第465回 欧州目指すインタートトカップ(4) ランス準決勝進出、サンテエチエンヌ敗退
■手探り状態の中で第1戦に臨んだランス
前回の本連載ではマルセイユが3回戦を突破し、準決勝に進出したことを紹介したが、今回は2回戦を勝ち抜いたランスとサンテエチエンヌの3回戦の模様を紹介しよう。
ランスはクロアチアのバルテックスと対戦することになった。2回戦のポーランドのレフ・ポズナン戦に続く東欧勢との対戦であるが、ランスが苦労したのは情報収集である。昨年度クロアチアリーグで5位、得点数2位というくらいしか情報が集まらない。2回戦のフィンランドのインター・ツルク戦の情報も集まらず、手探りの中でランスはクロアチア入りした。しかもランスは2回戦でチームにデビューしたコートジボワール人のアルーナ・ダンダンが入国管理局から入国拒否をされ、アルー・ディアラはまだ出場停止、エリック・カリエールは体調不十分ということでメンバー的にも苦しい。その中で始まった試合、前半は両チームとも無得点に終わる。後半に入って均衡が崩れる。
60分にランスのダニエル・クーザンが貴重な先制点を決める。そしてこのまま試合は終了かと思われたロスタイムに入った92分、ランスにクロアチアの罠が待っていた。伏兵のDFミルコ・プランティックに同点ゴールを許し、ランスはアウエーでの勝利を逃したのである。
■危険な男・ダンダンの活躍で準決勝進出
しかし、その翌週のランスでのホームゲームはゴールラッシュとなった。この日、フェリックス・ボラールに集まった観衆はなんと2万5000人、観客のお目当ては新加入でホーム初顔見世となるダンダンである。この大観衆の前でダンダンが攻撃の中心となり、ランスは終始ゲームを支配する。前半こそ無得点であったが、後半に入り、47分に先制点をヨアン・ラショールが決めると、58分、66分、そしてロスタイムの93分に得点をマークし、相手の反撃を1点に抑え、4-1と勝利し、準決勝に進出する。注目のダンダンは得点こそならなかったものの、地元ファンの前に「危険な男」としての存在感を十分に示したのである。
■労働者が支える鉄道のチームCFRクルージ
一方、サンテエチエンヌは3回戦でルーマニアのCFRクルージと対戦する。クルージ・ナポカにはCFRクルージとUクルージという2つのクラブがあり、CFRは国営鉄道のチームであり、Uは学生のチームである。大学都市であるクルージではUは学生など若者に人気があり、CFRは労働者に人気があるチームである。日本の皆様ならば、筑波大学の試合にはたくさんの若いファン、女性ファンが集まり、鉄道会社のチームであるジェフユナイテッド千葉の本拠地の千葉は労働活動が盛んであることから、この構図はよくご理解できるであろう。1907年創立という古い歴史を誇るCFRクルージであるが、1989年のルーマニア革命で財政的な痛手を受け、低迷する。2002年に新たな株主が見つかり、クラブとして再建し、インタートトカップ出場にこぎつけ、地元の期待も大きい。
■アウエーゴール2倍ルールに泣いたサンテエチエンヌ
そのクルージ・ナポリでの第1戦、サンテエチエンヌからも200人のファンがバスで遠征してきた。2回戦のヌシャーテル・ザマックスとのジュネーブでの試合には1万人が駆けつけたことを思えば、やはりルーマニアは遠い国であるが、1800キロという長い距離をバスで移動するファンのいるチームは幸せである。その第1戦で開始早々にサンテエチエンヌは得点を奪われる。しかし、サンテエチエンヌはスタンドの一角に陣取った緑のファンの声援に応え、39分にフレデリック・ピキオンヌが同点ゴールを決めて、アウエーの試合を引き分けに持ち込んだのであった。
そして、その翌週にジェフロワ・ギシャールは3万人の観衆で緑一色に染まった。アウエーでの引き分けを受けて有利と思われたサンテエチエンヌであるが、23分にペナルティエリア内の得点機を阻止するハンドにより退場者を出し、PKを与えてしまう。このPKが決まり、1人足りない状態で最低でも追いつかなくてはならないという窮地に追い込まれた。主将のジュリアン・サブレが52分に意地の同点ゴールを決める。CFRクルージもその直後に退場者を出し、10人対10人の戦いとなったが、CFRクルージは66分に勝ち越し点を決め、サンテエチエンヌは2得点が必要になった。緑一色の競技場にはその後得点はなかなか生まれない。ようやくスタジアムに歓声が沸きあがったのは、ロスタイムに入った93分、ムハマンドゥ・ダボが同点ゴールを決め、ホームでも引き分けとなったが、アウエーゴール2倍ルールにより、名門サンテエチエンヌの23年ぶりのUEFAカップ出場の夢はここで消えたのである。(この項、終わり)