第333回 モナコ攻撃陣不発、フランス勢悲願ならず

■モナコとドイツ、ポルトガルの浅からぬ因縁

 いよいよ5月26日、チャンピオンズリーグ決勝の日がやってきた。決戦の舞台はドイツ・ゲルゼンキルヘンでのゲルセンキルヘンのアレナ・アウフシャルケである。ドイツ国内でチャンピオンズリーグの決勝が行われるのは1997年5月のボルシア・ドルトムント-ユベントス戦以来7年ぶりのことである。このスタジアムは本連載第255回から第260回でも紹介したようにシャルケ04の本拠地であり、昨年11月15日にフランス代表が親善試合でドイツ代表を3-0と破ると言う快挙を成し遂げている。このドイツ戦に出場したモナコの選手はいないが、振り返ってみれば1993年にマルセイユがチャンピオンズリーグ決勝でACミランを倒したのもドイツ・ミュンヘンのオリンピックスタジアムであった。
 モナコの相手はポルトガルのポルト。モナコはチャンピオンズリーグの決勝進出は初めてであるが、カップウィナーズカップの決勝に進出したことが一度だけある。1992年5月6日、ポルトガル・リスボンのルス競技場でドイツのベルダー・ブレーメンと対戦する。実はこの試合の直前に「フリアニの悲劇」と呼ばれる事件が起こり、試合開催も危ぶまれた。そのようなこともあり、西欧最大の収容人員を誇る巨大スタジアムの観衆はわずか1万6000人、そして試合は黙祷から始まり、フリアニの悲劇のショックを隠せないモナコは全く精彩を欠き、0-2と敗れ、フランス勢初の欧州三大カップ獲得に失敗したのである。
 このようにモナコ、ドイツ、ポルトガルには少なからぬ因縁があるが、今回は5万3000人の大観衆、モナコからも5000人のファンがライン川を渡って駆けつけ、フランス勢初のチャンピオンズリーグ優勝に向けて気勢は上がるばかりである。

■注目のディディエ・デシャン監督の采配

 そして今回の決勝は決して欧州のトップのビッグクラブではないチームがビッグクラブを破って進出したことから、モナコのディディエ・デシャン、ポルトのジョゼ・モウリーニョという両チームの監督の手腕に注目が集まっている。
 モナコがどのような布陣でこの大一番を迎えるか、と言うことにフランス側の関心は高まった。抜群の得点力を支えてきたエースのフェルナンド・モリエンテスにポルト守備陣のマークが集中することは明白である。モリエンテス以外に最前線に入る候補は、今季限りでモナコを去りグラスゴー・レンジャースへの移籍が決まっているダド・プルソ、リーグ最終戦でゴールをあげてカムバックしたシャビニ・ノンダ、そしてエドゥアール・シセなどがいる。またルドビック・ジウイー、ジェローム・ロタンなどの中盤の選手を配置するか、デシャン監督の腕の見せ所である。

■攻撃陣不発、モナコ思わぬ大敗

 結局、モナコの布陣はモリエンテスと主将ジウイーを2トップに配し、プルソ、ノンダはベンチからのスタート。開始早々からモナコは攻め立てたが、思わぬ形でプルソが交代出場することになる。24分にジウイーが負傷してベンチに下がる。キャプテンマークをジュリアン・ロドリゲスに渡し、プルソがピッチに入る。モナコは前線にボールをつなぐが、ことごとくオフサイド、攻撃を得点に結びつけることができない。逆に39分、ポルトがクロス攻撃から先制する。クロスボールをトラップミスした19歳のブラジル人カルロス・アウベルトであったが、そのボールをモナコのDFが再びカルロス・アウベルトにパス、これをカルロス・アウベルトが豪快にゴールにたたきこむ。
 後半に入って反撃を試みるモナコはMFのシセに代えて18番のノンダを投入。背番号18のカムバック組というと同夜の朝倉健太と藤井秀吾を連想されるであろうが、ノンダは朝倉になれなかった。逆にノンダ、モリエンテス、プルソと3トップとなったモナコは逆襲の餌食となる。71分にはデコが追加点、75分にはクロスがモナコDFにあたり、コースが変り、途中交代出場でゴール正面にいたドミトリー・アレニチェフの足元につながると言うモナコにとっては不運も重なり、ポルトは3点目を入れる。これまで爆発的の攻撃力を誇ったモナコであるが、この日は沈黙。12年前のリスボンでの戦いを思わせるような結果になってしまった。そしてフランス勢はチャンピオンズカップ、チャンピオンズリーグで4回目の決勝進出であったが、今回もまた欧州の頂点に上り詰めることはできず、今年で最後となる日本でのインターコンチネンタルカップに1度も出場することができなかったのである。

■ポルト、輝く2年連続欧州カップ制覇

 一方のポルトは前身のチャンピオンズカップで1987年に優勝して以来の欧州の頂点である。アルジェリアの英雄ラバ・マジャールを擁して優勝した17年前については本連載第8回でも紹介したとおりである。昨年のUEFAカップに続く2年連続の欧州カップ制覇、この偉業に対して拍手を送りたい。(この項、終わり)

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