第1381回 強いフランスはどこへ、UEFAのリーグランキング6位に転落

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■近づく5年に1度の大統領選挙

 日本の読者の皆様にとって、現在のフランスで最大の関心事といえば、前回まで本連載で紹介したマルセイユのチャンピオンズリーグの戦績でもなければ、パリサンジェルマンとモンペリエのリーグ戦での優勝争いでもなく、間近に迫った大統領選挙であろう。毎日、日本でもトップニュースあるいはそれに近い扱いで大統領選挙の動向が連日報道されているであろう。
 今回が第五共和制になって10回目となる大統領選挙は4月22日に第1回の投票が行われ、ここで過半数を得た候補者がいなければ、5月6日に第2回の投票が行われる。今回も10人の立候補者がおり、2回目の決選投票に持ち込まれる見込みであり、フランスは5年に1度の熱い春を迎えることになる。肝心の選挙戦終盤の状況であるが、社会党のフランソワ・オランドがリードし、遅れを取った現職のニコラ・サルコジが追い上げるという構図である。

■ニコラ・サルコジ大統領が実現できなかった「強いフランス」

 本連載では前回の大統領選挙の模様を5年前に第711回から第713回にかけて紹介し、サルコジ新大統領が目指す強いフランスは政治面、経済面だけではなく、サッカーの世界でも実現されるであろうと予想したが、5年後の今日その予想は大きく外れたと間違いを認めなくてはならない。
 まず、現職のサルコジ大統領が苦戦しているのは経済に対する国民の不満が強いことが第一の原因である。昨年のデクシア・ショック、ギリシャの財政危機に端を発する欧州経済危機はフランス国民の生活を確実に脅かしている。経済危機をめぐるドイツとの欧州の盟主争いもリードを許してしまったようであり、現政権に対する不満がそのまま野党の社会党のオランド支持につながっている。

■欧州選手権、ワールドカップの本大会で1勝もできなかったサルコジ時代

 さて、サッカーの世界ではどうだろうか。サルコジ政権下での国際大会は2回、2008年の欧州選手権ではグループリーグで1分2敗で最下位で敗退、さらに2010年のワールドカップでも1分2敗で最下位。すなわちサルコジ政権下のフランス代表は国際大会の本大会で1勝も挙げることができず、出場した2大会いずれも最下位という散々な結果であった。
 そして代表チームという国籍という障壁のある中での戦いと異なり、クラブチームの場合は国境を越えた「強いチーム」を作ることができる。しかしながら、前回までの本連載で紹介したとおり、チャンピオンズリーグの準々決勝でマルセイユはドイツのバイエルン・ミュンヘンに敗れ、フランス勢は欧州の舞台から姿を消してしまった。

■UEFAのリーグランキングも6位に後退

 実はこのマルセイユの敗退によってフランスサッカー界は大きな打撃を受けた。それはチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグという欧州カップの先生で決まるUEFAのリーグランキングでフランスリーグはポルトガルリーグに抜かれて6位に落ちてしまったのである。このUEFAのリーグランキングはチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの出場チーム数の決定に適用されるものである。このランキングは1979年から始まったが、その重要性が高まったのはチャンピオンズリーグに1リーグから複数のチームが出場できるようになった1990年代以降である。サルコジ大統領が就任したシーズンの2008年には、フランスリーグは4位であったが、その翌年に5位にダウンし、3年間5位の座をキープしたが、ついに今年ポルトガルに抜かれて6位に落ちてしまった。今季の欧州カップではチャンピオンズリーグではフランスのマルセイユ、ポルトガルのベンフィカ、両チームとも準々決勝敗退であったが、ヨーロッパリーグではフランス勢のパリサンジェルマンとレンヌがグループリーグ敗退したのに対し、ポルトガルはスポルティングが準決勝に進出している。
 UEFAのリーグランキングが5位から6位に落ちたことにより、2013-14シーズンから反映される。フランスへの影響であるが、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグへの出場国数は現状通りである。唯一影響を受けるのはリーグ3位でチャンピオンズリーグに出場したチーム(今季であればリヨン)が、プレーオフからではなく、その1つ前の予備戦の3回戦からの参戦となる。これだけを見れば軽微な影響であるが、フランスの代表チームだけではなくクラブチームも国際舞台で力を出していない、これはフランスの国力をそのまま表しているのではないだろうか。(この項、終わり)

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