第462回 欧州目指すインタートトカップ(1) 23年ぶりに帰ってきたサンテエチエンヌ
■フランスから3チームが参戦
前回の本連載では創立100周年を迎えたオセールが親善試合を行ったことを紹介したが、多くのチームが、合宿あるいは親善試合という準備段階にあるのに対し、いくつのかのチームは公式戦を戦っている。それが、今回から紹介するインタートトカップである。フランスからはマルセイユ(リーグ5位)、サンテエチエンヌ(6位)、ランス(7位)の3チームが参加し、成績上位のマルセイユは3回戦から参戦、成績下位のサンテエチエンヌとランスは2回戦から参戦する。3回戦を勝ち抜くと準決勝、そして決勝で勝てばUEFAカップに出場することができる。なお、3チームに出場権があるため、3つの決勝が行われる。
■23年ぶりに復帰した名門に集まる期待
フランスのファンにとって一番注目を集めたのは名門サンテエチエンヌである。1960年代、1970年代はフランス・サッカーを代表するチームであったが、1980年代以降は低迷し、2部落ちも経験、欧州の舞台から遠ざかっている。緑の軍団が最後に欧州カップを戦ったのは今を去ること23年前、1982年秋に行われたUEFAカップのベスト16決定戦のことである。ボヘミアン・プラハと対戦し10月20日に本拠地ジェフロワ・ギシャールでスコアレスドロー、そして11月3日にプラハでは0-4と敗れ、姿を消すことになったが、この後23年間も欧州カップに姿を見せなくなるとは誰も予想しなかったであろう。そして新世紀を迎え、サンテエチエンヌの全盛期には存在しなかったインタートトカップという準欧州カップとも言えるトーナメントに挑戦することになった。
オールドファンのみならず若いファンも23年ぶりに欧州に復帰したサンテエチエンヌに注目した。インタートトカップは公式の国際試合であるが、対戦相手も弱小国のクラブが多く、シーズン前ということもあって、調整やメンバー選考をかねた親善試合のような位置づけになりがちである。逆にこの時期には調整に専念したいことから、リーグ戦に照準を合わせたチームはこの大会に出場することを回避する。しかし、サンテエチエンヌの場合にはいずれにも当てはまらず、なんとインタートトカップとしては異例の3万2000人の観衆が7月最初の土曜日の夜にジェフロワ・ギシャールに押し寄せた。これはサンテエチエンヌのファンがインタートトカップ出場では不十分であり、なんとしても23年ぶりのUEFAカップ出場を期待しているという想いの現れであろう。
■数多くのOBが集結、対戦相手の監督もOB
サンテエチエンヌの欧州の第一関門はスイスのヌシャーテル・ザマックス、ワールドカップ予選でもフランスはスイスと同じグループでもあることがこのサンテエチエンヌの試合に火をつけた。3万2000人の大観衆だけではなく、試合前からサンテエチエンヌの錚々たるOBがグラウンドや放送席で後輩の戦いに熱いまなざしを送る。実は相手のザマックスの監督はアラン・ガイガー、1980年代にはサンテエチエンヌのユニフォームも着たことがあるスイス人である。自分が選手として欧州の舞台を踏むことができなかったチームと世紀をまたいで監督として対戦するなどガイガー自身も夢にも思わなかったであろう。
■1970年代を思わせたアウエーでの戦い、3回戦進出
試合はサンテエチエンヌが緊張していたのか、なかなか得点をあげることができず、先制点を許し、75分に主将ジュリアン・サブレのゴールで同点に追いつくのが精一杯、23年ぶりの欧州での戦いは厳しい結果となったのである。
そして翌週の7月10日、ジュネーブでのアウエーゲームでサンテエチエンヌは緑の軍団となった。スコアレスドローで十分というヌシャーテル・ザマックスに対し、サンテエチエンヌは1970年代を思わせる猛攻を仕掛けた。なかなか得点には結びつかなかったが、60分にセバスチャン・マジュールが先制点、そして70分にはパスカル・フェインデゥーノが追加点、守備的な相手に対し、伝統の力を見せつけ、ヌシャーテル・ザマックスの反撃を1点に抑え、合計スコア3-2で3回戦に進出し、23年ぶりのUEFAカップに向けて好スタートを切ったのである。(続く)