第917回 チャンピオンズリーグ、決勝トーナメントへの道(5) マルセイユ、因縁の相手とドローで3位に
■二強二弱となったグループD
前回の本連載では最終戦に勝てばチャンピオンズリーグ出場と言うボルドーがASローマ（イタリア）に敗れ、UEFAカップに転戦することを紹介したが、ボルドーと同日に最終戦を迎えたのがグループDのマルセイユである。
グループDはこの段階でリバプール（イングランド）とアトレチコ・マドリッド（スペイン）が3勝2分で並び、マルセイユとPSVアイントホーヘン（オランダ）が1勝4敗で並ぶ。マルセイユ－アトレチコ・マドリッド、PSVアイントホーヘン－リバプールと言う下位チームが上位チームを迎える組み合わせとなった。
■3位争いをするマルセイユとPSVアイントホーヘン
マルセイユはPSVアイントホーヘンとの直接対決で良い成績を残しているため、最終戦の結果がPSVアイントホーヘンのそれよりも同等以上ならば3位になり、欧州の戦いを継続することができる。
一方、マルセイユと対戦するアトレチコ・マドリッドはリバプールとともにすでに決勝トーナメント進出は手中にしているとはいえ、首位となって決勝トーナメント1回戦でのアドバンテージを得たいところである。アトレチコ・マドリッドとリバプールは最終戦を迎える段階で勝ち点11で並び、直接対決の成績は2試合とも1－1であることから、総得失点差の勝負となる。得失点差＋5（得点9、失点4）のアトレチコ・マドリッドが得失点差＋4（得点8、失点4）のリバプールをわずかだがリードしている。最終節を終えて、得失点差、総得点で両チームが並んだ場合は、今季の成績では優劣をつけることができず、UEFAの決めたクラブランキングで決定されることになり、その際はリバプールに優先権が与えられる。
■10月のマドリッドでの戦いでマルセイユのサポーターが実刑判決
そして、順位争いとは別にこのマルセイユ－アトレチコ・マドリッド戦は注目を集めた。10月のマドリッドでの試合の際に事件の余波が続いているからである。事件とはアトレチコ・マドリッドの監督がマルセイユの選手に対する人種差別的な発言を行い、それに対してマルセイユのサポーターが、スペインの警察と問題を起こしたのである。この一件でアトレチコ・マドリッドはUEFAから、2試合ホームゲームを遠隔地で主催するという制裁を受けた。またマルセイユのサポーターの1人サントス・ミラシエラは警官対する暴行が公務執行妨害ということで懲役8年という有罪判決が下された。試合の前週に行われた再審で、懲役3年半に減刑されたが、マルセイユサポーターの怒りは収まらず、危険を感じたアトレチコ・マドリッドは試合の当日にマルセイユ入り、空港から会場までは警察の装甲車で移動という厳戒態勢にあった。ベロドロームにはミラシエラの無罪を訴えるサポーターが5000人集結したが、スペイン当局は問題が大きくなるのを恐れ、試合の当日に6000ユーロの保釈金でミラシエラの身分を執行猶予とし、ミラシエラに自由が与えられたのである。
■リバプールが勝利し、ドローのマルセイユが3位に滑り込む
このようにグラウンドの内外で注目を集めたマルセイユ－アトレチコ・マドリッド戦は、欧州各地で同時で行われるグループAからグループDまでの4グループの最終戦と同時に20時45分にキックオフされた。
因縁のアトレチコ・マドリッド戦とあって1000人以上の警官がベロドロームに集まったが、試合前にミラシエラの保釈が決まったこともあり、特段のトラブルもなく試合は始まった。試合は両チームとも無得点が続く。そして36分、ベロドロームに集まった満員のファンには悪い知らせが届く。PSVアイントホーヘンがリバプール相手に先制してしまう。このまま試合が終われば、マルセイユは最下位になり、欧州の夢は消えてしまう。
そしてリバプールもこのままだとグループ2位にとどまってしまう。リバプールは前半ロスタイムの47分、オランダ代表のライアン・バベルのゴールで同点に追いつく。この段階でマルセイユは3位に浮上する。そしてマルセイユの最大の援軍は赤いリバプールである。なぜならばリバプールは引き分けに終わってしまうと2位にとどまるからである。そのリバプールは後半に入り2点を追加する。リバプールが勝利すればマルセイユは負けても3位である。スコアレスドローに終わったマルセイユは、首位リバプールのアシストで3位になり、UEFAカップ出場を決めたのである。（続く）
