第1080回 ヨーロッパリーグ2回戦(4) マルセイユ、逆転ゴールを許し20年前の雪辱ならず
■決勝トーナメントのラッキーボーイ、ハテム・ベンアルファ
リスボンでのベンフィカ(ポルトガル)との第1戦、マルセイユは終了間際のハテム・ベンアルファのゴールで同点に追いつき、地元ベロドロームでの試合を優位な立場で迎えることになった。ベンアルファは年が明けてからの決勝トーナメントではラッキーボーイ的な存在になった。決勝トーナメント1回戦のFCコペンハーゲン戦ではアウエーの第1戦で勝ち越し点、そしてホームの第2戦では先制点をあげ、連勝に貢献している。そしてベンフィカとの第1戦でも貴重な同点ゴールをあげており、3試合で3得点、しかもそのいずれもが試合の帰趨を決する重要な局面でのゴールであった。
■外国人選手が支えるマルセイユの攻撃陣
20年前のベンフィカとの対戦時はボスマン判決以前のことであり、外国人選手は3人に制限されていたが、マルセイユは攻撃陣を外国人選手に委ね、クリス・ワドル(イングランド)、エンゾ・フランチェスコリ(ウルグアイ)の2トップであった。この2人は訪日経験があることから日本の皆様はよくご存じであろう。ちなみに相手のベンフィカはポルトガル語圏のブラジル、旧植民地のアンゴラ、スベン・ゴラン・エリクソンの出身地であるスウェーデンから外国人選手を集めており、ブラジル代表のバウドとリカルド・ゴメスの2人はその後マルセイユのライバルのパリサンジェルマンに移籍するというのは何かの因縁であろうか。
現在もマルセイユの攻撃陣も外国人選手が多く、セネガル代表のママドゥ・ニアンを中心にブラジル人のブランダン、コートジボワール代表のバカリ・コネに交じってベンアルファやマチュー・バルブエナ、ファブリス・アブリエルというフランス勢がいる。このホームでの第2戦の攻撃陣は主将のニアンを中心に右にアブリエル、左にブランダンという布陣である。
■主将ママドゥ・ニアンが先制点
満員のベロドローム、マルセイユは白いユニフォーム、ベンフィカは黒いユニフォームでこの第2戦を迎える。リスボンでの第1戦が1-1であるため、マルセイユは勝つか、スコアレスドローだと準々決勝に進出できる。過去の欧州カップの戦績を見てもアウエーの第1戦を1-1で乗り切ったチームの過半数は勝ちぬいている。マルセイユは心理的にも優位な立場であったが、攻撃陣は振るわず、左サイドのブランダンこそまずまずの動きを見せたものの、ニアンは主将らしくない動きであり、アブリエルもバルブエナやベンアルファ、コネを押しのけて先発メンバーに入ったものの、期待に応える動きをしていない。またアブリエルは前半終了間際に負傷し、コネと交代する。
両チーム無得点で試合は後半を迎える。マルセイユはこのままのスコアで残り45分を乗り切ればいいわけであるが、国内リーグでも引き分け続きであり、ベロドロームのファンの前では得点と勝利を見せたいところである。その期待に応えたのはやはりキャプテンマークをつけたニアンであり、70分にブランダンからのパスをゴールにたたきこむ。
■激しい終盤の攻防を制したベンフィカ
歓喜するベロドロームのファンであったが、その5分後には沈黙させられる。リスボンの試合でも得点をあげたマキシ・ペレイラが同点ゴールをあげる。このままのスコアで90分を迎えれば試合は延長戦となる。両チームは次の1点をめぐって選手交代を行い、マルセイユは先制点の起点となったフランス代表のブノワ・シェイルー、ベンフィカはアルゼンチン代表のサビオラ、カルロス・マルティンをベンチに下げる。また、最終的にこの試合は両チーム9枚のイエローカード、1枚のレッドカードが飛び交ったが、この10枚のカードのうち7枚は最後の15分に出された。最後の1点の攻防がいかに激しかったかを物語っている。
この激しい攻防を制したのはベンフィカであった。90分にベンフィカの途中交代選手のアラン・カルデックがゴールを決める。ロスタイムの表示は3分、マルセイユはコネに代え、最後の切り札とも言えるベンアルファを91分に投入したものの、2分後にはベンアルファはカルデックに対するファウルで一発退場となる。
結果的にロスタイムは6分になったものの、マルセイユはロスタイムに2得点する力はなく、結局1-2で敗れてしまい、準々決勝進出はならなかった。20年前の雪辱を果たすことはできなかったのである。(続く)