第3407回 回顧・欧州選手権 (1) 不振だったフランスの攻撃陣
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■動きの中からの得点が1点どまりだったフランス
欧州選手権では優勝候補として期待されながら、準決勝でスペインに敗れたフランス。ベスト4という結果についてはまずまずであるが、期待を裏切ったのはその試合内容である。6試合でわずか4得点、しかもその中で動きの中から生まれた得点は最後の準決勝のランダル・コロムアニによるものだけで、それ以外はPKが1得点、オウンゴールで2得点であった。一方、失点は準決勝のスペイン戦こそ2点を奪われたが、それ以外はPKの1点(ポーランドのロベルト・レバンドフスキ)だけに抑えている。
■ディディエ・デシャン監督を支えてきたアントワン・グリエズマンが不調
ディディエ・デシャン監督をはじめとする首脳陣もこの構図は理解しており、GKと最終ラインの4人の守備陣についてはメンバーを固定して戦ったが、攻撃陣に関してはムバッペの顔面負傷というアクシデントもあり、毎試合メンバーやシステムを変えて戦ったが、ゴールは遠かった。攻撃陣に関してはデシャン政権を支えてきたアントワン・グリエズマンの調子が良くなかったことが大きな要因であろう。デシャン監督就任以来、皆勤賞であったが、3月の連戦は負傷のため離脱、大会直前の6月のルクセンブルク、カナダとの連戦は先発メンバーとして復帰した。大会に入って初戦のオーストリア戦、第2戦のオランダ戦はいずれも先発メンバーに名を連ねたが、これといった得点機を作ることもできず、第3戦のポーランド戦ではついに先発メンバーから外れた。グリエズマンがベンチスタートとなったのは2022年ワールドカップでグループリーグ突破を決めた後の第3戦のチュニジア戦以来である。ポーランド戦では後半の途中からの交代出場となったが、結局追いつかれている。
決勝トーナメントに入ってからも状況は変わらず、ベルギー戦はフル出場したが、ポルトガル戦は後半途中にベンチに下がり、スペイン戦は後半途中からの出場にとどまった。そして、ゴールもアシストも記録することなくドイツを去った。現在33歳のグリエズマンはここまで代表で44ゴールをあげているが、最後の得点は昨年9月のドイツ戦、勝利した試合に限定すると昨年3月の欧州選手権予選のオランダ戦までさかのぼらなくてはならない。加齢とともにパフォーマンスが落ちてきたところで、負傷による離脱、復帰しても本来の活躍ができず、チーム全体に暗い影を落とすことになった。
■負傷もあり、期待外れだったキリアン・ムバッペ
そして攻撃陣ではPKの1点に終わったムバッペも期待外れであった。もちろん、オーストリア戦で顔面を骨折し、オランダ戦は欠場し、ポーランド戦から復帰したということを差し引いても、持ち前のスピードを自身または味方のシュートに結び付けることができなかった。唯一の見せ場がポーランド戦で相手のオウンゴールを誘ったシーンだけであった。このプレーで決勝トーナメントに入ってから本領発揮かとファンは期待したが、それは実現せず、ポルトガル戦ではグリエズマンとともに試合の終盤にベンチに下げられ、PK戦に加わることはできなかった。
■インパクトを与えることができなかったオリビエ・ジルー
さらに、3月26日のチリとの親善試合でフランス代表として最年長ゴールを記録し、今大会に臨んだ37歳のオリビエ・ジルーもその存在感を示すことができなかった。大会前最後の試合となる6月日のカナダ戦は先発メンバーとなったが、結局、グループリーグの3試合はすべて終盤に交代出場したが、これといったインパクトを与えることなく試合終了のホイッスルを聞いた。決勝トーナメントに入っても、ベルギー戦、PK戦までもつれたポルトガル戦では試合に出場することなくベンチで試合を見ていた。準決勝のスペイン戦、1-2という1点ビハインドの79分、ウスマン・デンベレに代わってピッチに入ったが10分強のプレータイムの中で同点ゴールを決めることができなかった。
このように攻撃陣が不振に終わったが、これでも準決勝まで戦うことができたのはひとえに守備陣は健闘によるものであろう。(続く)