第1370回 マルセイユ、ロスタイムのゴールで19年ぶりの8強入り
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■リヨン同様国内リーグ戦で失速したマルセイユ
チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦でリヨンがキプロスのアポエルにPK戦で敗れ、欧州の舞台で残るフランス勢はマルセイユだけである。マルセイユもリヨンと同じでグループリーグを2位で通過、そしてインテル・ミラノ(イタリア)との決勝トーナメントの第1戦はホームで1-0と先勝している。
そして気になるのはマルセイユもリーグ戦で失速していることである。インテル・ミラノにホームで勝利してから、マルセイユはリーグ戦を4試合戦っているが、ブレスト、トゥールーズ、エビアン、アジャクシオに対し4戦全敗、さらに1得点も上げることができずすべて完封負けである。リヨンもリーグ戦の過去5試合は2分3敗と勝ち星から見放されていたが、マルセイユ、パリサンジェルマン、ボルドーというビッグクラブが対戦相手に含まれていた。それと比べるとマルセイユの直近の対戦相手にはビッグネームは含まれておらず、昨年11月末のリーグ戦のパリサンジェルマン戦からインテル・ミラノとの第1戦まで公式戦16試合連続負けなしという成績から一転して苦しんでいる。
このようにリヨンとマルセイユは多くの共通点があるが、リヨンの翌週に試合を行うマルセイユはリヨンとは異なる結果を出したいところである。
■どん底状態から脱出したインテル・ミラノ相手に健闘するマルセイユ
第2戦の舞台はインテル・ミラノの本拠地ジュゼッペ・メアッツァ競技場、第1戦の段階では国内リーグで不調のどん底にあったインテル・ミラノも、マルセイユで敗れて目を覚ましたのか、キエーボに勝利して10試合ぶりの勝ち点3をつかむ。このように第1戦当時とはチーム状態が逆転しており、マルセイユにとっては厳しい試合が予想された。
その予想通り、マルセイユは開始直後からピンチが続くが、フランス代表では控えGKのスティーブ・マンダンダがセーブする。マルセイユの頼みの綱は第1戦には出場しなかったロイック・レミである。スピードのある1トップにマルセイユはロングボールを放り込み、しばしばインテル・守備陣をあわてさせる。そして次第に試合はマルセイユのペースとなる。オレンジのユニフォームを着用したマルセイユは力強さに勝り、インテル・ミラノの選手をアッツする。マルセイユは前半終了間際にはレミが惜しいシュート、両チーム無得点でハーフタイムを迎え、このままのペースでいけばマルセイユがベスト8入りすることになる。
■先制点は75分のインテル・ミラノ、アポエル-リヨン戦と同じ展開
後半に入って流れを変えたいインテル・ミラノはディエゴ・フォルラン、ウェスレイ・スナイデルという2010年のワールドカップで活躍した選手をベンチに下げ、ジョエル・オビ、ジャンパオロ・パッツィーニを投入する。この選手交代が功を奏し、インテル・ミラノはリズムをつかむ。そして75分、インテル・ミラノのCKはマルセイユのゴール前で混戦となり、最後はディエゴ・ミリートがゴールネットを揺らす。アウエーの第1戦を0-1で落としたホームチームが1点を先取、まさに前週のアポエルとリヨンとの試合の再現となった。
残り15分、両チームは得点をあげることができない。1点が欲しいマルセイユは88分にレミをベンチに下げてブランドンを投入するが、時計の針は90分を指す。誰しもがキプロスでの戦い同様に延長戦突入を覚悟していた。
■ロスタイムに劇的なゴールの応酬
しかし、サッカーの神様はここから別のシナリオを準備していた。ロスタイムに入って92分、マルセイユのGKマンダンダはロングキックを蹴る。このボールをブランドンがうまくコントロールしてマルセイユは同点に追いつく。2試合通算ゴールでリードしたマルセイユはこれで勝ち抜きに大きく前進する。
さらに、サッカーの神様はこのミラノの地で思わぬギフトをサッカーファンに与えた。その直後の93分、殊勲のロングパスのマンダンダはペナルティエリア内でパッツィーニを倒してしまう。PKがインテル・ミラノに与えられ、マンダンダにイエローカード、そしてこれはこの日2枚目のイエローカードであったため、レッドカードが掲げられ、マンダンダは退場する。交代枠を使い切っていなかったため、控えのGKが急きょ登場するが、パッツィーニは難なくPKを決め、ホームで2-1と勝ち越し、試合終了の笛が吹かれる。しかし、この勝利は青と黒のインテル・ミラノファンにとっては意味がなく、アウエーゴール2倍ルールによりマルセイユは優勝した1993年以来19年ぶりの8強入りしたのである。(この項、終わり)