第325回 マルセイユも決勝進出、二冠へ高まる期待

■マルセイユにとって唯一の目標、UEFAカップ

 チャンピオンズリーグ準決勝でモナコがチェルシーを退けて決勝進出を決めたのが5月5日、その翌日にはUEFAカップ準決勝でマルセイユがニューキャッスルを迎え撃つことになった。開幕前は優勝候補筆頭と評価の高かったマルセイユであるが、5月1日にはリーグ戦のホームゲームでメッスに0-1と敗れ、リーグ戦でも今季初めて7位に後退してしまい、結局国内ではタイトルを今年も取ることはできないようである。唯一獲得可能なタイトルがこのUEFAカップになり、チーム、ファンの期待は高まるばかりである。マルセイユは今まで欧州カップの準決勝の戦績は2勝2敗、UEFAカップに限れば1999年にボローニャを下しており、その時の準優勝を上回る成績を残したいところである。
 第1戦の結果については本連載第321回で紹介したとおりアウエーでスコアレスドローであり、マルセイユで勝てば5年ぶりの決勝進出が決まる。マルセイユは決勝トーナメントに入ってからはホームゲームでドニエプロペトルフスク、リバプール、インテルミラノ相手に3連勝しており、ニューキャッスルにも勝ってスウェーデンのエーテボリで行われる決勝に進みたいところであり、ベストメンバーがそろった。

■名将ボビー・ロブソン監督と元パリサンジェルマンのローラン・ロベール

 一方のニューキャッスルは得点を取って引き分けるか、勝つことが決勝に進出する条件である。得点ランキングトップのアラン・シアラーこそ出場可能であるが、攻撃陣を中心に負傷者が相次ぎ、苦しい布陣となった。この役者不足のアウエーゲームで71歳の名将ボビー・ロブソン監督の手腕が注目される。ロブソン監督は第1戦に続き、フランス人選手ローラン・ロベールを起用、2001年のコンフェデレーションズカップの優勝メンバーだったことから日本の皆様もよくご存知の選手であるが、実はロベールは元パリサンジェルマンの選手でありマルセイユに対するパリジャンの対抗心に期待する。

■ディディエ・ドログバの大活躍でマルセイユが決勝進出

 試合はベロドロームの大観衆の見守る中、19時45分にキックオフ、開始早々ニューキャッスルのゴールを脅かしたのはやはりこの選手、ディディエ・ドログバであった。ドログバのシュートは得点にはならなかったものの、第1戦同様、両チームの攻撃的なサッカーが展開される。そして18分、スピードのある逆襲から、最前線でボールを受けたのはドログバであった。ドログバが左足でシュートを決めて、マルセイユは決勝行きに前進する。前半はマルセイユの攻勢の中で終了する。
 後半に入り、1点返せば、逆に優位に立つことができるニューキャッスルが体制を立て直し、攻勢に出る。徐々にマルセイユ人内での時間帯が長くなり、ロベールも宿敵マルセイユからゴールを奪うためクロスを上げるが、4月末にマルセイユにとどまることを決定したファビアン・バルテスを中心とする守備を崩すことができない。逆に82分、マルセイユの決勝進出を確定するゴールが生まれた。ニューキャッスルが、攻撃に集中し、マルセイユでもっとも危険な人物であるドログバへのマークが甘くなったところで、ドログバへのパスが簡単に決まる。ゴール前の至近距離からドログバが本大会6点目となるゴールを決める。これでドログバは得点王争いのトップに並ぶ。そして2-0というスコアでマルセイユは勝利、5年ぶりに決勝に進出する。マルセイユにとって欧州カップの決勝はこれが4回目となる。

■タイトル独占なるか、フランス勢

 そしてフランス勢として昨年まで11回欧州カップの決勝(チャンピオンズカップ4回、チャンピオンズリーグ1回、カップウィナーズカップ3回、UEFAカップ3回)に進出してきたが、今年はモナコとマルセイユが12番目と13番目のファイナリストとなった。2チームが同時に欧州カップの決勝に進出したのは1996年のパリサンジェルマン(カップウィナーズカップでラピッド・ウィーンを破り優勝)、ボルドー(UEFAカップでバイエルン・ミュンヘンに敗れ準優勝)以来2回目のことである。そして1999-2000シーズンから欧州カップはチャンピオンズリーグとUEFAカップの2つに統合ざれたが、両方のタイトルの決勝に進出した国は2001年のスペイン(バレンシアとアラベス)、2002年のドイツ(レバークーゼンとドルトムント)の2回あるが、いずれも決勝で涙を飲んでいる。フランス勢は、欧州カップ統合後初めてのタイトル独占となる二冠を達成することができるだろうか。(この項、終わり)

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