第3389回 初戦はオーストリアに勝利(1) オーストリアに力を吹き込んだラルフ・ラングニック監督

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■4会場が集中しているノルトライン・ウェストファーレン州

 ディディエ・デシャン監督が現役時代の2000年大会以来の優勝を目指すフランスは初戦のオーストリア戦の5日前の6月12日にドイツ入りした。フランスの合宿地はパーダーボルン、ドイツ西部のノルトライン・ウェストファーレン州にある。ドイツの産業を支えてきた地域であり、有力都市を抱える。今大会は10都市10会場で行われるが、そのうち4会場がこのノルトライン・ウェストファーレン州にある。
 合宿地の選定はもちろん環境を重視するが、立地としてはグループリーグの会場とのアクセスのよい場所が選ばれる。今大会でフランスは、グループリーグの第1戦がデュッセルドルフ、第2戦は旧東ドイツのライプチヒ、第3戦はドルトムントと3試合中2試合は州内での試合となる。
 グループDのフランスは第1戦でオーストリア、第2戦でオランダ、第3戦でポーランドと対戦、奇しくもフランスを含むすべての国が開催国ドイツに隣接している。なお、ドイツはこの4か国以外にベルギー、デンマーク、スイス、チェコ、ルクセンブルクと隣接しているが、ルクセンブルク以外は本大会に出場している。

■第2シードのオーストリア

 今大会のグループリーグの組み分け時のシードは今大会の予選の結果で決められた。開催国ドイツは自動的に第1シードとなるが、残る5チームには予選で8戦全勝のポルトガル、7勝1分のフランスが続き、スペイン、ベルギー、イングランドが入った。わずか8試合の成績だけで決まるため、意外なシード順もあった。オーストリアもオランダも予選を2位通過し、勝ち点、得失点差で並んだが、総得点の差でオーストリアが上回り、第2シードとなり、得点がわずか1少なかったオランダは第3シードとなったが、同じグループDに入った。そして第4シードのポーランドは予選では3位であったが、プレーオフを勝ち抜いてきた。
 フランスがオーストリアと戦う前日の6月16日にグループDは開幕し、オランダがポーランドを2-1と下している。

■近年のタイトルマッチでは互角のフランスとオーストリア

 中欧の古豪と呼ばれるオーストリアとフランスはこれまでに25回対戦しており、フランスが13勝3分9敗と勝ち越しているが、1925年の初対決から6連敗、最初の勝利は7度目の対戦となった1946年のことであった。それ以降はフランスが圧倒しているが、直近の対戦では2022年のヨーロッパリーグではフランスはホームで勝利し、アウエーで引き分け、2010年のワールドカップ予選では双方がホームで勝利しており、均衡した結果となっている。
 また主要大会の本大会での対戦はこれまでに2回、1934年のイタリアワールドカップではオーストリア、1982年のスペインワールドカップではフランスが勝利、これが欧州選手権の本大会では初めての対戦となる。

■好調なチームを支えるラルフ・ラングニック監督

 オーストリアは本大会直前のスパーリングマッチではセルビアに勝利し、スイスと引き分けているが、昨季は欧州選手権予選でベルギーに敗れただけであり、10月からここまで負けていない。
 このチームを支えているのがラルフ・ラングニック監督である。ドイツ人のラングニック監督は選手としてプロ経験はないが、指導者としてその才能を発揮し、当時2部だったRBライプチヒを1部に昇格させただけではなく、数多くの弟子が指導者として活躍し、ラングニック派と呼ばれている。ラングニック派の中には現在ドイツ代表を率いるユリアン・ナーゲルスマンもおり、師弟対決の可能性もある。
 長らくドイツ国内のクラブの監督を歴任してきたラングニックは2021年にイングランドのマンチェスター・ユナイテッドの暫定監督となり、初めての国外での経験となる。そして2022年の夏に初めての代表監督となった。当時のオーストリアはカタールワールドカップの出場権をかけたプレーオフに敗れ、6大会連続でワールドカップ本大会を逃していたが、ラングニック監督は見事に最初の主要大会の予選を勝ち抜いたのである。(続く)

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