第764回 リヨン、チャンピオンズリーグ初戦で大敗
■リーグ戦開幕前にタイトルを連取
9月のフランスのスポーツシーンはラグビーのワールドカップ、そしてサッカーでは欧州選手権の予選が注目を集めたが、サッカーのクラブシーンも忘れてはならない。
フランスのクラブでは6連覇中のリヨンが今年も優勝候補の筆頭であり、フランスサッカー界の悲願であるチャンピオンズリーグ優勝にも期待がかかるところである。事実、本連載で紹介したとおり、シーズン前に韓国で行われたピースカップではついに初優勝を果たす。そして高温多湿の韓国からの帰国直後には、フランスカップ勝者と争うチャンピオンズトロフィーもソショーに2-1と逆転勝ちして、このタイトルも6連覇を果たす。リヨンに死角無し、と誰しもが思う中で、リーグ戦が開幕した。
■リーグ序盤で2敗するも立ち直り、4連勝で2位に浮上
リヨンは開幕戦はホームでオセールに2-0と勝利して好スタートを切ったが、第2節ではアウエーとはいえ、トゥールーズに0-1と敗れる。第3節は勝利したが、第4節では今季昇格したばかりのロリアンにアウエーで敗れ、2勝2敗と思わぬ序盤戦となる。第5節以降は4連勝し、ようやく順位を2位に上げたところで、チャンピオンズリーグの本戦が始まった。
■グループE最大の強敵バルセロナと初戦で対戦
チャンピオンズリーグの本戦はグループリーグから始まるが、リヨンはグループEに入った。グループEの他の顔ぶれはバルセロナ(スペイン)、グラスゴー・レンジャーズ(スコットランド)、シュツットガルト(ドイツ)である。その中で最も力があると目されているのはバルセロナであろう。昨季の優勝こそライバルのレアル・マドリッドに譲ったが、今季は大型補強でリーグ制覇ばかりか欧州制覇をも狙っている。大型補強のメンバーにはリヨンから移籍したエリック・アビダル、アーセナルから加わったフランス代表のティエリー・アンリも名を連ねる。
一方のリヨンはリーグ戦の序盤ではつまずきもあったが、4連勝し、直前のメッス戦では若きエース、カリム・ベンゼマがハットトリックを決めている。
これまでに両チームは2001-02シーズンのチャンピオンズリーグのグループリーグで対戦し、ホーム、アウエーともバルセロナが勝利しているが、当時はリヨンの6連覇の前の時代のことであるから、この対戦成績は参考にならない。むしろ2004年以来、チャンピオンズカップのグループリーグでは16戦連続で負け無しと言う安定したリヨンの実績に注目すべきである。そして、昨年は両チームともチャンピオンズリーグのグループリーグで好成績を収めながら、決勝トーナメントでリヨンはASローマ(イタリア)、バルセロナはリバプール(イングランド)に敗れて16強どまりであり、今年のチャンピオンズリーグにかける意気込みはただならぬものがあるはずである。
実力的には均衡しているが、リーグ戦の開幕時期がフランスのほうが早く、チームが成熟していること、そして直近の成績や近年のグループリーグでの成績はリヨンのほうがよいことから、バルセロナのノウ・カンプ競技場での戦いとはいえ、リヨン有利と言う声は少なくなかった。
■終盤に連続失点、大敗で暗雲が漂う
ノウ・カンプ競技場の約8万の大観衆の前で今年のチャンピオンズリーグの本戦が始まった。引き分け以上に持ち込みたいリヨンであったが、21分にバルセロナの左サイドのCKから、フランソワ・クレルクが痛恨のオウンゴール、先制点を許してしまう。そして試合はバルセロナが支配し続けるも、リヨンは代役GKのレミ・ベルクートルを中心としてよく守り、試合は終盤を迎える。最少失点のままで終了の笛を迎えればまだ良かったが、リヨンの守備は終盤に破綻する。82分にはアンドレス・イニエスタがクレルクを抜き去り、メッシが追加点を上げる。さらにロスタイムに入った92分にはジオバンニがマテュー・ボドメールのタックルを交わしてGKと一対一になり、パスを受けたアンリが無人のゴールに決め、試合は終了する。
結局リヨンはチャンピオンズリーグの初戦を0-3という大差で敗れてしまう。リヨンがチャンピオンズリーグでこれだけの大差で敗れたのはかつてバルセロナに敗れてUEFAカップに回った2001-02シーズンのUEFAカップのチェコのスロバン・リベレッツ戦(1-4)以来のことである。 リヨンの第2戦は10月2日、ホームにグラスゴー・レンジャーズを迎えることになる。(この項、終わり)