第304回 春を迎えたフランス・サッカー(2) リヨン、モナコとも準々決勝進出
■試合序盤にGKが負傷退場したリヨン
2月下旬にアウエーで行われたチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、モナコはロコモティフ・モスクワに2点リードを許しながら、フェルナンド・モリエンテスのゴールでアウエーゴールをあげて1点差の負け、リヨンは幸運なオウンゴールを奪って先勝と、まずまずのスタートを切った。
第2戦は3月9日と10日に4試合ずつ行われ、火曜日の9日、第1戦とは逆にリヨンが先に登場した。近年フランス・サッカーの覇者として君臨するリヨンのホーム、ジェルラン競技場は4万近い観衆で埋め尽くされた。真紅のユニフォームに身を包んで登場するリヨン。第1戦で勝利し、心理的に余裕のあるリヨンは地元の大観衆の声援を受けてグラウンドを走り回るが、アクシデントが起こる。リヨンのGKへのバックパスをレアル・ソシエダの選手がカットしようとラッシュし、リヨンの守護神グレゴリー・クーペと衝突する。クーペはこの衝突で負傷し、試合を中断して治療に当たったもののプレー継続は不可能と判断し、フランス代表歴もある最後の要はベンチへ下がったのである。
■ジュニーニョのゴールでリヨン連勝、ベスト8へ
リヨンはジュニーニョを中心に攻撃を組み立てるが、ゴールネットを揺らすには至らない。1点取れば第1戦との通算得点でリヨンと並ぶレアル・ソシエダも同点になる気配はなく、無得点のまま時間は過ぎてゆく。このままの展開でもリヨンの準々決勝進出が決まるという77分、満員のスタンドを歓喜させるゴールが生まれた。ペギー・リュインデュラからのパスをオフサイドぎりぎりのポジションで受けたジュニーニョが左足のサイドキックでゴールに押し込む。第1戦、第2戦と攻撃の中心として活躍したブラジル人MFの決勝点でリヨンは欧州のベスト8に勝ち残ったのである。
■リーグ首位の意地を見せたいモナコ
リヨンの勝利を受けて、翌日に試合を行うモナコが奮起しないわけがない。リーグ戦ではリヨンが首位を走り、2位のリヨンが追うという展開である。リーグ首位の意地にかけても敗退は許されない。モナコのルイ二世競技場のチケットは珍しく前売りで完売する。アウエーの第1戦は1-2で敗れているため、1-0で勝利すればアウエーゴール2倍ルールで勝ち上がることはでき、攻撃的布陣。一方のロコモティフ・モスクワは、地元のライバルであるスパルターク・モスクワが2回、CSKAモスクワが1回、チャンピオンズリーグでベスト8入りしており、ロシアとして3チーム目のベスト8入りを果たすために守備的な布陣。
■PKを失敗したダド・プルソ、名誉挽回の決勝点
試合は予想通りモナコの攻勢で始まった。そして試合開始から得点機を活かせなかったモナコは18分にペナルティエリアの中のファウルによりPKのチャンスを得る。しかし、ダド・プルソの蹴った球をロコモティフ・モスクワのGKがセーブ、なおもこぼれ球をルーカス・ベルナルディがシュートしたが、クロスバーの上を通り過ぎ、チャンスを逃す。ピンチを逃れたロコモティフ・モスクワにはさらに試練が訪れる。22分に主将のドミトリ・ロスコフに2枚目のイエローカードが提示され、退場処分となり、モナコは数的有利に立つ。アドバンテージを得たモナコは、なおも攻め続けるがゴールが遠い。荒れ気味の試合はイエローカードの嵐となる。8枚目のイエローカードが出た60分、ベルナルディからのクロスをプルソがゴール隅に決めて、ついに待望の先制点。前半にPKを失敗したプルソはこれで名誉挽回、そしてこの段階で初めてモナコは優位に立ったのである。1点返せば逆転するロコモティフ・モスクワも10人では攻撃に精彩を欠き、その後もモナコが一方的に攻め続け、モナコは理想的なスコアで勝利を収める。1勝1敗で得失点差0となったが、アウエーゴール2倍ルールでモナコが準々決勝進出を決めた。結果的にはアウエーの第1戦でのフェルナンド・モリエンテスのゴールがモナコの勝利の決め手となったのである。(続く)