第750回 ランス、インタートトカップを勝ち抜き、UEFAカップ予備戦2回戦へ

 おかげさまで第750回の連載を迎えることになりました。1000回の連載まであと250回となりました。読者の皆様に改めて感謝するとともに、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。

■一足先にシーズンインするランス

 前回と前々回の本連載ではフランスリーグの開幕について紹介したが、クラブシーンでは国内リーグだけではなく、欧州での戦いもすでに始まった。
 欧州カップにはチャンピオンズリーグとUEFAカップがあるが、UEFAカップの予選に相当するのがインタートトカップである。インタートトカップは国内リーグの開幕前に行われ、フランスからはランスが出場する。ランスは昨季の最終節でチャンピオンズリーグ出場権のある3位を逃し、5位に終わったことは本連載第725回で紹介したとおりである。
 3位争いに敗れてインタートトカップに出場することになったランスは他のチームよりも先に、シーズンインする。ランスはインタートトカップの3回戦から参戦するが、リーグ戦の始まる2週間前、すなわち7月21日に第1戦、そしてリーグ戦の開幕1週間前の7月29日に第2戦が行われた。

■名将ギ・ルーがランスで監督に復帰

 ランスは1997-98シーズンにリーグ初優勝を飾ってからコンスタントに上位争いをしており、唯一の優勝以来、二桁順位となったのは2000-01シーズンの14位である。そして今季も補強に努めたが、最大の補強は監督のギ・ルーであろう。1961年から2005年まで、途中1年間ブランクがあっただけで長らくオセールの監督を務めてきたルーは監督を退いた後はテレビに解説者として好評を博してきたが、今年の5月に2年契約でランスの監督に就任する。実に68歳という高齢での監督就任となったのである。オセール一筋で監督人生を全うしたと思っていたフランスのファンに、今年の5月のルーの監督復帰、しかもオセール以外のチームと言うニュースは、大きな驚きを与えたのである。

■アフリカの若手選手を支えるエリック・カリエール

 そのランスの主力となるのがアフリカ各国の若い代表選手たちである。攻撃陣ではボナバンチュール・カルー、アルーナ・ダンダン、カンガ・ゴーチエ・アカレ(以上コートジボワール)、中盤ではシディ・ケイタ(マリ)、守備陣ではアダマ・クーリバリー(マリ)とタレントがそろっている。そしてこのチームの精神的支柱となるのが、背番号10、フランス代表であったエリック・カリエールである。ナントでプロデビューを果たし、2000-01シーズンにリーグ優勝、そしてその年にリヨンに移籍し、リヨン6連覇のうち最初の3回の優勝を経験している。その後、ランスに移籍したが、ランスではまだタイトル獲得にはいたっていない。
  このように名将、若いアフリカのタレント、そしてフランス代表としても活躍した攻撃の要、という要素がミックスされたランスの今季の目標は、昨季あとわずかのところで逃したチャンピオンズリーグ出場権獲得、そしてこのインタートトでのUEFAカップ出場権獲得である。

■猛暑のオデッサで引き分け、ホーム初登場で見事勝利

 ランスの相手はウクライナのチェルノモレツ・オデッサである。オデッサは黒海に面する港湾都市であり、横浜と姉妹都市であることから日本の皆様も良くご存知であろう。チェルノモレツとは水兵という意味であり、ソ連時代は黒海を警備する海軍のチームであった。実はランスは12年前のUEFAカップのベスト16決定戦でもチェルノモレツ・オデッサと対戦し、1勝1分の成績でランスが勝ち抜いている。
 第1戦は気温が36度と言う猛暑のオデッサで行われた。ランスは直前の練習試合を涼しいスイスで行い、バーゼルに勝利し、シオンと引き分けと上々の成績であったが、黒海沿岸の暑さには勝てなかった。この試合では両チームとも決定力を欠き、スコアレスドローで舞台をランスに移して第2戦が行われた。
 シーズン開幕を翌週に控え、地元でのルー監督の初采配とあって本拠地フェリックス・ボラールには2万5000人以上の観客が集まった。この試合、立ち上がりの10分にランスはチェルノモレツ・オデッサに先制点を許す。しかし、40年以上オセールで指揮を取ってきた名将ルー監督は冷静であり、若いイレブンを信じた。18分にクーリバリーが同点ゴール、これだけではアウエーゴール2倍ルールにより不十分である。40分にはアカレが勝ち越し点、そして72分にもアカレがダメ押し点を上げ、UEFAカップ出場をより確実なものにする。
 ランスはUEFAカップ出場権を獲得し、8月16日と30日に行われる予備戦2回戦へ挑戦することになったのである。(この項、終わり)

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