第960回 フランス勢の望み、UEFAカップ(3) 準々決勝の組み合わせ、2つの驚き
■ベスト8が出揃った直後に決勝戦までの組み合わせが決定
32チームが争うUEFAカップの決勝トーナメントは、ベスト16決定戦とベスト8決定戦を経て、準々決勝進出チームが決定した。その顔ぶれはマルセイユ、パリサンジェルマン(以上フランス)、ディナモ・キエフ、シャフタル・ドネツク(以上ウクライナ)、ベルダー・ブレーメン、ハンブルガーSV(以上ドイツ)、マンチェスター・シティ(イングランド)、ウディネーゼ(イタリア)である。
ベスト16決定戦とベスト8決定戦の組み合わせ抽選は、決勝トーナメント進出チームが決定した直後に行われたが、ベスト8が出揃った段階で準々決勝以降の組み合わせ抽選が行われた。3月20日にスイスのニヨンで行われた組み合わせ抽選会ではフランス中から驚きの声が上がった。
■フランス勢は準々決勝でウクライナ勢と対戦
準々決勝の組み合わせはパリサンジェルマン-ディナモ・キエフ、シャフタル・ドネツク-マルセイユ、ベルダー・ブレーメン-ウディネーゼ、ハンブルガーSV-マンチェスター・シティとなり、フランス勢はいずれもウクライナのチームと戦うことになり、これが1つ目の驚きである。
フランスとウクライナは昨年暮以来、微妙な関係にある。いわゆるロシア・ウクライナガス紛争の影響をフランスも受けているのである。ロシアもウクライナもソ連から独立した国であるが、ロシアはソ連時代から自国内で産出される天然ガスをパイプラインで東欧や西欧に供給していた。ロシアからこれらの国へガスを供給する際に通過しなくてはならないのがウクライナである。ウクライナ自身もロシアからガス供給を受けているが、この支払いが遅延、さらにウクライナ経由の欧州諸国向けのガスをウクライナが抜き取っているとの疑義もあり、今年初めにロシアはウクライナ向けのガス供給をストップし、合わせてウクライナ経由欧州向けのガスの供給も止まってしまった。この影響をフランスも受けた。フランス国内で消費されるガスのおよそ15%はウクライナを経由するロシアのガスである。寒波こそ襲わなかったものの、今年のフランスはエネルギー危機を迎えたのである。このようにウクライナのおかげで、今年の欧州は「寒い冬」になったのである。そしてその寒い冬が終わったところでフランスのチームがウクライナのチームと対戦するのである。
■実現するか、夢のフランス勢の準決勝での対決
もう1つのファンの驚きは準決勝の組み合わせである。パリサンジェルマン-ディナモ・キエフ戦の勝者とシャフタル・ドネツク-マルセイユ戦の勝者が準決勝で戦う。パリサンジェルマンとマルセイユが、準々決勝を勝ち抜けば、準決勝でパリサンジェルマン-マルセイユという夢のカードが欧州の舞台で実現するのである。これまでに欧州カップでフランス勢同士が対戦したことは2回だけある。いずれもUEFAカップであり、最初は1998-99シーズンの3回戦でマルセイユとモナコが対戦している。このときはモナコでの第1戦は両チーム1人ずつ退場者を出し、両チームあわせて8警告と言う荒れた試合で2-2のドロー、そしてマルセイユでの第2戦ではマルセイユが1-0と勝利する。史上初のフランス勢対決を制したマルセイユは決勝まで進出し、モスクワでの決勝でパルマ(イタリア)に優勝を譲る。
2回目のフランス勢対決は2004-05シーズンのベスト8決定戦でのリールとオセールの戦いである。リールでの第1戦でオセールが挙げた1点がこの両者の対決の唯一のゴールとなり、オセールが準々決勝に進出する。準々決勝でオセールはこの大会で優勝することになるCSKAモスクワに敗れている。
■リーグ戦では首位リヨンに肉薄するマルセイユとパリサンジェルマン
過去2回のフランス勢対決と今回の共通点は、対戦するチームがリーグ戦でも好成績を残していると言う点である。今回の対戦も組み合わせが決定した段階(第28節終了時)でマルセイユ、パリサンジェルマンとも勝ち点52で首位のリヨンと勝ち点の差はわずか1しかない。得失点差でマルセイユ(+17)がパリサンジェルマン(+12)を上回っており、2位になっている。マルセイユとパリサンジェルマンが対決する段階で、いずれかのチームが、チャンピオンズリーグで敗退したリヨンをかわし、リーグ戦で首位に立っている可能性もあるのである。(続く)