第170回 欧州のビッグ5からの転落、3年連続でベスト8を逃す

■フランス勢最後の望み、オセール

 前回の本連載の冒頭で2月下旬に行われたUEFAカップの4回戦でオセールがリバプールに敗れたことを紹介したが、この敗戦は単純にフランスのクラブが国際試合でイングランドのクラブに敗れたと言うだけにはとどまらない深刻な意味を持っていたのである。
 オセールは、第59回の連載で紹介したように前年度のフランスリーグ3位として欧州チャンピオンズリーグに参戦したが、第140回で紹介したように1次リーグで3位に終わり、UEFAカップの3回戦に転戦してきた。UEFAカップの3回戦は第148回および第149回で紹介したように昨年暮れに行われ、オセール同様欧州チャンピオンズリーグ2次リーグに進出できなかったリヨン、ランスに加え、1回戦から勝ち残ってきたボルドー、パリサンジェルマンと5チームが参戦したが、結局3回戦の壁を突破できたのはオセールだけであった。

■最後の望みもかなわず、リバプールに連敗

 唯一のフランス勢としてUEFAカップ4回戦に進出したオセールの対戦相手はイングランドのリバプールである。第1戦はオセール、第2戦はリバプールで行われる。ホームアンドアウエーのノックアウト方式の場合、第2戦をホームで戦う方が有利である。それは延長となった場合、ホームで戦うということもあるが、やはり勝敗が最終的に決定する第2戦をホームで戦うということは心理的に優位に立てるのであろう。実はオセールは1991-92シーズンのUEFAカップ2回戦でリバプールと対戦している。この時も第1戦をホームで戦い、2-0と先勝したが、第2戦はリバプールで0-3と敗れ、絵に描いたような逆転負けを喫している。
 運悪く、ホームで第1戦を戦うことになったオセールであるが、欧州カップでのオセールは昨年11月12日のドルトムント戦、12月12日のベティス戦とホームでは連勝中である。赤いユニフォームの過去の輝かしい栄光、12年前の悪夢など考えずに相手のゴールへ突き進むだけである。ところがオセールの最前線にはジブリル・シセの姿がない。シセは出場停止で不在、プレミアリーグで最も失点の少ないリバプール守備陣にとって、シセのいない攻撃陣に対する恐怖感は全くない。オセールにとって守備を固めたリバプールのゴールは遠く、逆に72分にはリバプールは主将のフィンランド代表の長身DFサミ・ヒューピアがこの試合唯一の得点をあげる。フランス人監督ジェラール・ウリエは母国でアウエーゲームの見本のような試合運びを行い、先勝したのである。
 そしてその1週間後、真っ赤に染まったアンフィールドにオセールは乗り込む。シセがオセールに戻ってきたが、この試合の主役は当然のことながらマイケル・オーウェンであった。66分に準々決勝進出を決定的にする先制点を奪う。この得点はオーウェンにとって欧州カップで通算22得点目となる。この通算22得点はあのイアン・ダルグリッシュと並び、偉大な記録に早くもオーウェンは追いついたのである。オーウェンの先制点がリバプールを勢いづけ、オセールを沈黙させた。6分後にはダニー・マーフィーが追加点。これでオセールの夢、フランスの夢は完全に消えたのである。

■3年連続で欧州カップ準々決勝に進出できず

 欧州カップの準々決勝にフランス勢が残ることができなかったのはこれで3年連続となる。これまでの10シーズンを省みれば、1992-93シーズンから1998-99シーズンまで7シーズン連続で複数のチームが欧州カップの準々決勝に残っており、そして毎年少なくとも1チームが準決勝に進出していたのである。欧州カップ最後の準々決勝進出チームとなった1999-2000シーズンのUEFAカップに出場したランスも準決勝に進出している。
 ところが、欧州チャンピオンズリーグは1997-98シーズンのモナコ(準決勝でユベントスに敗退)を最後に5シーズン連続でベスト8に残ることができず、1998-99シーズンが最後となったカップウィナーズカップも前年優勝のパリサンジェルマンが2年連続で決勝に進出し、バルセロナに敗れた1996-97シーズンを最後に、準々決勝に残っていない。そして1993-94シーズンを除いて毎年フランス勢が準々決勝以上に残り、1998-99シーズンにはマルセイユが決勝に進出したUEFAカップも3シーズン連続してベスト8入りを逃している。
 確かに現在のフランスには、欧州チャンピオンズリーグの決勝でレアル・マドリッドやマンチェスター・ユナイテッドに勝つクラブは存在し得ないであろう。しかし、欧州カップのベスト8クラスに残ることは超ビッグクラブでなくともできることである。フランスリーグと並んで欧州のビッグ5と言われるイングランド、イタリア、ドイツ、スペインというリーグに所属するビッグクラブに負けなければ、欧州のベスト8に残ることは困難なことではない。最後の希望となったオセールはくじ運が悪かったが、3年連続でベスト8に所属クラブが残らなかったことは、フランスリーグが欧州のビッグ5から陥落していることを物語っているのである。(この項、終わり)

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