第818回 欧州カップ決勝トーナメントへ突入(2) リヨン、終了直前に同点に追いつかれる
1998年2月20日に「J.P.モアンのフランス・サッカー実存主義」でデビューした「J.P.モアン」の執筆活動が10周年を迎えました。この10年間の読者の皆様からのご支援に感謝いたします。引き続き、ご愛読の程よろしくお願いいたします。
■カップ戦が苦手なリヨン
前回の本連載ではUEFAカップの決勝トーナメントに出場したボルドー、マルセイユの第1戦について紹介したが、今回はその翌週に始まったチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに出場したリヨンの第1戦を紹介しよう。
リーグ戦で6連覇を達成し、国内のリーグ戦では無敵のリヨンであるが、チャンピオンズリーグではベスト8が最高の成績であり、実力を十分に発揮できていない。リヨンはチャンピオンズリーグでもグループリーグは突破するが、決勝トーナメントでは早期に敗退している。リヨンはカップ戦を苦手としており、国内でもフランスカップ、リーグカップでは、リーグ6連覇の間に優勝したことがないことは、フランスカップやリーグカップに関する連載の際に紹介したとおりである。
■5年連続の決勝トーナメント進出となるリヨン
そのリヨンは本連載第793回で紹介したとおり、グループEの最終戦でグラスゴーレンジャース(スコットランド)との直接対決を制し、バルセロナ(スペイン)に次いでグループリーグ2位となり、今年も決勝トーナメントに進出を決めた。これでリヨンは5年連続の決勝トーナメント進出となった。過去4年間の成績を見ると、いずれも第1戦をアウエーで戦ってきた。最初の3年間は2004年はレアル・ソシエダ(スペイン)、2005年はベルダー・ブレーメン(ドイツ)、2006年はPSVアイントホーヘン(オランダ)とアウエーの試合で勝利し、ホームでも連勝し、準々決勝に進んでいる。ところが昨年はASローマ(イタリア)と第1戦でホームで引き分け、アウエーの第2戦で敗れ、決勝トーナメント1回戦で初めて敗退している。
今年はグループリーグで2位にとどまったことから、第1戦をホームで戦う。リヨンの相手はグループFを5勝1分と抜群の強さで首位通過したマンチェスターユナイテッド(イングランド)である。両チームは2004-05シーズンのチャンピオンズリーグのグループリーグでも顔を合わせ、グループリーグの順位はリヨンが1位、マンチェスターユナイテッドが2位であったが、両チームの対戦成績はリヨンで2-2、マンチェスターで2-1でマンチェスターユナイテッドが勝利し、マンチェスターが優位である。リヨンはイングランド勢を苦手とし、イングランド勢との欧州カップでは、40年前のカップウィナーズカップでのトットナム戦が唯一の勝利である。
■国内リーグで2位ボルドーに肉薄されたリヨン
さらに、このところのリヨンの調子も気がかりである。これまでリヨンが決勝トーナメントを迎える段階での国内リーグでの順位は2004年は4位であったが、2005年から今年まで1位である。昨年などはこの段階で2位のランスに勝ち点で13の大差をつけていた。ところが、今年はボルドーに勝ち点1差にまで迫られている。このマンチェスターユナイテッド戦の直前の試合は2月16日のフランスリーグのルマン戦、アウエーで行われた試合でリヨンは0-1と敗れている。そしてその翌日に勝ち点4差で追う2位ボルドーはモナコとアウエーで対戦している。前半こそ無得点であったが、後半ボルドーはゴールラッシュで6-0と大勝する。試合の半分でアウエーチームが6点をあげたのは50年前のランス(Stade de Reims)以来のことである。リーグ戦 後半戦を6試合消化したところであるが、この間の順位は、ボルドーが5勝1敗、勝ち点15でトップ、2位はマルセイユ(4勝1分1敗、勝ち点13)、3位はリヨン(3勝1分2敗、勝ち点10)と欧州カップの決勝トーナメント出場チームが上位を占めているが、リヨンにこれまでの勢いがないことは明白である。
■残り3分で追いつかれ、ドローに終わる
このように不安の尽きない2月20日、リヨンは地元ジェルラン競技場にマンチェスターユナイテッドを迎えた。この試合、リヨンは今季有数の良い動きを見せる。そして54分にカリム・ベンゼマがゴールをあげて、40年ぶりのイングランド勢からの勝利に近づいた。その後も、リヨンが試合を支配するが、残り3分、この試合がチャンピオンズリーグ100試合目となるマンチェスターユナイテッドの主将ライアン・ギグスに代わって出場したカルロス・テベスのシュートがグレゴリー・クーペの守るゴールネットを揺らす。この試合がリヨンでの500試合目となったクーペは痛恨の失点となった。ドローに持ち込まれたリヨンはオールドトラフォードでの第2戦に全てをかけるのである。(この項、終わり)