第1226回 フランス勢、8強入りならず(1) マルセイユ、敵地でマンチェスター・ユナイテッドに敗れる
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■仙台の姉妹都市レンヌと、神戸の姉妹都市マルセイユ
日本での地震、津波、そして原子力発電所での事故、大規模な電力危機という大災害に対し、欧州のサッカー界でも黙祷をささげたり、喪章をつけたりと日本へのメッセージが次々に発せられている。
その悲しみにくれる1週間、地震発生直後の週末には国内リーグ第27節が行われる。日本で地震と津波が起こったその夜、1試合だけ行われた試合は仙台の姉妹都市レンヌと神戸の姉妹都市マルセイユの対戦、16年前に震災に襲われた都市とこの日震災に襲われた都市の姉妹都市同士の戦いというのは単なる偶然ではないように思える。首位リールと同勝ち点だった2位レンヌは、首位奪還のチャンスであったが、姉妹都市仙台の悲劇によって動揺したのか、ホームでマルセイユに敗れてしまう。レンヌは翌日にバランシエンヌを下したリールとは勝ち点3差となる。
■日本の悲報にくれる中、8強入りをかけて戦うフランス勢3チーム
そして、世界中が悲痛にくれ、さらにそれに追い打ちをかけるように原子力発電所の事故という新たな問題が起こった週の半ばにはチャンピオンズリーグの1回戦、ヨーロッパリーグの2回戦、これらの位はフランスから3チームが出場するが、いずれも第2戦が行われ、勝ち抜くか、敗退かが決定する試合が行われる。
15日の火曜日にマルセイユがマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)、16日の水曜日にはリヨンがレアル・マドリッド(スペイン)とアウエーで対戦し、17日の木曜日にはパリサンジェルマンがベンフィカ(ポルトガル)をパリに迎える。
これらの試合の第1戦についてはすでに本連載で紹介したとおりであるが、チャンピオンズリーグの2試合はフランス勢はいずれもホームで引き分け、スコアレスドローのマルセイユは勝利するか、得点を取って引き分けることが必要となり、1-1で引き分けたリヨンは勝利するか、2点以上得点して引き分けることが要求される。また、パリサンジェルマンはアウエーで1-2と敗れており、パルク・デ・プランスでは2点差以上の勝利か、1点差の場合は3得点以上あげて勝利することが必須となる。
■十分に勝機ありと意気込むディディエ・デシャン監督
まず、フランス勢最初の希望としてマルセイユがマンチェスターのオールド・トラフォードに乗り込む。これまでフランス勢にこの本拠地で負けたことがないマンチェスター・ユナイテッドに対し、幻の優勝となった1992-93シーズン以来の8強入りを目指すマルセイユ、イングランドでの戦績は芳しくないが、第1戦の試合内容から十分に1回戦突破は可能である。そして先述の通り、直前の国内リーグでは2位のレンヌにアウエーで2-0と勝利している。今季のマルセイユはアウエーゲームを苦にしていない。一方のマンチェスター・ユナイテッドは直前のリーグ戦でチェルシー、リバプールに連敗している。
■ハビエル・エルナンデスの活躍の前にマルセイユ沈む
マルセイユのディディエ・デシャン監督は勝機ありと意気込んだが、その意気込みは開始5分で霧散する。マンチェスター・ユナイテッドのメキシコ代表のハビエル・エルナンデスがCKからのチャンスボールをファーポストに決める。マルセイユからの4000人のサポーターは意気消沈する。その直後にマルセイユには同点のチャンスはあったものの、前半は1点ビハインドで折り返す。
後半に入ってもマルセイユはマンチェスター・ユナイテッドのミスから得点チャンスはあったが、ゴールは遠い。同点に追い付けば準々決勝進出というマルセイユに対し、マンチェスター・ユナイテッドは先制点をあげたエルナンデスが75分に追加点をあげる。
ここで勝負あったにみえたが、マルセイユには幸運が残されていた。82分にマルセイユはCKのチャンスを得て、マチュー・バルブエナが蹴ったCKをマンチェスター・ユナイテッドのDFウェズ・ブラウンがヘディングで自陣ゴールに入れてしまう。
しかしながらマルセイユは残り8分で得点を奪うことができず、18年ぶりの8強入りはならず、マンチェスター・ユナイテッドに5年連続の8強入りを許したのである。(続く)