第1359回 チャンピオンズリーグ、決勝トーナメント開始(1) リヨンと対戦するキプロスのアポエル

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■グループリーグ最終節の大勝で奇跡を起こしたリヨン

 寒波の押し寄せたフランス、今年の初めから国内のリーグ、フランスカップ、リーグカップという国内の争いが続いたが、いよいよ2月中旬には欧州カップの決勝トーナメントが始まる。今年の欧州カップのフランス勢は本連載で紹介したとおり、チャンピオンズリーグにはマルセイユとリヨンが勝ち残ったが、ヨーロッパリーグは全滅してしまった。
 決勝トーナメントに2チームしかフランスのクラブが残っていないことはさびしいが、欧州の頂点を狙うチャンスは残されている。欧州の頂点に立つクラブはこのところ固定化されているが、チャンピオンズリーグの前身であるチャンピオンズカップが始まってから60年近くたっており、そろそろ初めての栄冠を獲得したいところである。
 決勝トーナメントに進出したマルセイユとリヨンであるが、いずれも苦しみながらの最終節でのグループリーグ突破であった。マルセイユはドイツのボルシア・ドルトムントとの直接対決に勝利して決勝トーナメントへの扉を開き、決勝トーナメント進出が絶望視されていたリヨンは、アウエーでの最終戦でディナモ・ザグレブ相手に7-1と大勝、奇跡を起こし、9年連続の決勝トーナメントにたどり着いた。

■予備戦2回戦から参戦したキプロスのアポエル

 リヨンのミラクルがフランスのサッカーファンには印象的であるが、決勝トーナメントに残った16チームのうち、それ以上のミラクルはリヨンが対戦するキプロスのアポエルであろう。キプロスのチャンピオンチームとして今大会に出場するが予備戦2回戦からの参戦である。予備戦2回戦でアルバニアのKSスカンデルベウを、そして予備戦3回戦ではスロバキアのスロバン・ブラチスラバを下し、プレーオフに進出する。プレーオフではポーランドのビスワ・クラクフと1勝1敗となるが得失点差で上回り、2年ぶり2回目のチャンピオンズリーグの本戦出場となった。予備戦2回戦から3つのハードルを越えて本戦進出を果たしたのはこのアポエル以外にはチェコのプルゼニ、ベラルーシのBATE、クロアチアのディナモ・ザグレブだけである。

■ヨーロッパリーグ(UEFAカップ)の王者のそろうグループG

 チャンピオンズリーグの本戦に残るだけで十分なミラクルであるが、アポエルはグループリーグでもミラクルを起こす。グループGはポルト(ポルトガル)、ゼニト(ロシア)、シャフタール・ドネツク(ウクライナ)と戦う。ライバルの3チームは欧州を代表するようなビッグクラブではないが、ポルトは2011年にヨーロッパリーグを制している。シャフタール・ドネツクは2009年に最後のUEFAカップの優勝チームとなっている。さらにゼニトはその前年のUEFAカップの優勝チームである。すなわち、過去4年間のヨーロッパリーグならびにその前身であるUEFAカップの優勝チームのうち3チームがアポエルの前に立ちはだかるわけである。
 アポエルも2季前にチャンピオンズリーグの本戦に出場し、チェルシー(イングランド)やアトレチコ・マドリッド(スペイン)相手に引き分けも演じたが、グループリーグで敗退しており、今回も高い壁に囲まれた戦いになると予想された。

■負けないアポエル、首位でグループリーグを折り返し

 しかし、アポエルはホームで行われた初戦でゼニト相手に逆転勝利をあげ、2-1と勝利する。そして第2節ではアウエーでシャフタール・ドネツクに先制し、引き分けとなる。第1節でアポエルが下したゼニトが第2節ではポルトに勝利し、第2節でアポエルはグループの中で首位に立つ。
 そして第3節、第4節はポルトとの戦いである。ポルトとの連戦はまず、大西洋に面するアウエーゲームである。ここまで1勝1敗のポルトはここでアポエル相手に連勝したいところである。そのポルトの狙い通り、ポルトでの試合は開始早々にかつて川崎フロンターレで活躍したフッキが先制点をあげる。しかしアポエルもその直後に追いつき、そのままドロー。アポエルは前半戦を終えて1勝2分の勝ち点5、1勝1分1敗で勝ち点4のポルトとシャフタール・ドネツク、1勝2敗で勝ち点3のゼニトを抑えて首位でグループリーグを折り返したのである。(続く)

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