第427回 トーナメント戦に突入した欧州カップ (1) アヤックスと相性のいいオセール

■2月から再開した欧州カップ

 欧州カップは12月までにグループリーグが行われ、チャンピオンズリーグは16チーム、UEFAカップは32チームが欧州の頂点を目指すトーナメント戦に駒を進めた。フランスからはチャンピオンズリーグにリヨンとモナコ、UEFAカップにリール、ソショー、オセールの合計5チームがトーナメント戦に舞台を移すことは本連載第404回から第408回で紹介している。グループリーグの段階でチャンピオンズリーグとUEFAカップの形式が異なっていたように、トーナメント戦の形式も異なっている。まず、先述したように決勝トーナメントの出場チームが違い、UEFAカップの決勝トーナメント出場チームの数はチャンピオンズリーグの倍であり、2試合多く消化しなくてはならない。さらにUEFAカップの決勝はチャンピオンズリーグの決勝よりも1週間早く行われる。したがって、欧州カップはまずUEFAカップのベスト16決定戦から再開する。また、第1戦と第2戦の間隔は基本的には1週間であるが、日程的に余裕のあるチャンピオンズリーグの決勝トーナメントの初戦だけは2週間の間隔を置いて試合が行われる。

■オセールと対戦するアヤックスの数多くの栄光

 フランス勢5チームのうち、最初に登場したのはオセールである。2月16日に第1戦を迎えたオセールの相手はオランダのアヤックスである。アヤックスはチャンピオンズリーグ並びのその前身のチャンピオンズカップでの優勝は1971年、1972年、1973年の3連覇ならびに1995年の4回、カップウィナーズカップを1987年、UEFAカップは1992年と欧州三大カップ全てを獲得したことのあるビッグクラブである。
 欧州カップでのこれまでの試合数を比較してもオセールの84試合に対してアヤックスはその3倍以上の251試合である。しかもオセールは84試合のうち7割の62試合がUEFAカップであるのに対し、アヤックスは過半数の143試合はチャンピオンズリーグであり、質量ともにアヤックスの優位性に揺らぎはない。

■2回の対戦で2回とも軍配が上がったオセール

 しかし、過去のオセールとアヤックスの対戦成績を見ると、不思議なことにオセールが優位に立っている。今までに両チームは欧州カップで2回対戦している。最初は1992-93シーズンのUEFAカップ準々決勝、タイトルホルダーであるアヤックスが圧倒的に有利であるという前評判であったが、オセールが金星をあげる。第1戦をホームで戦ったオセールは4-2と先勝、2週間後の第2戦は敗れたものの、0-1というスコアであったため、オセールは準決勝に進出する。ほぼ同日に行われたパリサンジェルマンとレアル・マドリッドの劇的な戦いがあまりにも印象的であるが、このオセールの勝利も忘れてはならない。
 そして2度目の対戦は1996-97シーズンのチャンピオンズリーグである。オセールはアヤックス、グラスホッパー・チューリッヒ(スイス)、グラスゴー・レンジャース(スコットランド)とともにグループAに入る。ホームアンドアウエーのリーグ戦形式で上位2チームが準々決勝に進出できる。オセールはホームで0-1と敗れるが、アウエーでは逆に2-1で勝利する。つまり、オセールはアウエーゴール2倍ルールにより、アヤックスに勝っていることになる。このように2回の対戦で2回ともオセールはアヤックスよりもよい成績を残している。

■アヤックス戦勝利後にオセールを止めたドルトムント

 ちなみに、チャンピオンズリーグのグループリーグでの最終的な順位表は両チームが勝ち点で並び、上位2位を占める。直接対決ではアウエーゴール2倍ルールにより、オセールはアヤックスに勝っていたが、当時の大会規定は勝ち点で並んだ場合はグループリーグ全体での得失点差が優先されたため、アヤックスが1位、オセールが2位となっている。オセールは準々決勝でドイツのドルトムントと対戦するが、連敗してしまう。実はオセールは1993年にアヤックスを下して準決勝に進んだ際もドルトムントと対戦し、1勝1敗の同スコアでPK戦の末に敗れている。オセールはアヤックスと相性がいい反面、ドルトムントには相性が悪いようである。現行の大会規定が当時採用されていれば、オセールの歴史は変わっていたかもしれない。
 このようにオセールは過去の欧州カップではアヤックスと相性がいいが、オセール陣営はアヤックスとの対戦を決して楽観視していないのである。(続く)

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