第305回 春を迎えたフランス・サッカー(3) 6年ぶりのベスト8は2チームが進出
■シードチームが優勢だった1回戦
リヨンがレアル・ソシエダ(スペイン)、モナコがロコモティフ・モスクワ(ロシア)を下してベスト8に進出したチャンピオンズリーグ1回戦であるが、その他の1回戦の結果を紹介しよう。最大の驚きはラコルーニャ(スペイン)がホーム、アウエーともユベントス(イタリア)を破ったことであろう。同じスペインのレアル・マドリッドは優勝経験のあるバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)とアウエーで引き分けて、ホームの第2戦で勝利して勝ち残る。4番目のスペイン勢のセルタ・ビゴはアーセナル(イングランド)に連敗する。3チームが登場したイングランドのうちマンチェスター・ユナイテッドはポルト(ポルトガル)にアウエーの第1戦での1点差の敗戦をリカバリーできず、敗退するという番狂わせ。1回戦で敗れたシードチームはユベントスとマンチェスター・ユナイテッドだけで、チェルシー(イングランド)はシュツットガルト(ドイツ)にアウエーの第1戦で勝利して、ホームでは余裕のスコアレスドロー、逆に前年覇者のACミラン(イタリア)はアウエーをスコアレスドローで乗り切り、ホームで大差をつけてスパルタ・プラハ(チェコ)を下す。シードチームとノンシードチームの間にはもちろん実力差はあるものの、2試合の展開を見れば、第2戦をホームで行うことのアドバンテージは疑いのないところであろう。
■リヨン、ベスト8入りした11番目のフランスのチームとなる
このようにベスト8進出チームを国別に比較すると、フランス、イングランド、スペインが2チームずつ、イングランドとポルトガルがそれぞれ1チームということになった。フランス勢がベスト8に残るのは実に1997-98シーズンのモナコ以来ということで、6年ぶりの快挙となった。チャンピオンズリーグは前身の欧州チャンピオンズカップと通算すると、ほぼ半世紀の歴史を有する。これまでにフランスのチームがベスト8に残ったのは20回、10チームである。リヨンはもちろん初めてのベスト8入りであり、フランスのサッカーの歴史に名前を刻み込んだ11番目のチームとなったのである。今までにリヨンはカップウィナーズカップで2回(1963-64、1967-68)、UEFAカップで1回(1998-99)ベスト8に入っているが、最高峰のタイトルは5度目の挑戦で初めてのベスト8入りである。
■4度目のベスト8入りでフランスで最多となったモナコ
一方のモナコは1988-89、1993-94、1997-98のシーズンに続いて4度目のベスト8であるが、これはフランスのクラブの中で最多となった。従来はランス(Stade de Reims)、マルセイユ、サンテエチエンヌが3回でモナコと並んでいたが、今回のベスト4入りによってモナコが一歩抜け出すことになった、ランス、サンテエチエンヌにはかつての栄光の面影はなく下位リーグに低迷しており、マルセイユも最後にベスト8に進出したのは決勝で勝ちながら、八百長疑惑でタイトルを剥奪された1992-93以来、10年以上遠ざかっており、モナコに対抗するべく、名門復活が望まれる。
■複数チーム出場方式となって初めてのベスト8入り
フランス勢は6年ぶりにベスト8に進出したが、1988年から1998年までの11年間でフランス勢がベスト8に残ることができなかったのはマルセイユがスパルタ・プラハに敗れた1991-92年だけであった。それ以外の年は必ずベスト8に進出するというフランスのクラブチームは黄金の十年であったが、自国でのワールドカップ開催・優勝とともにピタリとその活躍がとまってしまい、長い低迷期に入ってしまった。その長い低迷から抜け出しただけで十分に評価に値するが、もう一つ評価するべきことがある。それはこのチャンピオンズリーグが1998-99からは1か国からは複数のチームが出場できるようになり、結果的には強豪国から複数のチームが上位に進出することになった。
もしも1990年代の初めにフランスからも複数のチームがこのチャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ)に出場することができれば、複数のフランスのチームが上位に進出することができたであろう。複数のチームがフランスから出場できるようになってからは複数どころか1つのチームも上位に進出することができなかったのである。6年ぶりのフランス勢のベスト8入りは、現行の複数チームの出場が可能になってから初めてのベスト8入りであり、フランスから複数のチームがベスト8に入ったのも史上初めてのことである。リヨンとモナコの快進撃によりフランスのクラブのサッカーは近年の低迷から抜け出すことになったのである。そしてこの勢いはUEFAカップでも現れているのである。(続く)