第1174回 決勝トーナメントを目指すフランス勢 (3) マルセイユ、アウエーでの最多得点で望みをつなぐ

■現役時代にチェルシーの一員としてマルセイユと対戦したディディエ・デシャン監督

 前回と前々回の本連載では第1シードの名にふさわしく、グループリーグ首位で決勝トーナメント進出まであと一歩に迫ったリヨンを紹介したが、他のフランス勢はどうなっているだろうか。
 まず昨季リーグ覇者で第2シードのマルセイユ、国内リーグでもスタートにもたつき、チャンピオンズリーグのグループFでも、初戦のスパルターク・モスクワ(ロシア)戦をホームのベロドローム競技場で0-1で落としてしまったことは本連載第1155回で紹介したとおりである。  その後マルセイユは国内リーグでは立ち直り、アルル・アビニョンとソショーに連勝して6位まで順位をあげて、チャンピオンズリーグ第2節のチェルシー(イングランド)との戦いに挑む。マルセイユのディディエ・デシャン監督は選手時代はマルセイユで活躍したが、マルセイユからユベントス(イタリア)に移籍している。この時のユベントスの監督が現在のチェルシーの監督であるカルロ・アンチェロッティである。そしてデシャンはユベントスに4シーズン在籍したが、1999年にはチェルシーに移籍している。すなわち、デシャン監督は両チームのOBとしてこの1戦を迎え、敵チームの監督はかつての自分の指導者ということになる。
 そしてデシャンは1シーズンしかチェルシーに在籍しなかったが、このシーズンはチェルシーがクラブ史上初めてチャンピオンズリーグに出場したシーズンであり、さらにこの時、チェルシーとマルセイユは2次リーグで対戦している。両チームはそれぞれのホームゲームで1-0と勝利し、互角の成績であり、それ以来11季ぶりの対戦となる。

■3人のフランス人を抱え、リーグでも首位のチェルシーに完敗

 今回もチェルシーにはフランス人選手が在籍しており、フローラン・マルーダ、ニコラ・アネルカ、ガエル・カクタという本連載でもおなじみの選手が名を連ねる。リーグ戦は開幕5連勝、マルセイユ戦直前のマンチェスター・シティ戦で今季リーグ戦初黒星を喫したが依然として首位、デシャン在籍中とは大きく変わり、現在ではチェルシーは押しも押されぬ横綱級のチームである。
 チェルシーは負傷者が続出し、フランス人選手3人がそろって先発メンバーとなる。そして格の違いを見せつけるとともに、フランス勢が活躍した。7分にはカクタのCKから主将のジョン・テリーが先制点をあげる。そして30分にはマルセイユの選手が自陣ペナルティエリア内でハンド、これをアネルカが冷静に決める。試合は終始チェルシーのペースでマルセイユは全く特典の気配がないまま90分が終わってしまい、連敗を喫したのである。

■ついに3戦目で初ゴール、初勝利したマルセイユ

 さて、連敗したマルセイユであるが、グループFはチェルシーとスパルターク・モスクワが連勝、マルセイユとジリナ(スロバキア)が連敗となり、2強2弱となった。第3節と第4節は上位陣同士、下位勢同士の戦いとなった。2試合で勝ち点だけではなく得点もゼロのマルセイユであるが、ジリナは2試合とも3点差という大差で敗れている。マルセイユにとってはこのジリナとの戦いで連勝して決勝トーナメントへのチャンスをつかみたいところである。
 10月19日、両チームはまずマルセイユで対戦する。地力に勝るマルセイユは前半から試合を支配しながら得点を奪うことができずハーフタイムを迎える。ファンもいらつくなかで、後半開始早々、ルーチョ・ゴンザレスのCKからスレイマン・ディアワラが先制ゴールをあげる。チャンピオンズリーグ開幕から228分にして待望の初ゴールである。その後もマルセイユは好機を得るが、得点力不足でスコアは1-0のまま試合終了のホイッスルが吹かれたが、この1勝がマルセイユを変えた。

■アウエーでの最多得点となる7得点で連勝

 2週間後の11月3日に敵地に乗り込んだマルセイユは素晴らしい試合を展開した。アンドレ・ピエール・ジニャックが12分に先制点、21分に追加点をあげたのを皮切りにマルセイユはゴールラッシュを見せる。24分にはアルゼンチン代表のガブリエル・エインセ、36分にはロイック・レミがゴールをあげ、前半を4-0で折り返す。後半に入りゴンザレスのゴールで5点差にすると、ジニャックが54分にハットトリック達成する。6-0となった段階でマルセイユはチャンピオンズリーグのアウエーでの最多得点記録に並ぶ。そして63分のゴンザレスのゴールで記録は更新され、マルセイユは7-0で勝利し、第5節以降の戦いに望みをつないだのである。(続く)

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