)