第464回 欧州目指すインタートトカップ(3) マルセイユ、連勝で準決勝に進出
■ようやくインタートトカップ出場にこぎつけたマルセイユ
今年のインタートトカップは2回戦から参戦したサンテエチエンヌ(前年度リーグ6位)とランス(7位)が勝ち抜き、3回戦はリーグ5位のマルセイユを加えて3チームのそろい踏みとなった。
数年前はインタートトカップ出場を回避するため、リーグ戦の最終戦で無気力試合を行ったマルセイユであるが、昨年度後半にフィリップ・トルシエを招聘してからのマルセイユの成績は本連載の読者の皆様ならばよくお分かりのとおり、チャンピオンズリーグ出場圏内にあった順位は急降下し、インタートトカップ出場にようやくたどり着いたという体たらくであった。
■数々の名勝負を繰り広げ、新装した競技場で今季初の公式戦
そのマルセイユの3回戦の相手はスイスのヤング・ボーイズである。第1戦はヤング・ボーイズの本拠地であるベルンのスイス・ワンクドルフ競技場で行われるが、これまでは単純にワンクドルフ競技場と言われ、数々の名勝負の舞台となってきた。1954年7月4日のワールドカップ決勝では当時無敵のハンガリーを西ドイツが破り、1961年5月31日にはチャンピオンズカップ決勝が行われ、ポルトガルのベンフィカがスペインのバルセロナを下し、レアル・マドリッド以外のチームとして初めて欧州の頂点に立っている。またフランスとの係わり合いで言うならば、1958-59シーズンのチャンピオンズカップ準決勝ではフランスのランスがヤング・ボーイズと対戦し、第1戦をこのスタジアムで0-1と落としながらパルク・デ・プランスでの第2戦で3-0と鮮やかな逆転勝ちを収めている。この歴史ある競技場の名前がスイス・ワンクドルフ競技場と改称されたが、これは次回の欧州選手権で主要な会場となるためであり、そのための改装工事もこのたび終わり、欧州でも有数のモダンな競技場となった。
■新監督の下でアウエー、ホームとも勝利
そのベルンのモダンな競技場に乗り込んだマルセイユにとってこの試合が今シーズン最初の公式戦となる。トルシエの後任はジャン・フェルナンデス、フランス国内のクラブチームでの経験は豊富でマルセイユでの経験もあり、地元ファンの期待も高い。メッスから移籍してきたフェルナンデス監督は「これはインタートトカップという大会ではなくすでにUEFAカップである」と真剣な表情で語った。そしてベルンでの第1戦は新監督の意気込みどおりの試合となった。前半にウィルソン・オルマとママドゥ・ニアンのゴールで2点を先取し、後半に追いつかれたが、82分にFKをナイジェリア20歳以下代表のタヤ・タイオが決勝点を奪う。新監督は初戦で勝利をマークし、マルセイユは優位に立ったのである。
その翌週に行われたベロドロームでの第2戦もマルセイユの勢いは止まらなかった。マルセイユでの今季初めての公式戦ということで、2万8000人の観衆が集まった。インタートトカップとしては有数の観客動員となった。芝生の状態も最高、しかしそのすばらしいコンディションのグラウンドで最初にゴールを決めたのは前半終了間際のヤング・ボーイズの主将マリオ・ライモンディであった。0-1というスコアのままでも、アウエーゴール2倍ルールによって準決勝に進出できるマルセイユであるが、ファンは勝利しか期待していない。その期待に応えるべく、後半に入って69分にオルマに対するファウルで得たPKをペギー・リュインデュラが決めて同点、これで準決勝進出はさらに近くなったが、主お売りを期待するファンの声援は高まるばかりである。ファンの期待に応えたのはチーム最年少の18歳のサミール・ナルシ、83分に勝ち越し点を上げ、今季最初の地元での公式戦も白星で飾ったのである。
■栄えある繰り上げ開幕戦をライバルに譲る
さて、これでマルセイユは準決勝でイタリアのラツィオと対戦することになったが思わぬ問題が生じた。実は7月最後の週末から開幕するフランスリーグとの日程の問題である。基本的に開幕戦は土曜日の30日に行われるが1試合だけ目玉カードをテレビ中継するため29日に繰り上げて行う。当初はマルセイユ-ボルドーというマルセイユ全盛期の黄金カードを29日に行う予定だったが、ラツィオとの第1戦が27日に行われるため、マルセイユにとって中1日という強行日程となってしまう。その結果マルセイユは光栄ある繰り上げ開幕戦の権利をライバルであるパリサンジェルマンのメッス戦に譲ることになったが、新監督を迎えた今季のマルセイユは国内外で活躍を見せてくれるだろう。(続く)