第690回 チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦(3) リヨン、アウエーの第1戦はスコアレスドロー
■年末までは圧倒的な強さを見せたリヨン
チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに残ったフランス勢は2チーム、その中でリールがイングランドのマンチェスター・ユナイテッドに破れたことは前回の本連載で紹介した。リールの敗退は残念であるが、フランス国民が最も期待をかけているのはリヨンである。
リヨンの強さについては改めて今回紹介する必要もないであろう。フランスリーグでは前人未到の5連覇を達成している。そして今季も圧倒的な強さを見せ、国内では独走して折り返し、国外でもチャンピオンズリーグのグループリーグで4勝2分という圧倒的な成績で決勝トーナメントを進出している。
■年が明けて変調、チャンピオンズリーグを苦手とするリヨン
しかしながら、このところのリヨンは不安だらけである。まず、後半戦を迎えてからのリーグ戦の成績は2勝1分3敗と負け越している。またリーグカップこそ決勝進出を決めたが、フランスカップはベスト8決定戦でマルセイユに敗れている。そして何よりも心配なことはこれまでも期待されながら、チャンピオンズリーグでは望むような結果を残してくることができなかったことである。
■「ローマの鷹」を擁して準優勝したASローマ
そのリヨンの1回戦の相手はイタリアのASローマである。欧州カップの獲得は1961年のUEFAカップだけである。1984年にはローマの鷹と言われた元日本代表監督のパウロ・ロベルト・ファルカンを擁し、当時の欧州チャンピオンズカップ決勝に進出している。この時はケビン・キーガンのいるイングランドのリバプールに敗れている。その後は欧州チャンピオンズカップ、チャンピオンズリーグでは目だった活躍はなく、チャンピンズリーグになってからは初めての決勝トーナメント進出である。グループリーグではバレンシアが独走するグループDに入り、最終戦でそのバレンシアをホームに迎えて勝利し、2位で通過している。ASローマがチャンピオンズリーグの16強入りしたのは4季ぶりのことである。
リヨンはこれまでチャンピオンズリーグで好成績を残していないと紹介したとおり、最高の成績はベスト8である。昨年まで3年連続で準々決勝で敗退している。昨年の準々決勝の相手がローマと同じイタリア勢のACミランであり、本連載第541回と第542回で紹介したとおりである。そのイタリア勢への雪辱なるかが注目を集めた。
グループリーグを首位で通過したリヨンは第2戦をホームで戦うことができる。逆に調子の上がらない段階でアウエーでの第1戦を戦わなくてはならない。ローマの本拠地オリンピック・スタジアムは1990年のワールドカップの際に改修されており、欧州カップでは改修後最多の7万5000人のファンが押し寄せた。相手はフランス王者とはいえ、調子を落としているリヨン、十分に勝機はあり、この第1戦で確実に勝利しておきたい。一方のリヨンはリーグ戦でようやく連勝したところから、その勢いを継続し、欧州の頂点へと突き進みたい。
■イエローカードの嵐、スコアレスドローで終わる
そのような両チームの思いとは裏腹に、試合は低調な内容になった。両チームともファウルが相次ぎ、イエローカードが乱発される。そのせいか試合は途切れがちであり流れるような動きが見られない。得点チャンスはセットプレーに限られた。セットプレーといえば、ジュニーニョの出番である。ところがジュニーニョのFKは好機は作るものの、ゴールネットを揺らすには至らない。
結局、両チーム無得点のまま90分を終える。終わって見ればローマには8枚、リヨンには3枚、合計11枚のイエローカードが提示される。さらにローマの8回の警告のうち3回はシミュレーションによるものである。イングランドからの主審であったということを差し引いてもこの数字は多いと言わざるを得ない。
しかし、リヨンはアウエーで勝ち点1を獲得してホームに戻ることになる。リヨンのジェラール・ウリエ監督は1月以降最高の内容の試合であると評価している。4年連続のベスト8をかけた第2戦は3月6日にリヨンの本拠地ジェルラン競技場で行われるのである。(続く)