第273回 UEFAカップ秋の陣(1) フェアプレー枠で出場したランス

■最も難しいタイトルからチャンピオンズカップの下位のタイトルへ

 欧州チャンピオンズリーグと並ぶ欧州カップがUEFAカップである。かつてはチャンピオンズカップ、カップウィナーズカップに次ぐタイトルでC3と今でも呼ばれているが、三大タイトルの中で最も歴史が古く、そして強豪国からは複数チーム出場できる唯一のタイトルであったため、最も難しいタイトルと言われてきた。
 しかしながら、欧州カップの再編成により、チャンピオンズリーグにも強豪国から複数エントリーできること、1999-2000シーズンからカップウィナーズカップが廃止され、UEFAカップに統合されたこと、そして前回の連載で紹介したマルセイユのようにチャンピオンズリーグの敗者復活戦としてUEFAカップが位置付けられたことから、UEFAカップは完全にチャンピオンズリーグの下位に位置するタイトルになってしまった。
 タイトルの権威や特徴が失われたとはいえ、国外とのチームの対戦は各チームにとっては貴重な収益源であり、ファンにとっては楽しみであり、チームやファンにとっての重要性は変わらない。そしてなによりも「カップ」と言う名称にふさわしく1回戦から決勝まですべてノックアウト方式のトーナメントで大会が開催され、昔日の欧州三大カップの伝統を守っている。

■フェアプレー枠でランスに出場権

 今年のUEFAカップにフランスからは予備戦にフェアプレーランキングでトップとなったランス、本戦の1回戦にリーグ4位のボルドー、5位のソショー、フランスカップ優勝(リーグ6位)のオセールが出場した。ランスのフェアプレーランキングについてはこれまでの本連載で紹介していないため、簡単に説明したい。フェアプレーを推進するUEFAは加盟国の代表チームならびに欧州カップ戦でのクラブチームのフェアプレーを数値化してランキング付けしている。この際に単純な警告・退場の数だけではなく、フェアプレーへの積極性、審判・対戦相手への敬意、チーム関係者やファンの行いまで評価されている。その結果、トップはイングランドであり、特別にイングランドの1チームにUEFAカップ出場権が与えられ、マンチェスター・シティが推薦された。そしてイングランドに近いレベルに9か国が並んだが、2か国にフェアプレー枠を与えることになり、6月上旬に抽選が行われ、幸運のくじを引いたのがデンマークとフランスであった。フランス国内でもフェアプレーのランキングが行われ、2002-03シーズンで国内のフェアプレーランキングでトップとなったランスにUEFAカップ出場のチケットが渡されたのである。

■ランス、予備戦連勝で本戦進出

 リーグ戦で8位となり、本来ならばインタートトカップを経由して欧州挑戦となるランスであったが、幸運さとフェアプレーへの姿勢が評価され、インタートトの決勝が行われるのとほぼ同時期の8月14日と28日に行われた予備戦で欧州の戦いが始まった。予備戦の相手はグルジアのトルペド・クタイシ。まず、ランスのフェリックス・ボラールで戦いの火ぶたは切って落とされたが、シーズン開始間もないため、ランスは押し気味に試合を進めながらも得点をあげることなく、2万6000人の地元ファンは心配したが、70分にフランス代表のダニエル・モレイラが得点をあげると、チュクウディ・ウタカ、パパ・ディオップもこれに続き、3-0と余裕のスコアで勝利し、2週間後のアウエーの試合でもダギ・バカリが2ゴールを上げ、連続して完封勝ち、本戦に進出した。

■ボルドー、ソショー、オセール、ランスが挑む本戦1回戦

 フランスからインタートトカップには、リーグ7位のガンガン、9位のナント、ランスのフェアプレー枠出場によって繰上げ出場となった10位のニースの3チームが挑戦した。しかし、いずれも力及ばず、UEFAカップ本戦出場は当初から出場権を獲得していたボルドー、ソショー、オセールとランスの4チームだけとなった。本戦1回戦は96チームが出場し、2回戦までホームアンドアウエーのノックアウト方式で戦い、24チームに絞られたところで年が変わる。3回戦にはこの24チームに加え、チャンピオンズリーグのグループリーグで3位になった8チームが加わる。4回戦、準々決勝、準決勝、そして決勝とクラシックなカップ戦が争われるのである。(続く)

このページのTOPへ